「自然環境学習の森」について大変参考になるメールをいただきました。
昨日の自然環境学習の森整備計画策定委員会にワークショップメンバーとして参加された大内さんからメールをいただきました。整備計画案の内容について気のついたことが書かれていてとても参考になります。大内さんはため池や里山の再生活動をしている『カエルの分校』の代表。県や豊田市の環境行政にも関わりをもっておられます。
(仮称)「自然環境学習の森」は、素晴らしい森になって行く予感が
しました。
それは、行政と町民のみなさんが、ベクトルを合わせ、より良い
「自然環境学習の森」にして行こうとの熱意が感じられたのと、下記
のシンプルで解りやすい、方向としても良いコンセプトです。
①本来の里山に戻す。
→里山の再生(と維持)
…カッコ書きもあると、なお良いです。
②出来る限り人工物をつくらない。
→必要最小限の整備にとどめる。
→運営管理の中でも、施設の充実を図っていく。
今後は、以下が、成功の鍵になると思います。
①準備チームによる仕掛け
②実働組織作り
③人材の育成
④ふさわしい場長の任命
⑤明文化
①は、「自然環境学習の森」が軌道に乗るまでの役割を担い、いろ
んなことを決めたり、仕掛けて行きます。
非常勤で良いですから全体が見れる専門家なども入れて、きちん
とした方向付けが出来る様にすることが大切です。
メンバーは、町民主体で良いと思いますが、事務局は役場にお願
いするのが良いと思います。
言い換えれば、行政任せにせず、役場の仕事を住民がお手伝いす
ることです。
成功の鍵の②、③、④、⑤の具現化のために働きます。
軌道に乗った後は、管理棟の中に、運営事務局をつくり、仕事を
引き継ぎます。
②は、実際に汗を流す人たちです。それも継続できる人たちです。
途中での人の入れ替わりはあっても良いと思います。
また、連続参加が出来ず、例え、年に数回の人でも歓迎する空気
にしておくことが大切です。
出来るだけ多くの町民に「自然環境学習の森」を育てて行く喜びを
体験を通じて感じていただくことが重要です。
既に核となりそうなグループがいくつかあるようですが、出来れ
ば、(仮称)「自然環境学習の森を育てる会」として一本化し、その中
に、炭焼き班、コメ作り班、草はら班、湿地班、雑木林班、ため池
班、小川班などと分けるのが良いと思います。
会長さんは、輪番制で良いでしょう。
そして運営の中では、それらの班がリーダーとなる合同の作業が
あると、なお良いと思います。
そうすることで、相互理解が深まり、責任意識も育ち、自分たち
や全体のスキルアップにつながります。
勿論、事務局とは連携プレーが求められます。
それと、もう一つ大切なことがあります。
それは、若い人が多数参画していただくための工夫と、施策です。
自然の保全に関わる団体の共通の悩みは、マンパワーと後継者の
不足です。
先月、長久手町で「第17回湿地サミット」がありましたが、会場
におられた6割強が70代の方々でした。
各年代、最低でも5名くらいの人がいることが、より良い里山の
維持管理には不可欠です。
確かに、50代までの方は、使える時間が不足気味です。
それだけに、出席回数や、年の功で発言を抑えてしまうことのない
ような雰囲気づくりが求められます。
一日作業に対して半日しか出れない方も、暖かく受け入れること
が大切です。
若い人も、自分のためになると思えば、年配者にも付いて来ます。
大半の年配者は、里山が里山として機能していた頃を知ってられた
り、実際に木を切って燃料にしたり、落ち葉を掻き集めたり、小川
や田んぼでドジョウなどを捕ったり、ため池で泳いだり、昆虫採集
の経験がありますから、若い方たちには、それらを、経験者から
吸収していただくのです。
各班は、事務局と合同で、子供たちや町民のための講座も開かれ
たらいいです。そうすることで、里山のこと、自然のことをより多
くの人たちに伝えて行くことが出来ます。
なお、○○観察会だけを運営する班は不要です。
里山整備を通じていろんなことを学ぶことが出来ますので、各班に
は、○○に詳しい方も入っていただき、日頃は、里山の再生や維持
で汗を流していただき、時々やる○○観察会のリーダー役をお願い
するのがベターです。
自然を楽しみだけの対象にする人は、増やす必要はありません。
それと、汗を流す人たちが継続できるための工夫や、保険、道具、
資材、飲み物など、可能な範囲で結構ですから、行政としての支援
も必要です。
ときには、他の類似施設への見学会を、バスをチャーターして開
いていただくのも、学ぶ上で意義があります。
③は、複数の組織が出来、人も増えて来ると、いろんな意見が出
て、場合によっては対立も起きたりしますので、あるべき方向を学
ぶ場も必要です。
例えば、里山管理や生態系の勉強会であったり、生きものとの接
し方などについて、くり返し講座を開くことで、想いを一つにして、
汗を流す人や理解者を増やすことが、「自然環境学習の森」にとって
も、東浦町の自然にとっても有益です。
管理棟が出来る前は、町の他の施設で開いても良いかと思います。
里山の再生と維持管理は、相手が、物言わぬ生物たちですから、
今からやろうとしていることが、生物たちとそれらを含めた自然に
とって、本当に良いことか、問題はないのかを、人間側が謙虚に考
えながら、ことを進めることが大切です。
人間の好みで決めてはまずいですし、まして、多数決で決めるも
のでもないからです。
コンセプト②は、これらの考え方の延長線になり、評価出来ます。
④常勤の方に就いていただけるのが一番良いのですが、町の財政
事情などもありますので、非常勤で結構です。
なぜなら、事務局長の立場の方が、その方の意向を受けて代行が出
来ます。
この方の役割は、コンダクターですので、見識と人格を持った方
が適任です。
⑤大勢の方が長い期間に渡って関り合って行きますので、諸々の
取り決めは明文化しておき、動きやすくしておくことが大切です。
民間会社で言う「規定集」のようなものですが、平易な文とすること、
ときどき見直しもすること、物によっては、誰もが見える形で表示
することも大切です。
■その他
①西山の中の池際の散策路
可能な限り山側からは離すのが生態的には重要です。
理由としては、水の湧き出す方向なのと、山側の水際は、ハビ
タットとして重要なゾーンになっていますから、日常的に人が
歩くと、水際が痛んだり、生態系の撹乱が起きます。
…この点で、新池の南池畔にデッキを造ることには賛成でき
ませんでした。
出来れば、散策路は堤体側に造り、普段は堤体側から眺める
のが良いと思います。
勿論、調査などで、他の水際に入ることは問題ありません。
②ミズバショウなど
意外な名前が出ていました。移入種の持ち込みは避けましょう。
ミズバショウの持ち込みは、決定ではないと思いますが、個人
の庭造りや、業者の見本園ではありませんので、その地に元々
あったもので、里山の再生を目指していただけたらと思います。
オニバスなどは、以前の飛山池にはあったのですから、再生
を図ることは、東浦町の特長にもなり、良いと思います。
水草では、近くの明覚池にあるものの一部を移入したりする
のであれば、問題ないと思います。
アサザは、東浦町のどこかに残っていれば、一部移入は可能
です。
どちらにせよ、水草を入れる前に、「池干し」は必要です。
池干しをすることで水中の酸素も確保でき、ブルーギルやブラ
ックバス、ライギョ、増えたコイ、ウシガエルなどを駆除でき
ます。
なお、ハンノキについては、日当たりの良いところであれば、
野鳥が種子を運んで来て生え、成長も早いですので、人手とお
金を掛けて植える必要はありません。
それと、谷が狭いですから、南側の湿地帯は、可能な限り明
るくされるのが良いと思います。
③木道
日陰部分が出来て植生が変化する、メンテナンス費用が馬鹿
にならない、滑って落下しケガをすることがあるなど、必ずし
も良いことだけではありません。
昔の里山には木道はなく、ぬかるんだ所は長靴を履いて歩け
ばよく、木道はなくても良いのですが、造られるのであれば、
踏み板以外は、耐久性のある素材が費用と安全面でいいです。
なお、防腐剤を塗った木を使う所が散見されますが、子供に
も、生きものたちにも良くありませんので使わないことです。
④池干し
昔は、稲刈りが済んでから、池の管理作業の一つとして、
レクリエーションを兼ねてやっていました。
時期的には、9月半ばから10月末までに実施するのが良い
と思います。
愛知県では、モデル的に、下記ため池で池干しをしています。
http://www.pref.aichi.jp/0000017655.html
今年の実施が難しければ、とりあえず、手伝いを兼ねて、
有志の方々で見に行かれるのも良いと思います。
(問)農林水産部農林基盤担当局 農地計画課 排水対策グループ
犬山市では環境省の補助を受け、数年前から実施しています
ので、大変参考になります。
特に外来魚駆除については、実績とノウハウがあります。
(問)は、犬山市へ。
ノウハウなどは、山岡さん(ため池の自然研究会)へ
http://chubu.env.go.jp/to_2005/1128a.html
http://chubu.env.go.jp/to_2005/data/1128a_1.pdf
参加者の声
http://homepage2.nifty.com/jomonjin/aqua/2-1ikehoshi.htm
⑤湿地帯の水の確保
中島さんからも意見が出ていましたが、渇水期に備え、南側に
小さな池を点在されることは有効です。
深さは1m未満、平均水深は50センチほどの皿池で十分です。
浅すぎると、水草が繁茂しやすくなります。
このことにより、水の確保だけでなく、開放水面の好きなトンボ
や、小魚などの生息場所としての役割も持たせることが出来ます。
各ため池間は素堀りの小川で結ぶことで、多様な生態系が創出
出来ます。
勿論、下流の水田に迷惑を掛けない水管理が必要です。
⑥田んぼと多機能広場の間
草原やミニ田んぼ、湿地などにして、子供たちも自由に遊べる
空間にされてはと思います。
⑦サンクチュアリ
この言葉は日本野鳥の会が使い出し、一部の人には野鳥の聖域
との受け止めがありますので、そのものヅバリで、「自然のままの
エリア」とか、「立ち入らないエリア」などが良いように思います。
ただ、草を刈らないとありましたが、一体は、耕作地が放置さ
れていた所ですから、特定の優先種で覆われるなど、好ましくな
いものもありますので、ほどほどの手入れは必要です。
草や潅木を刈り込み過ぎないエリアと言うことですね。
⑧ビオトープ
この言葉も、日本の大半の方が誤解して使っています。
つまり、人工的に創った水辺の空間とのニュアンスです。
ビオトープは、野生生物の生息空間そのものを言いますので、
「自然環境学習の森」全体がビオトープですから、その一分の呼称
としてビオトープを使うのは、誤りです。
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