まともに見ようよ~川と地域と私たちの生活 宮本博司氏講演
2007年度第10回都市環境デザインセミナー
宮本博司
■趣旨
「もう、洪水で多くの人が死ぬようなことはない」「昔に比べて、ずいぶん川の水がきれいになった」「河川敷の公園は自然がいっぱい」。こんな声を聞くことがあります。とんでもない話です。川と地域の分断、川と私たちの生活の分断が、川を川でなくし、洪水で多くの人命が失しなわれる危険性を今も高めています。ごまかさないで、逃げないで現状をまともに見よう。見て、身体で感じることで、「私たちがこれまで、何をしてきたのか」「次世代に引き継ぐ川と地域とは」が見えてくるように思います。
宮本博司
■講師紹介
宮本博司氏
1952年京都生まれ。京都大学大学院修士課程土木工学専攻修了。1978年に旧建設省に入り、技官として河川行政一筋に取り組む。河川開発課課長補佐などを経て、苫田ダム、長良川河口堰を担当。その後、国交省近畿地方整備局淀川河川事務所長として淀川水系流域委員会の立ち上げに尽力。同局河川部長をへて本省河川局防災課長を最後に2006年辞職。現在は(株)樽徳商店会長。本物の木の樽の復活が夢。また新淀川水系流域委員会には一市民として応募。委員長に就任。
■セミナー・プログラム
2007年10月20日(土曜日)
開場:午後3時45分
開演:午後4時00分~6時ごろまで
場所:学芸出版社3階会議室
〒600-8216 京都市下京区木津屋橋通西洞院東入
京都駅より徒歩約5分 お車での来社はご遠慮ください
電話でのお問い合わせはご遠慮ください。
司会:鳴海邦碩(大阪大学大学院教授)
終了後、懇親会あり(6時~8時頃まで)
■会 費
会員500円/会員外1000円/学生500円/中高生 無料
定員60名/会員優先/申し込み先着順
講師の宮本さんは、行政として自ら立ち上げた「流域委員会」に、辞職後、一市民として応募し委員長に就任されたユニークな元お役人。現在は家業の樽屋さんの経営者。川を愛する宮本さんが、淀川水系の治水の歴史と、これからの治水はどうあるべきかを熱く語られました。以下は私なりにまとめた要点です。
<秀吉の治水>
秀吉は、巨椋池に接続していた宇治川を北にある伏見城下に迂回させ伏見の水運を開いた。そのため、本来の河道よりも高台を通ることになり、水害の危険が増すことになった。
<明治以降の近代の治水>
明治期に淀川放水路(現在の淀川)が開削された。遊水地の機能を果たしていた巨椋池は干拓され調整機能を失った。木津川の堤防は川砂でできており越流に対して非常に脆い。堤防を繰り返し嵩上げしていったため、淀川と大和川の2つの天井川にはさまれた大阪の街は堤より20m低いところにある。
<悪循環~破堤の輪廻~防災が増災に>
目先の安全・利便・快適を求めて川を堤防に押し込むと、”破堤→かさ上げ→破堤時の被害の増大”の悪循環。氾濫の頻度は低くなるかもしれないが、被害が甚大になる可能性大。
<洪水の驚異的パワー>
明治の大洪水のとき鴨川の五条大橋のギボシは淡路島で見つかった。
<桂離宮の知恵>
なぜ桂離宮は400年間残ったか?桂垣と高床式建築・・・洪水は必ず来る。しかし(京都人と同じく)座敷には上がらせない。「防ぐ」から「しのぐ」へ。命だけはとられないしたたかな治水へ。
<分断から連続への転換を>
川を堤防に閉じ込めて、田と川を分断。生き物を分断。人と川を分断。自分たちの世代の責任で、次世代に自然に合致した河川環境を!
<ダムは外科手術>
ダムはどうしても造らねばならないときの苦渋の決断。一種の外科手術。やたらと「手術」をしたがる「医者」が多かったから、不信感を招いた。
■川歩き(見学会・受付終了)~桂川と有栖川(嵯峨嵐山・梅津)~
桜と紅葉のシーズンには一際賑わいを見せる嵐山から罧原堤を南へたどって梅津(上野橋)まで歩きます。(10月はまだ紅葉には早く混雑はないと思います)。
嵐山では、桂川から西高瀬川への取水の様子を見たり、時間があれば有栖川と西高瀬川が交差している地域も見たいと思います。
現在の罧原堤は1959年に決壊して、その後つくられたものです。
また有栖川が桂川にそそぐ地域では有栖川の改修工事が行なわれています。今の様子が数年後にどう変わるのかも興味があります。皆さんには是非、見ておいていただきたいところです。
詳細は当日お渡しする資料で説明します。
案内人 :大西賢市(右京区梅津自治会連合会会長/有栖川を考える会会長)
集合時間:13時
集合場所:嵐山ホテル前(現在工事中です。渡月橋北詰から桂川左岸を上流へ100m)
嵐電の嵐山駅より5分、JR嵯峨嵐山駅、阪急嵐山駅より15分
会 費:無料
定 員:15名
★必ず事前に申し込んでください。また激しい雨の場合は中止しますので、メール等連絡方法を明記ください。なお京都福祉協議会の行事保険には加入致しますが、それ以上の責は負いかねます。自己責任でご参加ください。
■主催等
主催:都市環境デザイン会議関西ブロック
共催:NPO法人子どもと川とまちのフォーラム
宮本さんの講演が始まる前に「桂川と有栖川の川歩きに行ってきました。以下は、そのとき撮った写真です。
嵐山、渡月橋付近の風景
渡月橋近くに集合。
堰に造られた取入口が西高瀬川の起点。
街中を流れる西高瀬瀬川。
有栖川の下をサイフォンでくぐる西高瀬川。水運に使われていたのはここまでか??
有栖川に沿って、桂川方面に下る。
左岸は新興宅地、右岸は茄子畑。
ボランティアで河原のゴミ拾いをしているおじさん。
淀川流域の浸水マップ。平地で安全なところはほとんどない。
有栖川下流で親水護岸を建設中。
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