愛知たいようの杜「ゴジカラ村」と吉田一平さんのお話し
雑木林のデコボコ道には毎日たくさんの人たちがやってきます。
時間に追われて暮らすほとんどの大人達は
「道をアスファルトにして」と言っては、さっと来てさっと帰ってゆきます。
ゆっくりと毎日を暮しているお年寄りや子供達や少しの大人は、
喧嘩をしたり助け合ったりしながら、あちらで虫を見つけ、こちらで草を摘み、
泥んこの水たまりに目を輝かせています。おんなじ道なのに・・・。
たいようの杜のパンフレットの見開きに書かれている一節です。これってよくないですか?
長久手市にあるたいようの杜「ゴジカラ村」を訪ねました。ここは以前にも来たことがあります。その時初めて、現長久手市長の吉田一平さんにお会いしました。当時は両方とも首長になろうとは思ってもみなかったと思います。
きょうは東浦町の民生委員の皆さんと「ゴジカラ村」を見学しました。ゴジカラ村の職員さんとボランティアの方に案内していただきました。
ゴジカラ村では、約一万坪の雑木林の中にさまざまな福祉関連施設が「共生」しています。極力元々あった樹木や地形などの自然を残すように建てられた建物が森の中に点在しています。ゴジカラ村には長年この場所を育ててきた吉田さんの想いが詰まっています。
これは初期に建てられた特別養護老人ホーム。建物の廊下はわざと見通しが悪く作られています。見通しが悪いと、職員はお年寄りのいるところまで頻繁に見に行かなければならないし、住んでいる人たちにとっても不思議な空間であり続けることができます。症状の違う人たち、いろんな人が一緒に住むのが良いとの考えに基づいて運営されています。奥に見える森林は名古屋市の猪高緑地です。
特養の裏手には、託児所があります。ここの子どもたちのお母さんで就労している人は少数派です。「子どもを預けて遊んでください」がここのコンセプトだそうです。2階のバルコニーからザブンザブンと水が落ちてくると思ったら、ちょうどプール遊びをしていました。
こちらは、ケアハウス(60歳以上向けの管理人付アパート)です。コナラの大木を避けて建っているので複雑な造りです。食事は美味しいものをとの考えから名古屋市内のフグ料理屋さんがテナントに入っています。ゴジカラ村のすべての施設では、ビールが飲めて露天風呂に入れるのが自慢です。
となりには、新しくできたデイサービス「ゴジカラ村」があります。
もりの幼稚園では、3~5歳のタテ割り混合クラスで、カリキュラムなし。子どもたちは思い思いにゆっくり遊びます。同年齢集団ではないので、子どもどうし比べられることはないし、できる子についつい合わせて授業をしてしまうこともありません。子どもたちは、敷地内の雑木林や斜面や建物の縁の下で自由に遊ぶことができます。大人や先生から子どもたちが隠れて遊べる幼稚園を目指しています。幼稚園では、これまで日本の農村社会でやってきた行事を大事にしているそうです。
これは足助から運んできた古民家です。ちょっとしたお休みどころになっていますが、子育てサークルが自分たちの育児にも使っています。
吉田学園愛知総合看護福祉専門学校も木立の中にウッディな建物が点々としています。
この後、場所を第三セクターで運営している日帰り温泉施設ござらっせの会議室に移して、吉田市長の講和を聴かせていただきました。以下のようなお話しだったと思います。
幼稚園の中にも生ビールと露天風呂がある、いろんな人が混ざって暮らす、いつも未完成であることを心がけて30年間ゴジカラ村に携わってきたが、9ヵ月間役所に入ってカルチャーが違うことをつくづく感じる。
役所の職員は何でもできるが挨拶ができていない。いま役所の玄関に毎日出勤時に立って、職員に対し「笑顔であいさつすること、目を見て話すこと、やってあげるからしてもらうこと」を女性を口説くようにマメに言い続けている。5万2千人の市民がお互いに知り合えたら素晴らしいまちになる。職員は現場に出ないといけない。法律、段取りよりも現場で人を見るのが先だ。ハンコがやたらと多いのは、言い訳の文化の表れだ。
戦後50年間、みんなが豊かになる間に、人口6600人、予算4000万円だったまちが、人口52000人、予算260億、職員400人以上になった。「銭払っとるんだから言うことを聞け」と言われるから、職員は住民に会わない、外に出ない。国民、住民がそうさせてしまった。
これから年に100万人ずつ人口が減っていく。これからは住民がやってくださいという時代になった。高齢者390人が日帰りバス研修をするのに職員が十何人付いて行っているが、65歳以上でしっかりした人はたくさんいる。時間1000円払って自分たちで引率をしてもらうのも手だ。
長久手はこれから40年で、人口が64000人になると予想しているが、いま7000人の高齢者は2万人になると考えられる。役所でワインを飲みながら話ができるような、民間発想のまちづくりをしたい。小学校区単位でみんなのたまり場、触れ合いの場を手作りで建てて、喧嘩したり苦労したりすることが大事。プロセスを積み上げていくことが大事だ。
これは開会式で事が始まり、滞りのない、遠回りを許さない、失敗を許さない社会と対局を行く。立つ瀬がないという言葉があるが、「たつせがある課」を役所に新設し住民のやる気を引き出して地域共生を進めようとしている。失敗してもよい。職員がもたもたやっていると住民が生き生きする。おおらかな社会をつくることが福祉のまちづくりにつながる。嫌な奴と一緒に住む仕組みづくりが必要だ。
世の中には、時間に追われる人と追われない人がいる。同質の人たちが他人からテーマを与えられて効率や数字や経済成長を求める価値観から、いろいろな人々が一緒に暮らし自分で楽しみを捜しプロセスを楽しみ自然の摂理に従う価値観を取り戻してはどうだろうか。
構造 特色 主体_____
地域福祉 手作り(非効率) 切り捨てない(融通無碍) 地域住民(達成感)
社会福祉 制度(効率的) 切り捨てあり(あてはめ) 専門家(義務感)_
長久手市の皆さんとござらっせの前にて。
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