瞬間接着剤の話
瞬間接着剤といえば、「アロンアルフア」などの商品名で市販されていますが、成分をご存知でしょうか。
瞬間接着剤の主成分は、シアノアクリレートという液体の化合物です。シアノアクリレートは炭素-炭素二重結合(C=C)をもった不飽和エステル化合物ですが、二重結合をしている炭素原子にカルボニル基(-CO-)とシアノ基(-CN)が付いていて電子を吸引しているので、この炭素原子上にできるアニオン(マイナスイオン)を安定化すると考えられています。
シアノアクリレートに空気中の水分などの微量な(酸素や窒素などの陰性原子をもったアニオン性の)物質が作用すると、炭素-炭素二重結合(C=C)に割り込んで、カルボニル基(-CO-)とシアノ基(-CN)が付いている炭素原子上にアニオンが生じます。このアニオンがさらにもう一つのシアノアクリレートと反応して、新たなアニオンを生じます。これを繰り返すことによって、一つ一つシアノアクリレートの鎖が伸びていって、高分子化合物(ポリマー)ができます。このような化学反応をアニオン重合と呼びます。重合反応によって生成した高分子は、複雑に絡み合って硬化します。
すなわち、瞬間接着剤は、溶剤が蒸発してくっつくのではなく、空気中や接着面に付着しているわずかな水分がキッカケとなって化学反応を起こして、シアノアクリレートが瞬間的に固化するために物と物が接着するのです。
指なんかもすごく良くくっ付くのは、皆さんご経験がおありだと思います。皮膚の表面には水分もあるし、たんぱく質のアミノ基(-NH2)など、重合反応のキッカケになるようなものがたくさんあるので、とても良くくっ付きます。
シアノアクリレートを使って、ガラスや金属の表面などに付着した指紋を検出することもできます。たとえば、指紋の付いたガラスのコップを、少量のシアノアクリレートを含ませたポリ袋で包むと、シアノアクリレートの蒸気が指紋に含まれたタンパク質やアミノ酸などと反応して硬化、白い硬化物がコップの表面に付着するので指紋をの痕跡をはっきりと見ることができます。
→ http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=wNQibtMck-M(実験の様子を撮った動画です。)
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