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2013/06/05

5月18日に、「第15回政策メッセ 公共政策シンポジウム」の特別シンポジウム「アベノミクス:日本再生のための成長戦略を問う」に聴きに行ってきました。

5月18日(土)に明治大学「リバティータワー」で開催された「第15回政策メッセ 公共政策シンポジウム」の特別シンポジウム「アベノミクス:日本再生のための成長戦略を問う」のレポートです。
アベノミクスの正体がよくわからない。だったら、その解説をブレーンの一人と言われる竹中平蔵氏本人から聞いてみたいというのがシンポジウムに参加した動機です。
その前の公共政策セミナーWSにも参加したかったのですが、午前中に予定が入っていて参加できませんでした。東京日帰りで、たった2時間のパネルディスカッションを聴いただけでしたが、有意義だったと思います。
結論から言うと、この日のディスカッションのメンバーの言う限りにおいて、アベノミクス、特にその「第3の矢」の本質は、既得権にとらわれない徹底した規制緩和ということなのだろうと思います。リフレ政策については、インフレにはならない、インフレが制御できなくなるなどの批判がありますが、リフレ政策そのものへの言及はありませんでした。
以下は発言の内容(私の聞き取りメモ)です。

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モデレーター
伊藤元重(経済競争力会議議員、東京大学大学院経済学研究科教授)
パネリスト
竹中平蔵(産業競争力会議議員、慶應義塾大学総合政策学部教授)
大田弘子(規制改革会議委員、政策研究大学院大学教授)
宮内義彦(元規制改革・民間開放推進会議議長、オリックス㈱社長)
大林 尚(日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

伊藤: まず全員から5分ずつ一言。

竹中: りそなに公的資金を注入したのは10年前の5月だった。その時、日経平均株価は7000~8000円、それが一年で50%上がった。
今回は、半年で70%上がった。最大の要因はマクロの金融政策。産業競争力会議で議論しながら、あの時と政策の似ているところ似てないところを自問自答することがある。
似ているところは、司令塔機能は必ずしも十分でないが、司令官ががんばっているところだ。10数年やらなかったことを突然今やっている。安倍さんが一人でやった。
組織としては議論が錯綜して機能は果たしていない。ネガティブな評価とポジティブな評価に分かれているが、日経新聞からはネガティブに見られている。

大田: いろんな議論をして、司令官が最後にシュートする感じ。
成長戦略を練るうえでは、ビルドよりもスクラップのほうが難しい。スクラップとは阻害要因(既得権)の除去を意味する。成長のネタ(投資先)を見つけるのは、政府ではなく民間だ。ビルドはそれに補助金をつければよい。

宮内: 第3の矢に経済の命運がかかっている。総理がイニシャティブを取っている。これは千載一遇のチャンスだ。実行が大事。改革派はほんの一握りだから、一致団結が要る。
昨日の総理のスピーチは特に文句のつけようがないが、実行に至る道程がない。大いなる期待と心配がある。

大林: 今朝、新聞に大きく取り上げられた総理のスピーチについて、メディアの取材者として言うならば、良い点は本人の言葉で語っていることだ。池田さんの所得倍増の頃の言葉を引用しながら、農業を1兆円から10兆円に、10年で5兆円にすると言うように。
悪い点は総花的でどれが重点か不明なことだ。すべての省庁から持ち寄ったものをホチキスで止めた感じだ。それから、成長戦略会議などの諮問会議との関連がよくわからない。また、数値目標の達成を検証して、PDCAを回す体制が不明だ。とくに、任期後の10年後にだれがどう検証するのだろう。

伊藤: 「失われた3年半、日本一人旅」と私は言っている。2008年まで世界と連動していた日本の株価が、リーマンショックで下落してから、落ち込んだままで、米独などの株価と連動しなくなった。原因として、①日本の経済が硬直化している、②日銀がダメ、③民主党がダメ、の3つの仮説がある。アベノミクスで、②③の仮説が消えて、①のみになった。
我々が成長戦略に何を期待しているのだろうか。
失われた20年からの回復は難しいだろう。法人税率の引き下げは必要だろう。
改革というと、供給サイドばかりが問題にされるが、需要サイドの変革が大事。
デフレマインドの払拭は大事だ。金はジャブジャブあるが投資が少ない。日本はお金はあるが、ソフトバンクの孫さんのような度胸のある人が少ない。

竹中: 健全なマクロ経済運営が一番の成長戦略だ。デフレ下ではキャッシュに投資するのがベストの選択になる。
自分が担当大臣の時には、成長戦略を作っていない。過去7回、時の政権が成長戦略を作ったがどれも成功していない。
①企業はできるだけ自由にさせる。税金を安くする。
②企業に補助金をだしてあげる。
官僚は②を好むが、①は望まない。本当は、補助ではなく規制緩和が大事なのに。
日本の国際競争力は、2000年に40位だったが、小泉内閣の2006年には28位になった。そのときメディアは行き過ぎた規制緩和と批判したが、今また規制が復活して日本の競争力は47位になってしまった。
自民党の選挙ポリシーの中にターゲティングの発想があるが、何がこれから伸びるかはわからない。わからないからこそ、いろんな人にいろんな機会を与えることが必要。
骨太のターゲティングといえば、世界の大学ランキング100位に日本の大学が2校しか入っていない。これを10校にする。
改革と骨太の目標が必要だ。
日本でタブーとされるものに移民政策があるが、米、豪などは当たり前に考えている。日本では感覚的に反発がある。これから、100万人単位で人口が減っていくのに。
レッテル貼りで、重要な政策がつぶされてはいけない。
議院内閣制のもとで政策を実行しようと思ったら、党の合意をクリアしないといけないが、(たとえば小泉総理の郵政のように)総理の施政方針演説で“言ってしまえば決まり”という手もある。

大田: 医薬品のインターネット販売、石炭火力のアセスメントの緩和、保育園の待機児童を短期間でゼロにするための認可要件の緩和など、いくつかのワーキングに着手している。すぐに効果の出るものについては6月までに結論を出したい。農業、医療など、官製の保護規制の緩和に着手するのはこれからだ。民間のイノベーションの機会を広げることが大切だ。

伊藤: ここ2年は日本のマクロ経済運営が注目される。インフレ目標2%、消費税を10%に、2014年までにプライマリーの赤字幅を対GDPで2010年の半分にする。
2020年くらいまでに財政を健全化すると言っているが、2025年ころでも苦しいのでは。
戦略のポイントは、目的、手札、方向性だ。司令官(総理)には正しい情報が伝わっている必要がある。
財政健全化は、たとえば、短期的には70~75歳の自己負担を元に戻すこと、ジェネリック医薬品を使うこと、中期的には電子カルテや社会保障番号の導入することなどが考えられるだろう。ただし、コスト、クオリティー、アクセスの3つ全部の両立は不可能だ。例えば、医療へのフリーアクセスをやめるなど、どれか2つの両立ならできるだろう。
以上は、諮問会議のざっとの報告だったが、以後、それぞれの立場で発言を願いたい。

大林: 金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略の3つでは足りない。キーワードは「痛み」だ。
金融緩和(株高)で痛みを感じている人はいない。財政政策でも喜んでいる人は多い。規制緩和改革は、既得権者にとっては痛みだ。(一方、補助金政策は痛みが少ない。)規制改革は、誰かが痛まないと進まない。
日経新聞が疑問なのは、アベノミクスにその「痛み」の部分が見えてこないことだ。

宮内: おっしゃる通り。日本社会は、(ひとつひとつは小さいのかもしれないが)あちこちに既得権がいっぱいある。規制改革となると、総論はOKだが、各論は「俺の所だけはやめろ」と歴史や社会の話しを出して特別扱いを求めてくる。痛みを伴う話が今のところない。参院選後なのか?疑問と懸念がある。
どういう規制改革をどこまでやるのか、アジェンダがない。どこから出るのか?どう決定するのか? 耳あたりのいい話が空に舞って終わるかもしれない。
小泉内閣時代に規制緩和を手伝ったときの約束は、「内閣が受け取って、閣議決定する」だった。しかし、一つ「閣議決定できるもの」という条件があって、大臣の顔を見ながら省庁とものすごい折衝をして、規制改革担当相と大臣が折衝してもだめなら、経済再生諮問会議の議長として総理に掛け合った。今は、上記のようなプロセスがはっきりしない。

竹中: 普通の人は規制を反対しない。
2002年に規制改革の突破口として「特区」を提案した。憲法違反だと言って反対した省もあったが、農業の株式会社化で6次産業という言葉も生まれた。それがいつのまにか「地域活性化のために補助金をとりましょう」に変質してしまった。
以前の特区は「地方が国に認めてもらう」だったが、今度は「総理がこれをつくりたい」とする。民間+地方+国でアメリカのPort Authorityのみたいに政府のようなものをつくる。特区担当大臣が措置要求を出せるようにする。特区の件で猪瀬知事や大村知事とも会っている。
6.9%の基礎的財政赤字を2020年までにゼロは無理。「20年代」とした方がよい。できる約束のほうがマーケットから信頼されるだろう。
新しい仕組みとして、インフラの経営を民間に任せるコンセッションがある。ヨーロッパの空港などがその例だ。オランダは世界の港湾運営を手がけているし、フランスは世界中で水道ビジネスを展開している。国内の経験を生かして、世界にインフラやオペレーションの輸出をしている。国内での経験がなければ輸出なんてできない。
道路、鉄道、港湾などの生み出すキャッシュフローは年間3.7兆円?ほどある。この約10倍?で設備を売却し、そのお金をうまく使って朽ちていくインフラのメンテナンスをすればよい。
特区法改正や新しいアクションプランを作る必要がある。既得権者には泣いてもらうという国民のリテラシーは必要だ。

大田: 規制改革をめぐる構図は以前と何も変わっていない。閣議決定には本当に神経を使っている。各省庁の了解もとらねばならない。
今回は、①特区事務局ではなくて総理のリーダーシップを使う、②諮問会議が予算編成に関与する、③経済と財政の両方をやる。この3点がこれまでと違う。
アベノミクスで大事なことのひとつに雇用改革がある。人が動く仕組みをつくらねばならない。物価が下がって、賃金が上がると言っても、人が硬直していてはダメだ。解雇ルールといったら大騒ぎになったが、中小企業でも通用する仕組みづくりをしなければならない。今のままでは救いようがない。成長分野に人が移る仕組みが必要だ。地域、職種、時間限定の雇用契約解除のルール化が必要だ。

会場から質問: 大学のマネジメントについて。
竹中: 経済発展のためには高等教育の充実は必要だ。中国の大学は世界の一流を目指している。日本の大学に自治あって、マネジメントなし。いやなことは決められないようではダメだ。
世界の大学ランキングトップ100校に日本は2校しか入っていないが、シンガポールは3校、中国は4校入っている。アメリカの大学教授は9か月分の給料しかない。あと3か月分は自分で稼いでいる。

会場から質問: 一般人が国の政策に関わる方法は。
竹中: まずは、政府の会議の議事録を見ればよい。ほとんど一般に読まれていないし、世間で言われていることと違うのがよくわかる。日本は(特に川下に働きかける)政策NPOが少ない。
大林: 議事録を読むこと。それから、(手前味噌だが)新聞の社説を読むこと。つまらないけど読むと面白くなる。
新聞社の社説で重要なのは継続性と一貫性だ。新聞社もタテ割りで、(日本経済新聞社は)21人の論説委員がいる。(国交省担当ならば、タクシーの規制緩和反対とかの立場になる。)記事の一貫性を保つには、それぞれの立場や意見のマネジメントが必要になる。そうした苦労の結晶が社説になる。

大林: 2020年にプライマリーバランスの黒字化は難しいが、今旗を降ろさないほうが良い。
第4の矢は「財政」だと思う。いずれ支出を減らさざるを得ない。医療、年金、介護などの社会保障制度改革は参院選の後もしっかり議論すべきだ。
このままいくと民主党がなくなるかもしれないが、それは自民党にとって不幸なことだ。党が力を持ちすぎると官邸と党の対立を招く。小泉政権末期も結局、骨太改革をやりきれなかった。

宮内: 自分は、小泉内閣が辞職したときに、規制改革会議の議長を辞めた。それ以来、社業をやっていたが、規制改革の議論は昔とちっとも進歩してない。
官庁の考え方を世界の動きに合わせて前向きに変えていくことが必要だ。官庁には、結果平等を求め、自分たちの親しい業界の変化を嫌う体質がある。自由で荒々しい民間活力を市場は欲している。そこからあがった果実の分配に気を配ればよい。かわいそうなところやゾンビに政府の金を出すのはダメ。市場は成果を重視している。
民間企業の経営は果たしてプロがやっているのか? 日本企業のROEは外国企業の半分以下だ。経営者にとって居心地の良い土壌になってしまっているが、コーポレートガバナンスが必要だ。大学についても同じことが言える。

伊藤: 規制改革やマクロだけでは足りない。ほかに何が必要か。

大田: 重要な会議のネットワーク、プロセスが大事だ。プロセスを変えると物事が進む。誰がどういう理由で反対するのかがわかれば適切な判断ができる。
議事録が読めるような会議が増えたので、構図が見えるような議論をしたい。宮内さんの話しを早く昔話にしたい。

竹中: 「期待」ということが大事。「景気」という言葉は外国にはない。景気とは、鴨長明の方丈記に出てくる「空気の景色」のこと。目の前の景色を変えることが大事だ。
たとえば、羽田に国際線で到着して、24時間、新幹線や都営交通に乗り継げるようにする。東京を24時間眠らない都市にする。
しかし、経済界が改革に消極的だ。独立した社外取締役が半分以上いるのが世界の当たり前だが、諮問会議に出ている社長が反対する。社長の流動化が必要なのに。
幸い、いまアメリカの景気が良い。総理がポリティカルキャピタルを憲法改正に注ぐのか、いや、経済をやるべきだと思う。
既得権の壁は厚い。立派なことを言ってもダメ。利益相反団体が審議会に入っているようではいけない。陳情、演説では日本は良くならない。

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コメント

‘日本語も十分話せないのに、英語を学んでなんとする。’と言う人がいる。だが、現実には、日本語脳による話の失敗は避けられない。



>政治家が、その言葉で失敗したり、問題をおこすことは古今、数多い。


>特に最近は、それが目立つ。例えば、アベノミクス効果で好調な経済を演出し、今や圧倒的な支持率を誇る安倍首相は、歴史認識問題で米国や韓国の不興を買い、その言葉をトーンダウンさせた。


>また猪瀬東京都知事は、アメリカのメディアのインタビューで、オリンピック招致のライバル都市を貶めることを言ったということで謝罪に追い込まれた。


>さらに橋下大阪市長、日本維新の会共同代表は、従軍慰安婦について誤解を与えるようなことを言い、また沖縄駐留米軍に風俗業の活用を進言したということで問題になっている。



司馬遼太郎は、<十六の話>に納められた「なによりも国語」の中で、片言隻句でない文章の重要性を強調している。
「国語力を養う基本は、いかなる場合でも、『文章にして語れ』ということである。水、といえば水をもってきてもらえるような言語環境 (つまり単語のやりとりだけで意思が通じ合う環境) では、国語力は育たない。、、、、、、ながいセンテンスをきっちり言えるようにならなければ、大人になって、ひとの話もきけず、なにをいっているのかもわからず、そのために生涯のつまずきをすることも多い。」



日本人は文章を熱心に作らない。文章を作ることは、考えを練る事に通じている。


英語には時制がある。文章を作らなくては、時制が表せない。だから、文章にして語ることは重要なのである。


日本語には時制がない。文章は常に現在時制 (現実に関すること) に定まっているようなものである。だから、単語だけのやり取りで、ことが足りるものと自他ともに思っている。


そのため、政治家となって、外国人と理想 (非現実) の話もできず、何を言っているかも理解されず、そのために国を過ちに導くことも多い。



http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/




投稿: noga | 2013/06/06 04:52

美文であるに越したことはありませんが、それ以前に、主語や時制をいい加減にしないこと、論旨を明確にすることは常に心がけねばならないと思います。でも、「わかるでしょ」に甘えてしまうこともありますね。おっと、すでにWeとかIが抜けてますね。

私はまだ読んでいませんが、友人が薦めてくれた本です。
http://www.amazon.co.jp/dp/4062577933/ref=cm_sw_r_fa_dp_PW-9qb0CZEN05
http://www.amazon.co.jp/dp/4334037461/ref=cm_sw_r_fa_dp_k4DTrb0Y3K3E1

投稿: 神谷明彦 | 2013/06/12 12:39

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