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2013/06/07

『構想日本フォーラム ~「施設仕分け」で公共施設の最適化を~』 に参加しました。

5月27日に日本財団ビルで開催された『構想日本フォーラム ~「施設仕分け」で公共施設の最適化を~』のレポートです。討論者は、鈴木康友 浜松市長と福嶋浩彦 中央学院大学教授、コーディネーターは加藤秀樹 構想日本代表です。

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日本の公共投資は平成10年をピークに大きく低下していますが、依然として(公共投資のGDPに占める割合で比較しても)欧米諸国よりも高い水準にあります。 →http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/sy014/sy014s.htm

公共施設は、「隣の町にあるからうちの町にも」「県は市よりも立派なものを」と、身の丈以上のものがたくさん建てられ、さらに市町村合併の結果、同じような施設が一つの自治体に複数あるということもしばしばです。その結果、体育館だけでも全国の市町村(約1700)で5800棟以上、一つの市町村あたり平均3棟の体育館があることになります。
これらの公共施設の多くは、高度経済成長期に造られ、40~50年が経過。人口減少、財政状況の逼迫、ライフスタイルの変化の中で、施設の重複、老朽化、耐震化、バリアフリー化、環境負荷の低減などの問題が深刻になりつつあります。これからの施設の選別、点検、機能強化が不可欠です。
以下は、ディスカッションの内容(私の聞き取りメモ)です。

鈴木 康友(浜松市長、元衆議院議員)
福嶋 浩彦(中央学院大学教授、前消費者庁長官、前我孫子市長)
加藤 秀樹(構想日本代表)

加藤: 国交省がつくったグラフがある。国交省の2010年以降の予算を一定の仮定の下でシミュレートしたものだが、これを見ると、あと20年ほどで国交省所管の道路、空港、下水、橋などインフラの維持管理費が急増して、新設どころかインフラの補修の予算も現在の規模では足りなくなるのがわかる。国交省ですらこのようなものを公表するようになったが、いまだに新規のインフラを造ろうとしているのは危機感の欠如だ。また、このようなシミュレーションはそれぞれのインフラを所管する省庁別ではなくて、政府全体で考えるべきだと思う。

鈴木: 浜松市は12市町村が大合併して、膨大なインフラを抱えることになった。市道延長8400kmは7600kmの横浜市をしのいで日本一だ。
浜松市のインフラの維持費はコンクリート建築を60年寿命として、50年間で1.3兆円(260億円/年)と試算されている。今の予算額90億円では、1/3しか維持できない。そのため、施設の再配置と長寿命化を図ることを考えている。再配置では26年末までに20%(383施設)を削減した。現在の進捗は50%だ。
施設の長寿命化は40年間に240億円かかると見ている。今、年間6億円で補修を進めている。再配置や有効利用については、広域自治体間での取り組みも行っている。
以上のような将来のリスクに備えることは、他の自治体ではあまりやっていないのが現状だ。施設の統廃合は、地域の合意が難しい。「合併して損した」ということにもなりかねない。

福嶋: 我孫子市長のときに市民会館と市民プールを廃止した。人口減少という転換点に、どう地域の質を高めるかが課題だ。「何とか人口を増やさなくては」というところは失敗して、市民が流出、さらに人口が減ることになるだろう。人口が減ることをプラスにして、地域の質を高めるほうが、人口の減りが少なくなるだろう。
インフラを更新するお金はない。しかし、お金がないから公共施設を減らすという発想はダメだ。「こうせざるを得ない」とか「計画で位置づけられている」ではなく、「こっちをやったほうがよりよいと思う」選択肢を市民に示すことが大事。そもそもそうしないと面白くない。
インフラ更新のピークは2020年代。すでに「コンクリートから人へ」の前に公共投資は減っている。では、そのお金はどこへいったか?積み立てたのか? 実は民生費に食われている。地域の質を高めないといけないときに公共施設が減らないのでは幸せになれない。
「隣の市に温水プールがあるのになぜうちの市で造らないのか?」と議会で質問があったりするが、隣にあるものをなぜ造らなければならないのか。
これまで納税者は、負担はいやだけど税の使われ方には関心がなかった。どのくらい税を投入してどのくらいのサービスを提供できるか、選択肢を示して議論ができる市民になりたいものだ。
我孫子市は千葉県だが、温水プールは隣の茨城県取手市と協定を結んで使わせてもらった。代わりに我孫子市のナイター付き競技場を共同利用するようにした。公共施設の機能に注目して、広域化や多機能化を進めればよい。学校でコミュニティと温水プールを共用する方法もあるし、民間のプールに補助を出して利用する方法もある。

加藤: どこの国でも政治家は、人気取りで公共施設を造りたがる。
一方、民間はバランスシートで資産と負債の管理をしていて、すぐに必要でない資産を圧縮して身奇麗になろうとする。
以前、道路公団を調べたら、古い投資が除却されずにすべて資産に積み上がっていた。これが現実なら、1m以上の舗装厚があることになる。官には定期積み立ての発想と、定期チェックの仕組みがない。

鈴木: 奇策はない。あるものを有効に使うことだ。
合併のときに旧市町でホールをいっぱい造った。そんなホールに「みをつくし文化センター」と名づけた。もし、旧町の名前を付けたら他地域の人は使わないだろう。
浜松市には、4つの過疎地域と115の限界集落がある。沢水で暮しているところもあるが、そんなところに水道を引いてポンプアップしたらとんでもないコストがかかる。だったら水の宅配で対応すればよい。画一でなく選択が必要だ。
隣の市に共同で焼却場を造ってゴミの処理委託をしていた旧町もあった。これらのゴミを全部浜松市で引き受けて、逆に委託料をもらうようにした。全体のコストも下がりWin‐Winの関係になった。
いま、遠州広域行政会議(8市1町)で、病院も含めて公共施設の相互利用を進めている。

加藤: 大袈裟に「道州制」「合併」などと言うが、できることを分担すればもっと効率的になる。各自治体でそれぞれワンセットとなるとムダが出る。むしろ「隣にあるなら、うちは違うものを」と考えたほうが良い。

福嶋: 我孫子でPFI法制化以前にPFIの仕組みを使おうとして挫折。結果として隣まちとプールをシェアすることになった。市民から見れば行政がやってもやらなくても払う税は同じ、だったら「もっとサービスを」となるのは当然。税をどこへどれだけ持っていくかをわかるようにすべきだ。コンパクトにまとめられるところは集中。広域的なところは分散化する。この両方が必要。
行政の事業は事業ごとに最適な範囲は違う。ひとつの自治体で完結させようと思うのが間違いだ。しかし一部事務組合の制度設計が悪すぎた。

加藤: ひとつの自治体が行政をフルセットでやっている国は少ない。学校だけやる、交通だけやる団体もある。もっと柔軟になればよい。浜松は法制度を変える前に自治体同士で話し合ってやっている。
ところで、イベントをやる場合、予算・コストをinputとすると、参加者数はoutputだが、これは成果ではない。目的はoutcomeだ。事業仕分けでは、A4数枚のシートにinput、output、outcomeを書くのだが、国家公務員でもこれができない。外部の人が点検すること、みんなの前で議論すること、(福嶋さんのアイディアだが)市民判定人を入れることが必要だ。

鈴木: 市民や地域の合意形成の良い知恵はない。粘り強く交渉することだ。
行革をやると極悪人扱いされる。自分は他の用途にお金を回せたことを強調する。難しいけれど納得性を高めることが大切だ。しかし、半年我慢するとみんな慣れてしまうことが多い。

福嶋: 議論をするのに市民から出発することだ。自治体はフル装備、できなければ合併という発想は国家の発想だ。国が分権するといっているから自治をやらねばという発想は、自治をやりたいから分権を求めるというのと真逆の発想だ。
市民に具体的な選択肢を示すことだ。半年すれば慣れるんならやってみればよい。我孫子では老朽化した市民会館をまず廃止した。1000人収容するイベントなんて成人式と我孫子フィル演奏会、小中学校音楽コンクールなど年に何回もない。隣の市のホールもある。苦情はあるけど社会実験だ。
所管が違っていたりしてダブっているものもある。そういう事実を明らかにすれば、市民は「一緒にすればよい」と言うだろう。

加藤: 県立・市立などの二重行政は外国では少ない。まず使える(埋もれた)施設を探してみることだ。

加藤: 国が都心に持っている官舎などの土地を、「公務員にはけしからん、売却しろ」という話がある。しかし、一度売るとそれで終わり。毎年の出費を減らすほうが基本的なことだ。埋蔵金よりも埋蔵財産の使いまわしが大事。

鈴木: 浜松市の学校の統廃合には基準がある。①市が使う②地域が活用する③民間活用の順に考えている。ある学校跡は木材会社が使っている。

福嶋: なるべく手放さないのはやめたほうが良い。減らして民間にゆだねることが必要。

鈴木: 所管ごとにやっていてはムダが出るので、資産管理部門でいるものといらないものを整理することが必要。たとえば古い由緒ある消防署を文化活動施設に転用した。新設だと20億円かかるところを2億円で済んだ。

鈴木: 自分は元国会議員だが、国の宿舎は規定で3LDKと決まっている。国会議員なんて圧倒的にワンルームユースが多いのに。

福嶋: 新しく公営住宅を造るときにはもっと民間を使えばよい。行政の人は規定を変えにくいというが、規定を変えられるのは行政しかない。

加藤: 市民の声はどうやって集めるのか?

福嶋: プールや病院について議論すると、うるさい市民、受益者市民に議論が引っ張られてしまう。多様な市民の参加で多様な議論をすることが大事。
施設の利用者が既得権を持っている。しかし、既得権者だけと話してもダメだ。それを取り巻くすべての構造を含めて議論する。これが改革だ。
たとえば、昔から補助金をもらっている人がいるのに、新規参入者が補助金をもらえなくても良いという人はいない。だから、補助金をすべて白紙に戻して2000年からやり直した。全部オープンにしてみんなで議論をどこまでできるかだ。

福嶋: 右肩上がりでなくなるということは、たとえば、補助総額が減る時代になるということ。新しい人はもらえない。もし右肩上がりなら、そのうちもらえる。だから、市民に構造を見えるようにすることだ。

会場から発言: 自分のまちでは、住民参加と行政コストの明示を進めている。民間と各自治体のコスト比較ができるようになる。図書館の本を一冊借りるのにいくらかかるか。結構市民に広まってきた。

鈴木: 浜松では、時価主義、発生主義にして、公共施設の再評価が可能になった。公会計の影響は大きい。

加藤: 事業仕分けシートをつくると自治体間の比較ができる。公共施設についてもやってみたい。

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コメント

公共施設の多くは、40~50年が経過」老朽化、耐震化、バリアフリー化、環境負荷の低減などの問題が深刻」--わが国が高度経済成長の時代にアメリカの道路、橋等のインフラ劣化をあざ笑っていたことが いまわが身に降りかかっています。政党争いにあるように-あまりにも箱ものをつくりすぎてきました。医療、介護で金がかかるのにインフラ更新に莫大なお金が必要。財政が苦しい中でさらに出費がかさむ。行政にはふんだりけったりです。住民も相当の覚悟が必要です。

投稿: とだ-k | 2013/07/01 11:42

私たちは、まだまだ覚悟が足りないと思います。
高度成長期は終わった。これから全国で人口が減り始める。と言っても、なかなか本気で聞いてもらえません。
福嶋さんのおっしゃる言葉は的を射ていると思います。

 インフラを更新するお金はない。しかし、お金がないから公共施設を減らすという発想はダメだ。「こうせざるを得ない」とか「計画で位置づけられている」ではなく、「こっちをやったほうがよりよいと思う」選択肢を市民に示すことが大事。そもそもそうしないと面白くない。
 インフラ更新のピークは2020年代。すでに「コンクリートから人へ」の前に公共投資は減っている。では、そのお金はどこへいったか?積み立てたのか? 実は民生費に食われている。地域の質を高めないといけないときに公共施設が減らないのでは幸せになれない。
 「隣の市に温水プールがあるのになぜうちの市で造らないのか?」と議会で質問があったりするが、隣にあるものをなぜ造らなければならないのか。
 これまで納税者は、負担はいやだけど税の使われ方には関心がなかった。どのくらい税を投入してどのくらいのサービスを提供できるか、選択肢を示して議論ができる市民になりたいものだ。

投稿: 神谷明彦 | 2013/07/01 18:55

町の決算報告書」では今の危機意識が伝わってきません。町民、国民に現状を分かりやすく訴えてはどうでしょうか。異論があるかもしれません。

投稿: とだ-k | 2013/07/01 20:43

先のコメント失礼しました。町のホームページに「借金時計」現在の借金が秒単位で表示されています。
区分 全会計(合計) 一般会計
平成24年度末残高 20,035,536 9,478,363
平成25年度末残高 20,922,559 10,511,230
H24以前から増え続けているのでしょうか。減る傾向にないことは怖いことです。

投稿: とだ-k | 2013/07/02 17:55

決算書および決算説明書は、議会で決算認定を受けるために決算結果を正確かつ客観的に記述したもので、そこに作成者側の独自の解釈や意見を加えるものではないと考えます。

それとは別に、自治体に、中長期的に人口が増えない、税収が伸びない、支出が増え続ける構造的な問題があること、それを前提で行財政運営を考えなくてはならないこと、現役世代のツケを将来世代に押し付けたままでは希望のない社会になってしまうことを、折に触れて訴えていく必要はあります。

借金時計のことですが、
今年度は新学校給食センターの起債が大きいです。年度末に向けてその起債額に達するまで借金がカウントされるプログラムになっていますので、今年度中は借金が増え続けます。

投稿: 神谷明彦 | 2013/07/09 19:26

>町の決算報告書」では今の危機意識が伝わってきません。
先ほど見つけました。失礼しました。
東浦町の借金
http://kamiya-a.cocolog-nifty.com/turezure/2011/07/post-553c.html
ズバリ これはよく分かります。

投稿: とだ-k | 2013/08/01 16:49

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