第3回木曽川流域圏シンポジウムで「知多半島の水道水の水源を長良川河口堰から木曽川に戻したい」をテーマに報告
名古屋工業大学で『第3回 木曽川流域圏シンポジウム「御嵩町・産廃処分場問題は終わっていない」』が開かれました。
第1部のパネルディスカッションでは、御嵩町の産廃処分場計画をストップさせた前御嵩町長の柳川さん、住民投票運動のリーダー田中さん、処分場反対運動をしてきた御嵩町議の岡本さん、現地の入念な生物調査をしてきた梅北さんらが、産廃問題のその後や現地の様子について報告しました。
第3部の中で、私は、「水道水の水源を長良川河口堰から木曽川に戻したい」と題して、長良川河口堰完成以来、河口堰の水を飲んでいる知多半島の状況をお話ししました。
以下は、私の話しの概要です。(パワーポイントの原稿を手直ししたもの)
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知多半島の水道水の水源を長良川河口堰から木曽川に戻したい。
・(主観かもしれないが)木曽川の水はおいしい。
・(長良川河口堰の水が有害と言うつもりはないが)河口よりも中流域の水のほうがきれいに決まっている。
なのに、どうして河口堰の水を飲まなきゃいけないの。
人の口に入る飲料水には、きれいでおいしい水を優先すべきでは。
問題を抱えたまま長良川河口堰が完成
知多半島の水道水が河口堰の水に切り替えられた。
※国土交通省HPより
河口堰の水は木曽川の水とどう違う。
※愛知県の水質測定データを加工
浄水場での薬剤投入
処理の際に、PAC、苛性ソーダ、次亜塩素酸、活性炭などを使用
活性炭の使用
上野浄水場
知多浄水場 使用日数
使用量(kg)
使用日数
使用量(kg) H13
1
720
109
114,590 H14
0
0
90
68,610 H15
21
16,200
34
18,210 H16
0
0
9
1,849 H17
10
4,280
51
41,780 年平均
6
4,240
59
49,008
※愛知県の実績データより
知多浄水場に新設された活性炭投入施設
活性炭の投入は長良川河口堰からの取水が始まってから日常的に行われるようになった。
やっぱりきれいでおいしい木曽川の水を。
<できない理由>
・ 水道水としての基準は満たしているので問題ない。
・ 水利権の整理は至難。
水利権? でも、なぜ農業用水と工業用水は木曽川の水?
・ 浄化するにしても、よりきれいな水、よりおいしい水。
・ 人が飲む水と産業に使う水とどちらが優先か。
(岐阜市を抱える長良川流域人口は80万人以上。当然たくさんの生活廃水、工業廃水、農業廃水が入る。木曽川中流域はせいぜい20万人程度。)
→ 水利権調整は、水の融通は、できないのか? → でも、もっと簡単な方法が!
知多浄水場では水源の切り替え可能
(あくまでも緊急時というが)
・ 平成12年9月 長良川上流で化学薬品が漏れ出す。
・ 平成16年7月 長良川河口で塩水が遡上。
新聞にもとりあげられる
平成18年11月17日 中日新聞知多版に「木曽川vs長良川河口堰」と題して、上水道の水源問題が載る。
今後の進め方・・・?
• 住民の請願?
• 知多半島の市民・議員の連係プレイ?
• 味比べ大会?
• 政権交代の影響は?
まとめ
・水源問題の本質はハードでなくソフトにある。
水の融通など、柔軟な対応で解決可能。
・人任せでなく、自分たちで解決策を選択。
我慢しないと、公共事業は止まらない。
旱魃や洪水は防げない。
ハードに頼る声が大きければ、将来へのツケや環境破壊は続く。
・水源問題は、単なるハードの問題ではなく、人と人、上流と下流との問題。
水量と水質が確保できるのは、上流のおかげであることを忘れてはならない。
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以下は、今回の企画・進行役の大沼さんがまとめた報告書の抜粋です。
報告:第3回木曽川流域圏シンポジウム「御嵩町・産廃処分場問題は終わっていない」
<第1部 パネルディスカッション>
第1部を始めるころにはなんとか50名ほどが集まってほっとしながらスタート。まずは司会から木曽川に面した急斜面での巨大産廃処分場計画が明らかになって以来、柳川町長襲撃事件が起きたこと、産廃問題に関する全国初の住民投票が行われて計画が止まったこと、今年になって御嵩町産業廃棄物処分場計画地利用指針検討委員会が設置され、恣意的な委員選考や住民投票の結論を揺るがしかねない議論経過があったことなど、14年間の流れを大急ぎで紹介した。
次いで、御嵩町住民投票直接請求代表者であり、条例の条文などを書かれた田中保さんから住民投票が行われた経緯について報告していただいた。約90%の投票率で80%が産廃処分場拒否の投票をした、すなわち全有権者の70%が産廃拒否の意思表示をしたことになる。署名運動の当初から1万人の拒否投票を目指していて、そのとおりの結果を得ることが出来たと話された。
続いて、前御嵩町長・柳川喜郎さんが立ち、東京都は明治時代に奥多摩などに26000haの水源林を購入したこと、横浜市は大正時代に山梨県道志村に2800haの水源林を購入し、戦後になって道志村にゴルフ場立地問題が起きた時に水源基金を設置して道志村の応援をしたこと、甲府市も富士川上流に水源林を持っていること、一方名古屋市は大正3年に木曽川の水利権をタダで手に入れたのに水源林を持っていないし、木曽川上流に対してほとんど何もやってこなかったことを指摘された。また、木曽川の水を一滴も飲んでいなくて高価な飛騨川の水を引いている御嵩町民が、安い木曽川の水をジャブジャブ使っている名古屋など下流域住民の飲み水の安全に配慮した投票を行ったことが改めて確認された。(なお、出版されたばかりの柳川さんの著書「襲われて-産廃の闇・自治の光」(岩波書店)が受付に並べられたが完売した。)
みたけ産廃を考える会で処分場反対運動をしてこられた岡本隆子さん(現御嵩町議)からは、御嵩町産業廃棄物処分場計画地利用指針検討委員会設置の経緯や、そこで行われた議論、「利用指針のための基本的考え方(案)」とそれに対する「御嵩産廃を考える会から提出した意見書」、「利用指針(案)」(シンポ資料として配布された)などについて説明があった。「利用指針(案)」に対しては18通の意見書が寄せられ、そのうち14通が「小和沢に産廃関連施設を造らないことを明記すること」を求めていたこと、それを受けて利用指針原案の結語で「住民投票の結果を尊重して利用計画を策定」とされていたのが「産廃処理施設を設置しない」と明確な表現に改められたことなどが報告された。
さらに岡本さんは壇上から「この会場に御嵩町役場の職員と可児署の公安担当刑事がいる」ことを明らかにし、会場に緊張が走った。「やっぱり御嵩産廃問題はまだまだ終わっていない」ことが参加者一同に実感として感じられた瞬間であった。そもそもどうして公安の刑事が市民団体主催のシンポジウムの監視をしに来るのだろうか・・・?(ちなみに、彼らは第1部終了時点で姿を消した)
小和沢の生物調査を13年間余り、合計159回にわたって続けてきたスズサイコの会・梅北征子さんの報告は圧巻だった。サシバ、オオタカ、ノスリ、ハチクマ、クマタカなどの猛禽類、キクイタダキ、ウソ、ミゾゴイ、コノハズクなど・・・次々と登場する鳥たち、小和沢は実に豊かな鳥たちの棲みかとなっているのだった。植物に関するデータも鳥に負けない豊かさを示し、絶滅が危惧される植物が多数確認されていることが明らかになっているが、盗掘を恐れて写真が映されなかったのが残念だった。「スズサイコの会」と御嵩町民中心の「オオタカと美しい自然を守る会」が続けてきた膨大な調査記録は、「小和沢利用計画指針のための基本的考え方(案)」に対する意見書でも大きな役割を果した。検討委員会はこの貴重なデータについて議論しなかったし、御嵩町役場も評価しようとしていないのは残念なことである。専門家の調査ではないというのが彼らの言い分のようだが、分類学や生態学の分野では在野の研究者、卓越したアマチュア研究者が果たしてきた役割は大きい。レッドリストなどの基礎データでもそれらは大きな貢献をしているし、万博開催をめぐって揺れた海上の森の環境アセスメントでは専門家の調査結果の誤りがお母さんグループの調査で次々と明らかにされたことは記憶に新しい。そもそも、牧野富太郎やファーブルだって在野の研究者だったのである。
<第2部 みんみん演奏>
第1部は名古屋市の水源林に関する提案を総合討論への宿題としていったん締めくくり、休憩をはさんで第2部のみんみん演奏に入った。間伐材で製作された創作楽器「みんみん」を、創作者である川合ケンさん自身が演奏してくれるという貴重な時間である。華奢に見えるが意外に堂々とした音である。イマジンなど数曲が演奏され、最後は「ふるさと」を参加者も一緒に合唱して終わった。
<第3部 流域圏からの報告>
第3部は、「生物多様性と木曽川流域圏」と題して流域各地で活動するグループや個人からの報告である。2010年10月に名古屋市で開催される生物多様性条約締約国会議COP10では、木曽川上流域の生態系サービスであるおいしくて安全な水や、農林産物を享受する下流域都市圏の責任として、上流域支援の義務が議論されるべきであるという文脈で設定されたテーマである。
トップバッターは徳山ダム反対運動を中心的に闘ってこられた近藤ゆり子さん。つい最近出版された「徳山ダム導水路はいらない」(風媒社)の著者でもある。生物多様性に関連して、利用のメドが立たない徳山ダムの水を890億円もの追い銭をして木曽川まで運び、渇水時に木曽川中流域のヤマトシジミを塩害から守るという怪しげなこじつけ(環境維持用水というらしい)をひねり出した国土交通官僚どもの浅知恵(悪知恵)の紹介をされた。そもそも長良川河口堰建設によって長良川のヤマトシジミは壊滅状態になっているわけで、その下手人どもが木曽川のヤマトシジミを守るというのだから笑止千万である。
その長良川河口堰のまずい水を飲まされている知多半島・東浦町で木曽川水源への復帰を訴えている神谷さん(東浦町議)は、工業用水に回されている木曽川の水を都市用水(飲み水)の管路に流し、長良川の水を工業用水に回すというスワッピング案を図入りで紹介した。すでに管路は全てつながっていて、単にバルブを切り替えれば良いだけの話なのである。現実に長良川上流で化学薬品が流入した時は緊急時対応ということで知多半島の都市用水が木曽川水源に切り替えられたことがあったそうである(2000年の出来事)。水問題はハードでなくソフトだけで解決できることが多いという指摘はとても重要である。水利権をふりかざして水の調整と融通をしようとしない国土交通省や愛知県企業庁は、実に莫大なムダと不条理を生産し続けている。神谷さんの報告でもう一つ素晴らしい指摘があった。「洪水と旱魃は防げない」である。すでに国土交通省は100年に一度来るような洪水は防げないことを認めるようになったが、100年に1度の旱魃については今だにダム建設の言い訳に使って、調整と融通を認めようとしていない。もうダムの時代ではないのである。造りすぎたダムの補修だけでも莫大なお金とエネルギーが必要なのであって、これ以上のダムを造るべきではないのである。これほど説得力のある神谷さんの意見書案が、東浦町議会で自民党と公明党の反対にあって6:13で否決されたそうである。
日進市、豊明市、三好町などでつくる中部水道企業団が2001年から1トン1円の水道水源保全基金積み立てを開始し、毎年3000万円のお金を王滝村などの木曽郡木曽広域連合に送っている。東郷町議の山口洋子さんは、第2回木曽川流域圏シンポジウムで聞いた水源基金について東郷町議会で提案したそうである。この提案を聞いていた別の議員が中部水道企業団の議会で提案して水源基金実現の運びになったのである。さらに東郷町では、名古屋市・御岳市民休暇村に宿泊する町民に1泊2000円の補助金を出したり、王滝村に間伐枝打ちボランティアを送ったりしている。この市民休暇村は名古屋市の行政評価でCランクとされ、廃止すべき施設リストに載せられてしまっている。しかし、人口が1000人を切り、公債比率が夕張市を超えて日本一となって苦しむ王滝村にあって、市民休暇村が約100人を雇用しているという状況を考えれば、名古屋市の都合だけで簡単に廃止を決められるべきではない。名古屋市による水源林としての買取、あるいは、名古屋市との飛び地合併なども視野に入れた王滝村支援策が考えられるべきだろうという話も出た。(このあたりで川合ケンさんは、来年夏あたりに休暇村を舞台にしたコンサートを企画してはどうだろうかというアイデアがひらめいたそうである・・・懇親会でうかがった話)
「流域自給をつくる大豆畑トラスト」の歴史も10年を超えた。全国にいくつかある大豆畑トラストが遺伝子組み換え作物を食べたくない、輸入や栽培をやめさせるための運動であるが、ここ木曽川流域のトラストはまず「流域自給をつくる」ことを最初に掲げている。この運動を提案し、流域を回って生産者を探し回った故由利厚子さんの呼びかけ文が紹介された。きっかけは御嵩町に計画された巨大産廃処分場問題だったのである。この問題が起きたことによって、流域全体とりわけ下流域から上流域を見るまなざしに覚醒させられたと由利さんは書いている。
最後は主催団体である木曽川水トラストの木亦さんから、御嵩町での森林ボランティア活動の報告であった。住民投票の後、下流域で集まった寄付金600余万円を御嵩町に役場に持参したところ、当時の柳川町長から御嵩町内に森を買うことをすすめられたことに端を発して、トラストの森「水源の森・みたけ」が誕生し、隣接する民有林で間伐や枝打ちの練習が始まったこと、間伐材で総ヒノキの小屋が建ったこと、3年前からは御嵩町有林3haの整備を引き受けて、毎月2日間ずつの御嵩通いが続いていること、間伐材の木材市場への出荷実験やパルプ材としての出荷なども行っていること、御嵩町のイベント「環境フェア」や「みたけの森祭り」などにも出展して町民との交流を図っていることなどが紹介された。
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