10月11日~13日まで北海道に視察に行ってきました。
先週末の寒波を体験して、相当寒いのを覚悟していましたが、穏やかな天気で、車窓から深まり行く秋を感じることができました。列車の本数が少ないので、限られた時間で目的地へ移動するのは結構大変でした。
北海道の自治体は、行政改革、議会改革に真剣に取り組んでいます。
10月11日 14:30~16:30 ニセコ町
ニセコ町 |
人口 4,700人 面積 197㎢ 財政力指数0.259(H17) (ニセコ連山と羊蹄山に囲まれたスキーリゾート、通年リゾートとしても人気上昇中で人口増加) 財政規模(17年度決算) 一般会計37.6億円 特別会計17.7億円 |
逢坂前町長の情報共有と住民参加の基本理念が受け継がれており、徹底した情報公開、ファイリングシステム、全戸配布の予算説明書、まちづくり基本条例、ふるさとづくり寄付条例、観光協会の株式会社化など先進的な取り組みが全国から注目を浴びている。北海道の自治体として財政が危機的であるのは例外ではなく、かつて50億円あった予算を将来、30億円に縮減する計画を立てている。合併協議もあったが、羊蹄山を取り巻く広大な面積がネックとなり不成立に終わった。
文書管理(ファイリングシステム)
平成12年度から4ヵ年をかけて、情報の検索性向上と高度利用を目的とし、ファイリングシステムを導入した。文書の私物化を排除し、すべての文書をフォルダーに整理しキャビネットに収納、30秒以内で取り出すことができる。机の上には何もない。もちろん、申請も不要、何人も即座にすべての文書のコピーをとることができる。文書探しの無駄な時間を減らし、行政コストの大幅な削減につながっている。
予算説明書「もっと知りたいことしの仕事」
予算の内容を住民にわかりやすく知らせるために、すべての事業、財政状況、給料の状況、財源や借金の交付税措置の仕組みなどを示した説明書を全戸配布している。説明文は行政用語を排除し中高生にもわかるように、工事箇所は「○○さん地先~」のような具体的表現にしている。町外の人には1000円(@370円のところ)で販売している。
まちづくり町民講座
担当課長などが講師となって、住民に担当分野の現状と課題を説明し、議論する場。17年度は100回以上行った。町の将来に向かっての課題を住民と行政が共有し、共に考える場として、また、職員が自分の仕事を住民にわかりやすく説明する力、対話する姿勢、意見をまとめる能力を養う研修の場としての役割がある。
議員が司会をする議会報告会もある。合併問題では盛り上がった。
まちづくりトーク・こんにちは(おばんです)町長室
5人程度のグループから希望があれば、町長や担当職員が訪問し懇談する。11年間で約700人参加。
毎月1回2時間程度町長室を開放。居住地を問わず1人からでも懇談できる。10年間で約200人参加。
住民提案型予算制度
住民税収入の1%にあたる約100万円の使い道を住民自らに考えてもらう制度で17年度に始まった。将来の人づくり、ニセコづくりにつながれば住民の取り組みでも町の取り組みでも構わない。住民で組織する予算検討委員会が各提案を審査、町長に答申する。住民が予算査定にかかわっていくのが狙いだが、イベント物が多いとの反省がある。
ふるさとづくり寄付条例
ニセコのまちづくりに共感した町外在住者から、ニセコ町に対して何かできないかという声があった。また、自分が納める税金を自らが関心を寄せる政策に使ってもらいたいという潜在ニーズがあった。多様な参加の1手法として、また、寄付を受けた町の責任、寄付者の満足度を高めることを目的として、個人や団体が、町が重点的に進める5つの分野を選んで寄付する仕組みになっている。
泰阜村に続いて全国2番目に制定。1年半で、約300口、150万円の実績。
未成年の住民参加の手法
・小学生・中学生まちづくり委員会
それぞれの学校から各学年10人の委員を公募推薦、年4回程度のタウンウォッチングを通じて、町への理解を深める。
・子ども会議
選挙権がなく、発言の機会が少ない子どもたちに、積極的にまちづくりに参加してもらうための機会として13年から始まった。夏休み期間中に小学校5年生から中学校2年生までの学校から推薦を受けた14人が、本物の町議会と同様に議員を務める。「ごっこ」で終わらせず、町長、管理職が出席し、あえて厳格な手続きを踏んでいる。
ニセコ駅前温泉 綺羅乃湯
施設の計画段階では住民からさまざまな要望が出されたが、説明会を重ねるうちに「行政と住民」ではなく「住民と住民」による対話が生まれ、その対話により施設の概要・規模が決まった。「行政案が固まってから、住民意見を聞き置く」従来手法はとらず、あえて白紙の状態で議論に臨み、検討結果をレポートした。この施設の建設を通じて、情報共有・住民参加の重要性を実証できたと考えている。建設費8.7億円、年間利用者数12万人。
上記、情報共有と住民参加、まちづくり専門スタッフの育成、未成年の住民参加などの考え方は、住民自治の実践を通して、平成12年に全国初で制定された「ニセコ町まちづくり基本条例」に盛り込まれている。本条例の構造図を示しておく。4年に1度の見直し規定あり。
10月12日 14:30~16:30 栗山町役場
栗山町 |
人口 15,000人 面積 204㎢ 財政力指数 0.298(H16) (札幌、千歳、苫小牧から1時間圏内、東は緩やかな丘陵地帯で夕張市に接している。) 財政規模(16年度決算) 一般会計89.3億円 特別会計63.1億円 企業会計7.2億円 |
5月に制定された議会基本条例で一躍有名になった栗山町には視察が殺到し、この日も6市町、50人以上が合同で説明を受けた。重要なのは、決して基本条例ありきではなく、インターネットによる議会ライブ中継、議会情報公開条例の独自作成、住民への議会報告会の実施など、4年半にも及ぶ議会改革の集大成として基本条例を制定するに至ったことだ。自治基本条例の中に議会基本条例に相当する部分を組み込む考え方もあるが、栗山町では、議会基本条例が自治基本条例に先行した形になっている。
議会の創意のみならず、議長のリーダーシップと議会事務局長のサポートが大きい。
議会活性化の取り組みと議会基本条例
(1)透明性の確保
①インターネットライブ中継
議会の活動を住民に知ってもらうために、14年からインターネットによるライブ中継開始、議員の質問と職員の答弁がかみ合っていないなどの苦情をもらった。議会に参画していない係長職が議会の動きを察知、町が抱えている問題を把握できるようになった。
②情報の公開
町民と情報を共有し、常に批判にさらされることを覚悟して、議会情報公開条例を制定した。議員の自信につながり、議会が条例を数多く提案するきっかけとなった。
③議会広報紙の充実(全国レベルを目指す)
道内では常に上位だったが、15年に全国奨励賞を受けた。さらに住民に愛読されるべく努力中。
(2)議員は財政問題に弱い
町財政のシステムは一部の専門的な職員しか熟知していない。この情報を打破すべく、中長期財政問題等調査特別委員会を設置、将来にわたる財政状況を検証するとともに、予算の仕組み、基金、借金の状況を知った上で、住民に現状を知らせている。合併問題に際しても、その基本である財政を十分理解することができた。
(3)常任委員会所管事務調査の充実
各常任委員会は必ず月1日は調査を実施し、本会議委員長報告で質疑を受けている。昨年は、常任委員会を年間72日開催。
(4)チェック型議会からの脱皮
提案権(情報公開条例、議会基本条例)や修正権(ゴミ有料化に伴う料金とゴミ袋の大きさを修正、保育所民営化の延期、上下水道料の修正)を行使、住民の目線において行動する議会に脱皮。
(5)議会報告会の実施
昨年から、全議員(18名)を3班に分け、町内12会場に派遣、住民との直接対話を実施している。議会で決定したことや、報酬、定数、出動日数など、住民が疑問に思うことを説明することは、議員の実力をつける良い機会であるとともに、議会が住民に信頼されることにもつながる。
(6)執行側に反問権を付与
一般質問や質疑において議員の質疑がズレていても、執行側が無理に失礼のないように答弁している光景を見受ける。議員が十分な調査をし、論点を明確にし、議論を深め、住民にもわかりやすい議論をするために、執行側に反問件を与えることは有効な手段となる。執行側から議員が代案を尋ねられる場面も期待したい。
(7)議員同士の自由討議
本会議においては、質疑、動議により自由討議、討論、採決の順で進めようと考えている。
常任委員会における自由討議は以前から行われていた。修正案なども、執行側に退席を願い、時間をかけて話し合う。原案に反対賛成だけでなく、参考人の意見を聞き、議決の影響を考え、議論を尽くし、そのプロセスを住民に公開し理解を求めることが大切。
(8)議員の待遇に関すること
議員報酬:議員19万6千円、議長30万円(報酬は下げずに活動で返す。)
議員定数:18人→13人(次回統一地方選から)
政務調査費:月額8,000円(平成14年に条例制定)
(ただし、常任委員会の道内政務調査は付託議案の審査に必要な場合のみ実施)
議会基本条例の特徴
(1)町民や団体との意見交換のための議会主催による一般会議の設置
(2)請願、陳情を町民からの政策提言として位置付け
(3)重要な議案に対する議員の態度(賛否)の公表
(4)年1回の議会報告会の開催を義務化(議会としての見解を述べる。※ニセコ町では個人意見もOK)
(5)議員の質問に対する町長や町職員の反問権を付与
(6)政策形成過程の執行側責任の明確化(政策の発生源、検討した他の政策案、他の自治体の類似政策との比較、総合計画における根拠、関係法令、財源措置、将来にわたるコスト計算)
(7)5項目にわたる議決事項の追加(マスタープラン、介護保険事業計画、次世代育成支援行動計画など)
(8)議員相互間の自由討議の推進
(9)政務調査費に関する透明性の確保
(10)議員の政治倫理を明記
(11)最高規範性、4年に一度の見直しを明記
10月13日 9:30~12:00 白老町役場
白老町 |
人口 21,000人 面積 426㎢ 財政力指数 0.404 経常収支比率 98.7% (室蘭本線沿線にあり、苫小牧と登別に挟まれた海辺のまち、牧畜、漁業、製紙工業がある。) 財政規模(18年度予算) 一般会計99.3億円 特別会計99.6億円 企業会計20.4億円 |
18年度一般会計予算99億円のうち、歳入の一位は地方交付税34億円、歳出の一位は給与費23億円、二位は公債費17億円。港湾機能施設整備事業では、毎年7億円かけて整備しているが、期待する製紙会社からの税収は2億円。病院事業予算13億円の累積赤字が12億円、毎年一般会計から2.6億円を繰り出ししている。職員は330人、この3年で30人削減した。北海道の自治体は総じて財政状況が苦しく、行政改革に対する真剣さが違う。ニセコ町のファイリングシステムも、白老町から学んだ。説明に当たる行政職員も自治体学会北海道支部の土曜講座などで自主的研修に励んでいる。行政のみならず、議会も自己改革を迫られており、白老町でも既に町民への議会説明会を行っている。
元気なまちと地域CI
(1)これまでのまちづくり・・・元気まち運動(CI)~協働のまちづくり
①CI導入提唱
昭和63年~ 見野(けんの)町長がCI(corporate identity・community identity)の導入を提唱。
平成2年~ 誰でもフリーハンドで描ける「笑顔の大きな口」をモチーフ(電通に委託)。「元気まち」をキャッチフレーズに、町のイメージを統一、地域一体化をめざす。
②浸透期から行動期
平成6年~ 内部改善(機構名称変更、接遇、各課年次目標、職員提案制度)→職員の意識改革
平成7年~ 住民参加のまちづくり学習(「元気まち研修会」「元気まち100人会議」「出前トーク」 →住民との信頼関係、街づくりへの参加意識、ノウハウの蓄積 →まちづくりの担い手育成
③協働の浸透~住民活動の活性化
行政の手を離れた自主活動の活発化(町民団体約400、加盟者延べ2万人) →まちづくり活動センター開設(住民・団体・行政のコーディネーター) →町民の総合窓口(町内会連合会に団体事務局を集約)
(2)現在のまちづくり・・・協働のまちづくり~住民自治のまちづくり
①住民主体の役割分担(まちづくり活動センター、ボランティアセンター、公園里親制度、指定管理者制度)
②行政評価制度(外部評価) →行政運営の監視役 →まちづくりの改善
③町民と手作りの総合計画 →まちづくりの現状と方向性の共有 →担い手としての意識行動
④自治基本条例の策定開始 →まちづくりのルール化
(3)これからのまちづくり・・・住民自治のまちづくり~まちの自立
①地方政府としての自立を目指して(政策、財政、制度の自立)
②総合計画(政策規範)と自治基本条例(制度規範)による地域経営 →地域課題を踏まえた具体方策の共有・実践、まちづくりシステムの確立
③新しい公共の創造(行政主導から住民主体へ) →住民は公共の担い手(役割分担の明確化)
白紙からの手作り総合計画
(1)策定の背景とねらい
①元気まち運動の実践~住民参加の進展
②「行政計画」から「まちづくり計画」へ
従来:形式的な審議会方式、コンサル委託、美辞麗句の羅列→説得力の欠如
これから:地方分権、住民自治、厳しい財政事情の中で自立していくために
→自分たちのまちは自分たちでつくる、政策選択 →地域全体が共有する「まちづくり計画」へ
(2)策定経過と住民参加
①情報提供と学習会
平成14年2月 まちづくりフォーラム(策定のスケジュール説明、委員公募のPR) →全町的な機運の醸成
②検討メンバーの公募
従来:各種団体からの推薦、アテ職
今回:広報・新聞などで一般公募(17人)
③策定組織の立ち上げ
平成13年2月~ 策定委員会
平成14年7月~ 町民審議会
平成14年7月~ 職員プロジェクトチーム
④白紙からの計画づくり
学習会(総合計画の役割、町の財政状況、まちづくりの課題出し)
⑤子ども・働き人・女性・地区フォーラム
審議会主催まちづくりフォーラム(6回、300人)
子ども未来プロジェクト(絵画・作文、町内見学会、長所・短所のスナップ)
⑥町民意識調査
1,500人、自由意見200項目
トータルで1,351項目の課題 →施策・政策項目の整理(ピラミッド化)
⑦計画案の公表・説明会
平成15年1月 中間報告(議会へ、広報・HPで、意見募集)
平成15年12月~ 計画素案の策定 →議会への説明・意見交換 →審議会
平成16年4月 計画案策定
⑧パブリックコメント
平成16年5月 地区説明会(3地区、120人)
団体意向調査300団体
パブリックコメント73件
⑨議会上程・議決
平成16年6月 町議会上程 →特別委員会を設置
平成16年9月 議決(計画決定)
(3)まとめ
・策定期間:2年半
・審議会:全大会15回、小委員会30回
・策定委員会:18回、その他座長会議など、100回以上の会議や意見交換、町民参加は延べ1,600人
・コンサルなしですべて住民と職員で手作り
CI導入提唱から3人の町長が
(1)見野(けんの)町長は職員に対して厳しかった。4期務めて民間ノウハウを導入。
・「役所の常識は民間の非常識」
・職場でスリッパ履きはダメ(すぐに出動できないから)
・住民に挨拶する
・役所では職員は廊下の端を歩く
・報告は3分以内で簡潔具体的に
(2)平成15年4月:元役場職員の坂下町長が当選。
その後町政の混乱を招き、11月に不信任。
(3)現在は、見野町長時代の元気まち推進課長だった飴谷町長が見野路線を引き継ぐ。
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