今年の夏も蚊取り線香のお世話になりました。
急に涼しくなってきました。やっと蚊取り線香のお世話にならずに済みます。
ところで、蚊取り線香って何からできているのでしょうか。
除虫菊を乾燥させて粉にしたものに、つなぎとしてタブ粉(タブの木の粉末)とデンプン、支燃剤として木粉、そして染料などを混ぜて、コイル状に成型してつくります。「大日本除虫菊(金鳥)」の創始者が、小さくても燃焼時間を長くするためコイル状にすることを思いついたのだそうです。測ったことはありませんが、渦巻きは、伸ばすと75cmほどになるそうです。
除虫菊(シロバナムシヨケギク)に含まれる有効成分は、ピレスロイドと呼ばれるシクロプロパン環を有するキク酸のエステルの仲間で、代表的的なものにはピレスリンがあります。昆虫の神経受容体に作用して強力な殺虫効果を持ちますが、哺乳類にはほとんど作用しないと言われています。今では、合成品が使われ、除虫菊はほとんど栽培されなくなりましたが、中には天然素材のみでつくられる蚊取り線香もあるそうです。
キンチョールなどの殺虫剤にもピレスロイドは入っているそうですが、虫はその場で即死するわけでははありません。でも、コロッといくのは、見た目の効果をアピールするために殺虫成分とは別に「ノックアウト剤」と言われるものが入っているからです。
ところで、キク酸にはシクロプロパン環(3員環)か含まれていますが、これは歪みの大きい不安定な構造として知られています。
本来、4本の手を持つ炭素の結合角は、正四面体の中心角と同じ109度28分(約109.5度)。それに比べて、シクロプロパンの結合角は60度(正三角形の内角)にならなければならないので、かなりきついです。4員環だとシクロブタン。
これらの骨格を持つものの中には、プリズマンやキュバンのようなおもしろい構造の化合物が知られています。これらは当初は想像上の化合物でしたが、多くの化学者が合成に挑戦し、人工的につくられました。
他にも不思議な形をした環状の化合物がたくさんあります。http://www.org-chem.org/yuuki/name/name.html
有機化学美術館http://www.org-chem.org/yuuki/yuuki.htmlには他にも面白い話がいっぱいあります。
基礎的な説明があるものとしては、http://www.geocities.jp/junk2515/sanpo/sanpo_01.htmもお薦めです。
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コメント
わが家も蚊取り線香のお世話になりましたが、除虫菊が明治時代にアメリカから来たとは知りませんでした。外来種といえば、セイタカアワダチソウに悩まされているだけに、つい悪者と思いがちですが、除虫菊様様です。
有機化学美術館は興味深いけれども、自分の理解力を超えているのが悲しいです。花粉アレルギーだけでなく化学式アレルギーもあったことに気づきました^^;
投稿: 絵本の虫 | 2009/10/15 01:07
皮肉なことに、除虫菊は今では観光用として尾道市付近http://www.city.onomichi.hiroshima.jp/kanko/data_inno/f_jochu.html
http://www.kincho.co.jp/tama/kiku/kiku.html
でつくっている以外は絶滅寸前のようです。
蚊取り線香工場は、いまでも和歌山県有田市付近にたくさん残っているようです。
私が自分の言葉でわかりやすく書かずに、引用にたよっているところが「化学アレルギー」の原因では?と反省しています。
投稿: かみや | 2009/10/15 23:37
いえいえ、かみや先生の化学教室は、私でもなんとなくならわかります^^; むしろ「基礎的な説明」の方が難しかったりするのです。 もう勉学意欲そのものを(減退ではなく)喪失しているので、化学に限らず様々なものの理解が困難になってきました。それで安易な方に長さっれぱなしです。その点、ほかの読者の方々なら大丈夫でしょう。
投稿: 絵本の虫 | 2009/10/16 13:58
理解力というよりは、それ以前に、好奇心、学習意欲、気力の問題。自分も同じです。
今やってることや知ってることは、最初は何もないところから始めたはずなのですが、いつの間にか世界を広げるのが億劫になってしまいました。
初心に帰らなきゃと思います。
投稿: かみや | 2009/11/05 23:24