日本は世界5位の農業国
「~大嘘だらけの食料自給率~ 日本は世界5位の農業大国」というタイトルの本を読んだ。
この本は面白かった。
日本の農業は決して弱小衰退産業ではない。食料自給率も決して低くはない。そもそも農水省の言うところのカロリーベースの自給率などは農業を語る上で何の意味もなさない。日本のやる気のあるプロの農業者はがんばっている。農協と擬似農家を対象とした農水省の農業政策は間違っている。農業人口が減っても農業は衰退しない。農業は作物輸出の可能性も秘めた成長産業である。というようなことが、データを根拠に示しつつ書かれている。
まさに目から鱗の一冊だが、著者の一方的とも言える農水省批判やデータの解釈には一定の批判力を持って臨むべきかもしれない。
目次を見ると次のような章立てになっている。
はじめに――日本の農業弱者論はまったくの事実無根
第1章 農業大国日本の真実
第2章 国民を不幸にする自給率向上政策
第3章 すべては農水省の利益のために
第4章 こんなに強い日本農業
第5章 こうすればもっと強くなる日本の農業
第6章 本当の食糧安全保障とは何か
2010年に発行された本。前半では、世界の中の日本の農業について書かれている。以下は私なりの要約。
日本の農業生産額(2005年)は、中国、米国、インド、ブラジル、に続いて世界第5位であることをご存知だろうか。ちなみに、米国1775億ドル、日本826億ドル、フランス549億ドル、ドイツ379億ドルと先進国の中では世界2位の農業大国なのだそうだ。なんと農業大国であるはずのロシアは269億ドル、オーストラリアでも259億ドルなのは驚きだ。
対して、農産物輸入額(2007年)は、米国747億ドル、ドイツ703億ドル、英国535億ドル、日本460億ドル、フランス445億ドルの順で、これを人口比やGDP費で比較すると日本の国力に対する輸入食料負担は、ヨーロッパ先進国に比べればわずかであることがわかる。
日本の国民一人当たりGDPが1993年の世界1位から2006年に18位と低下する中で、日本の農業従事者一人当たりの農業GDPは世界11位(2004年)と健闘している。さらに、過去5年で農民一人当たり5千ドルも伸びるなど、農業人口が減少する中で農業生産性が向上している。
2008年の日本のカロリーベースの食料自給率は41%だが、分母に当たるのは食料の供給カロリーだ。これを実際に国民が摂取したカロリーを元に自給率(国産率)を求めると54%ほどになる。差は、食べ残しでや廃棄される食料があるためだ。
本当の意味でカロリーベースの自給率を論ずるのであれば、海外と国内の供給カロリーの比較をするのではなく、国民の必要とするカロリーのうち国内生産がどれだけかを算出すべきだ。
さらには、重量ベースや金額ベースの自給率のほうが、より生活実感や産業の実態を表しているだろう。ちなみに、野菜の重量ベースの自給率は80%以上(ネギの生産は世界一、ホウレンソウ3位、キャベツ5位、キウイフルーツ6位など)。また、日本の生産額ベースの食料自給率は66%となり、主要先進国の中では、米国、フランスに続いて3位となる。
カロリーベースの自給率にこだわっても、日本の農業の正しい理解はできないし、農業の発展にもつながらない。
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