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2011/04/08

Brazil syndrome ・・・3月19日に書いた記事の再掲です

岩手県沖から茨城県沖に掛けて長さ約500km、幅約200kmの海底で断層がずれ、3つの震源でほぼ同時に地震が起き、揺れは約5分間続いた。地震の規模は、観測史上最大のM9.0といわれている。

CNNによれば、この地震の前後で日本の海岸線が約2.4mずれ、地球の地軸が約10cmずれたのだそうだ。

世界最大の原発は、新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所(最大出力821万2千kw)だが、福島県双葉郡にある福島第一原子力発電所(469万6千kw)と福島第二原子力発電所(最大出力440万kw)の合計はそれを超える。

福島第一原発では原子炉の冷却がうまく出来ず炉心溶融(core meltdown)が起きた可能性があるという。
米国スリーマイル島の原発事故のときチャイナシンドロームという言葉(炉心が地面を融かして地球の反対側の中国に達するというジョーク)がはやったが、燃料棒が溶けて原子炉容器に穴が開き、核分裂で生じた放射性物質が外部に拡散すると最悪の事態になる。
福島第一原発の付近ではヨウ素やセシウムの放射性同位体が検出されているらしい。これらの中には数秒で崩壊してしまう半減期の短い原子もあれば、半減期が長く(半分に減るまで)数億年かかるものもある。半減期が長いものはいつまでも核反応を起こして放射線を出し続けるので体内に吸い込むとタチが悪い。

原子力発電所で使用される核燃料はウラン235を3~5%程度含むウランだ。天然ウランは、質量数238(原子核が陽子92個、中性子146個からできている)のものが大部分で、質量数235(原子核が陽子92個と中性子143個からできている)のものがほんのわずかに(0.7%程度)含まれている。
これを濃縮してウラン235の濃度を高くし、ペレット状にしたものが核燃料だ。さらに手間をかけ90%程度まで濃縮すると原爆用のウランになる。

ウラン238はα線を出してトリウム234になり、さらにβ線を出してプロトアクチニウム234になる。このようにα崩壊とβ崩壊を繰り返し、地球の歴史に匹敵するような長い時間をかけて安定な鉛206に変わっていく。一方、ウラン235は核分裂を起こすことが知られている。

Nuclear_fission_exsample_2

右図は、ウラン235に1個の中性子が吸収されて、不安定核種ウラン236になり、これが質量数が約半分の二つの原子に分裂し、中性子が2個放出される代表的な核分裂反応の例だ。この反応ではイットリウム95(原子核が陽子39個と中性子56個からできている)とヨウ素139(原子核が陽子53個と中性子86個からできている)が生成する。
このほかに中性子が3個放出されるなど複数の反応パターンが知られており、放射性原子が崩壊するとさまざまな放射性原子の「ごった煮」「核のゴミ」状態になる。
1回の核分裂で2~3個の中性子が放出されるので、これらの中性子が次々に周囲のウラン原子に吸収されれば、ネズミ算式に反応が促進され、連鎖反応が起こる。一定量以上の核燃料が集中すれば反応が爆発的に進むことになる。
核分裂の前後ではウランの質量に比べて生成物の質量の総和が小さくなること(質量欠損)が知られている。質量欠損が起こると、アインシュタインが導き出した質量とエネルギーの等価性の式(
E=mc² )で示されるように、消失した質量(m)に、光速(c)の二乗を掛け合わせた莫大な量のエネルギーが発生する。
広島に投下された原子爆弾では、0.7g程度の質量が欠損したと推定されている。一方、核燃料を小分けにして、核分裂反応をうまく制御し、このエネルギーを持続的に取り出すのが原子力発電の考え方だ。

放射性原子の崩壊や核分裂は自発的に起こる(止めることはできない)ので、制御棒を入れて原子炉が停止しても、水で燃料棒を冷やし続けなければならない。さもなければ、次第に温度が上昇して燃料棒が熔融してしまう。千数百度を越えれば分厚い鉄板で覆われた原子炉本体が損傷して、中の放射性物質が外部に漏れ出すことが考えられる。福島第一原発では、すでに原子炉が空焚き状態になっていると考えられる。また、原子炉建屋内に置かれている使用済み燃料棒も、水中に沈めて冷やし続けなければならない。
核燃料を包んでいるジルコニウムが高温で水と化学反応すると水素が発生する。福島第一原発では、この水素が原子炉建屋内にたまり、それが空気と反応して爆発、分厚いコンクリートでできた建屋の上部が吹き飛んだと考えられる。次の動画は、ロイターが1号機の水素爆発の様子を伝えたものだ。

上記の報道を見ると、日本での受け止め方に比べて、海外での受け止め方はより深刻なのではないかと感じる。

ドイツ紙「シュピーゲル」のサイトでは、福島原発爆発以降(12日~17日)の風向きの変化による被曝状況の粗い(精度の低い)シミュレーションを載せている。
http://www.spiegel.de/images/image-191816-galleryV9-nhjp.gif (クリックで放射能を含んだ大気の流れがわかる。)

このシミュレーションでは、放射能が14日に東京にも到達していることがうかがえる。(実際に東京の放射線測定値を見ると原発事故の影響が見て取れる。愛知県への影響は幸い今のところないようだ。文科省のHPに日本各地の測定データがある。リアルタイムのグラフを示しているサイトもあるhttp://atmc.jp/。)

16日にドイツの友人から来たメールからも、ドイツでの深刻な受け止め方が読み取れる。

Did you feel that earthquake in your area? How far is the distance from your residence to Fukushima? I am  so very much concerned about the atomic radiation.
As you know - southern part of Germany was  affected by Tschernobyl in 1986. I still remember it very well. Contermination  of Cesium in the ground is still there - wild animals (wild pig) are often recommended not to eat - also mushrooms...
Lots of people die in their 40 th and 50 th reason: cancer. 

Here in Germany contaminationmeter are sold out and people buy Iodine now. Everybody has Tschernobyl in mind. It is thousands of kilometers away and  radiation reached us by winds. The russian  information policy was almost 'zero that time. They wanted to keep it 'little'...

Have you thought about leaving Japan at least for a while?


ドイツの人たちは、すでに線量計やヨウ素剤を買い込んでいるそうだ。ヨウ素剤とは、放射性ヨウ素が体内に取り込まれ甲状腺に蓄積されるのを防ぐため、あらかじめ非放射性のヨウ素を摂取するものだ。ドイツ南部では旧ソ連のチェルノブイリ事故による影響が今でも残っているそうだ。最後に、「日本をしばらく離れないの?」で結ばれている。

パニックによる混乱は避けたい。冷静で居るに越したことはないが、日本で今起こっている事態は相当深刻であることを覚悟せねばならない。

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※この時点の関心事は、大気の放射能汚染でしたが、その後、土壌汚染、さらには深刻な海洋汚染が広がり、魚介類からも高濃度の放射能が検出される事態になってきました。一刻も早く事態が収拾に向かうことを願うばかりです。

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コメント

難しい内容をわかりやすく解説してくださって有難うございます。

水素爆発の動画はBBCニュースで知りましたが、日本では放映されたのでしょうか? パニックを避けるために放映を自粛、あるいは検閲を受けたとか? 昨今の日本の報道を見ていると、どうも情報操作されているとしか思えず、戦争中の報道を思い出してしまいます。事実を的確に伝えることなしに、国民のパニックは避けられないと思うのですが。

私もイギリスの友人に「家に泊めてあげるから早く仁尾本脱出しさなさい」と促されました。国外へ出るつもりはありませんが、内部被曝について懸念しています。

投稿: 絵本の虫 | 2011/04/11 11:52

日本の報道はとても抑制的だ。東京に住む友人からもそんな話しを聞きました。彼も、海外に友人が多く、日本との深刻さの違いを感じるのだそうです。

投稿: 神谷 | 2011/04/11 23:10

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