「さくら市議会の損害賠償請求権放棄の議決は無効」の高裁判決
栃木県の旧氏家町(現さくら市)で、不動産業者が平成16年に競売で4500万円で取得した土地をその直後に町が2億5千万円で買い上げたのは、不当に高いとして、住民が宇都宮地裁に損害賠償を訴えた裁判で、平成20年12月、地裁は住民側勝訴の判決を出した。地裁は町長が町に与えた損害を1億2千万円余りと認定し、現さくら市が当時の町長に損害額を請求するよう命じた。
しかし、さくら市は、これを不服として東京高裁に控訴。
さらに、市議会が「市がこの訴訟で損害賠償請求を求める権利を放棄する。」という内容の「決議」を可決。
この市議会の請求権放棄決議が裁判にどのような影響を与えるか注目されていたケースで、東京高裁は市議会の決議を無効とし控訴を棄却する判決を出した。
以下、毎日新聞の記事からの抜粋。
◇「真摯に受け止めて」
「議会と市長は判決を真摯(しんし)に受け止めてほしい」。24日に東京高裁であった旧氏家町(さくら市)の浄水場用地を巡る住民訴訟の控訴審判決。1審判決後に市議会が損害賠償請求権を放棄する議決をしたことについて、東京高裁は「三権分立の趣旨に反し、無効」とする判断を示した。東京・霞が関の司法クラブで会見した原告の会社役員、桜井秀美さん(55)は「同じような境遇で住民訴訟をしている人にとっても力になる」と喜びを語った。【戸上文恵】
桜井さんは05年12月、旧氏家町が相場を大幅に上回る2億5000万円で浄水場用地を購入したのは不当として、提訴。宇都宮地裁は昨年12月、当時の町長・秋元喜平前市長に約1億2000万円の返還請求をするよう市に求める判決を言い渡した。市はこれを不服として控訴し、9月29日に控訴審判決が出るはずだった。
しかし、市議会が9月定例会で、「秋元前市長の裁量に不法な逸脱、乱用が見られない」として、損害賠償請求権を放棄する議案を賛成多数で可決したことを受け、東京高裁が弁論再開を決定。この議決が有効かどうかが大きな争点となった。
先月27日の大阪高裁判決に続き、東京高裁が議決を無効とする判断を示したことについて、原告側代理人の米田軍平弁護士は「日本の裁判の流れを大きく変えるもの」と意義を強調。その上で「議会も変わらざるを得ないし、行政ももっとシビアに行政運営をせざるを得なくなる」と指摘した。
◇市長「きょうにも上告」
高裁判決を受け、さくら市の人見健次市長は市役所で会見し、「市側の主張が認められず残念。上告して最高裁の意見を聞きたい」と述べた。25日にも上告するという。
人見市長は、これまで東京高裁が議会による損害賠償請求権放棄の議決を有効と認め1審判決を破棄したケースを引き合いに、「議決に関する裁判所の考え方が統一されていない」と指摘。また、「土地取得事例の単価からみても適正な取得価格と考えている」と改めて強調した。
その後、市議による記者会見があり、手塚定議長は「想定できない結果となった。判決内容を十分精査して市議会として対応したい」と述べた。【山下俊輔】
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◇さくら市浄水場訴訟の経過◇
05年12月14日 旧氏家町が相場を大幅に上回る2億5000万円で浄水場用地を購入したのは不当として、住民の男性が市を相手取り、約1億2000万円を当時の町長の秋元喜平前市長らに返還請求するよう求め提訴
08年12月24日 宇都宮地裁が住民の訴えを認める判決
26日 市が控訴
09年 7月14日 弁論終結
9月 1日 さくら市議会が市の損害賠償請求権を放棄する議案を可決。市が弁論再開の申し立て
16日 東京高裁が弁論再開決定
10月29日 弁論終結
12月24日 東京高裁が市議会の議決を「無効」と判断し、控訴を棄却
この件についての関連サイト
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091225-00000116-mailo-l09
http://www.shimotsuke.co.jp/town/region/central/sakura/news/20091224/256497
http://mainichi.jp/area/tochigi/news/20091225ddlk09040240000c.html
http://mblog.excite.co.jp/user/ombuds/entry/detail/?id=10594859
以前、さくら市議会が損害賠償請求権放棄の決議をしたことについて、つれづれログでも触れた。以下は、そのときに紹介した元さくら市議 加藤朋子さんのメルマガ『KATOMOKOの元市議的生活http://archive.mag2.com/0000118376/index.html』の高裁判決に関するコメントの抜粋。
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皆さんこんにちは!katomokoです (2009/12/27)
☆ 1.高裁判決、住民勝訴!
注目の東京高裁判決が24日に出ました。
さくら市の控訴が棄却され、
地裁判決に続いて住民側が全面勝訴しました。
以前にお伝えした大阪高裁の判決から、
ずいぶん風向きが変わってきているのは感じていましたが、
市側にこれだけの厳しい判決が出るとは
katomokoも予想していませんでした。
判決理由では「さくら市議会の請求権放棄議決は
2審で一審同様の認定判断がなされることを
阻止するために議決されたもので、
裁判所の判断に対し、
議会の判断を優先させようとするもの。
三権分立の趣旨に反する。」
「裁量権を逸脱または乱用したもので違法、無効。
よって秋元前市長に対する損害賠償請求権は消滅しない」
と断じています。
平たく言えば、「議会が司法に口を挟むな。
本分を守れ。」と言うところでしょうか。
正にその通りです。
議会がやるべきことは
他にたくさんあるのですから。
この判決を受けて、
人見市長は25日に最高裁に上告した模様です。
1,2審が覆るような判決が出るとは思えないのですが・・
裁判費用(市民の税金で賄われます)も
馬鹿にならないと思うのですが、
皆さんはどう思われますか?
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