武豊線近代化促進期成同盟会総会と須田寛さんの講演
6月4日、武豊線近代化促進期成同盟会の総会が半田市役所であった。武豊線の増発、高速化、駅の整備やサービスの向上など、利便性向上のための要望と、年に一回の講演会がこの会の主な活動だ。加えて、われわれ自治体としては鉄道を活かしたまちづくりを進めていく必要があると考えている。
複線電化など夢物語と思えるが、とりあえず平成27年春を目標に電化されることとなり、今工事が進んでいる。武豊線の一日平均乗車人員は、平成10年8,204人から平成22年10,872人(ピークは平成20年11,025人)と漸増してきている。
市町 駅名 H10 H22_
東浦町 尾張森岡 311 529
東浦町 緒川 817 1,412
東浦町 石浜 758 960
東浦町 東浦 1,572 1,779
半田市 亀崎 1,914 2,249
半田市 乙川 767 1,069
半田市 半田 1,208 1,664
半田市 東成岩 307 483
武豊町 武豊 550 727_
合計 8,204 10,872
総会の後は講演会。毎年結構注目の講師を呼んでいる。この日の講師は、JR東海初代社長、現在、JR東海相談役、日本観光協会中部支部長の須田寛さん。80歳を過ぎても早口でよどみなくお話しされる。以下は講演の概要。
きょうは観光と武豊線を話題にしたい。
武豊線は、明治19年大府~武豊間19.3㎞で開通。当時は今より1㎞西の港まで通じていた。
明治22年に東海道線が全通。武豊線は東海道線建設の資材運搬のために造られたのはご存じの通りだが、当時、名古屋は築港中で、武豊のほうが良港だった。
当初開業した駅は、半田、亀崎、緒川、熱田だった。
その後、知多電鉄(今の名鉄線)が知多半島に敷設された。「知多半田」「知多武豊」などの駅名は知多電鉄の名残だ。
やがて、道路の時代がやってくる。JRになって沿線開発などもしてきた。
いま武豊線の電化工事が進んでいるが、実は、昭和54~55年当時、武豊線電化の話しがあった。しかし、国鉄の経営悪化もあって辛うじて本社予算に載らなかった。
武豊線は、国策で造られたので、線形がまっすぐで、ローカル線としては珍しい。
武豊線には次の特徴がある。
①生活ビジネス路線(住宅地、名古屋へ直通、カミンツのエンジンと特急用シートの車両)
②臨海貨物路線(貨物が残っている路線は珍しい。高山線は貨物ない。)
③観光路線(産業観光)
とくに産業観光に関しては、この地域にはミツカンやINAXなど産業関連の博物館が6館もある。また、武豊線自体が産業遺跡といってもよい。
従来の観光は、見物観光+温泉でマンネリ化している。最近の観光は、少人数のグループや家族が主で、情報も自分で取る。
大きな施設は不要で無駄な投資は向かない。見物にリピーターはいないから、テーマパークが従来型観光の限界だ。そして海外に目が向き、もう一度日本が見直されつつある。
ただし、見物ではなくて、何か面白い体験や学習が伴うようになってきた。興味の対象も、自然や歴史に始まって、ものづくりや産業に、また、漁業観光や船から海を見る旅などに広がりつつある。
武豊線には、明治19年開業時からの日本最古の駅舎と考えられる亀崎駅、明治38年に新橋工場でつくられた半田駅の跨線橋(旧信越線横川駅の跨路橋も同年製造だったが今は柱を残すのみ)などがあり、これらは文化財候補だ。昭和2年製の武豊港の十字型転車台は、土に埋もれていたのを子どもが見つけたものだ。
ほかに明治の名残を残すものとして、客車用のランプ小屋だった武豊のレンガ倉庫や各所の水路に今でもある煉瓦造りの橋桁などがある。電化工事で電柱や架線ができると景色が痛むのが心配だ。
国鉄労組OBで元半田市長の竹内さんらの熱意で、半田駅にはローカル線としては珍しい資料館もある。
鉄道遺産の集積に加え、兜ビールやミツカンの黒塀など、産業考古学の対象といってもよい。酢の里、味の館、窯のある資料館など伝統産業に加え、知多火力、IHIなどの企業博物館がある。
地元にいると地元の名物に気がつかない。地元の人が行かないものに、金閣寺、東京タワー、名古屋城があるが、国宝の金閣寺が放火された直後に銀閣寺が京都に人たちで混雑したという笑い話がある。静岡の人は富士山に頓着しない。
観光力とは、地元の資源を活かすことと、情報発信をすることだ。
知多半島には、空港、知多半島道路、名鉄線、そして武豊線がある。こんなに交通システム、行き帰りのバリエーションの整った半島は他にない。両方に海が見えるということは、幅が適当で、歩くこともできると言うことだ。
地元の良さを自覚して、鉄道を取り込んだまちづくり、観光資源の棚卸し(星を星座化するように、観光スポットをつないで意味づけをすること)、ホスピタリティー(人と人とのコミュニケーション)を磨くことを、進めて行っていただきたい。
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