景観講演会を開催しました。
岐阜大学工学部准教授の出村嘉史先生をお招きして景観講演会「景観と私たちのくらし」を開催しました。
普段、聞きなれない、とっつきにくそうな「景観」について東浦の皆さんに関心を持っていただき理解を深めていただくためです。
本年度から、東浦町の景観について住民の皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。
景観と言っても、東浦には特別な街並みや史跡があるわけではありません。しかし、ヨーロッパの小さな町を旅してわかるように、これからは、都市の景観、品格は必要な要素だと思います。なにも、歴史景観に限らず、自然景観、農村景観、産業景観、小ざっぱりした清潔感のある市街地、散歩したくなる裏路地、広告物のルールなど、様々な視点があると思います。時間はかかるでしょうが、町内に入ると何かが違うぞ!というまちにしていきたいと思います。
講師の出村先生には午前中、町内を見て回っていただきました。私は、先生とは今日初めてお会いしたのですが、先生のお話しは、全く違和感なく、わかりやすくて、とても共感できました。講演では会場からも前向きな質問がたくさん出ました。
なぜ、東浦に景観なの?という疑問をお持ちの方は少なくないと思います。議会でも質問を受けたりします。
ありがたいことに今日は、町議会議員の皆さんや職員の皆さんにもたくさんの参加をいただけました。講演が終わってから、議員さんから「少し理解が深まったが、進め方が大変だね」というコメントをいただきました。まさにこれから景観計画の合意形成のプロセスが重要だと思います。
以下、講演の内容を私なりにメモしたものです。
●景観とは何か、なぜ景観が重要か
Landscape(英)、Landschaft(独)を「景観」と訳しているが、生態圏や生活圏のようなエリアとして捉えた「景域」という訳語もある。都市計画は20世紀になってから使われるようになった手法で、上から地図を描くようなもの。これに対して、イギリスのタウンスケープ派は、自分が地面に降り立って初めて気づく世界があることを指摘した。
師である中村良夫氏は、景観・景域について「地に足をつけて人間の視点から眺めた土地の姿」と言っている。
景観は、以下の3つに分類できる。
①意図的に美しい風景を創る(荘園領主、貴族、数寄者が好んでつくった)
②健全な持続的な産業がつくってきた空間の姿(農業、漁業などの一次産業)
③健全な社会を営む空間の姿(共有、ともに住まうための約束事)
日常の景観としては②③が主になる。
東浦町の総合計画には目標人口53,000人とある。
・交流人口を増やすには → 興味深くなければならない(観光などの刹那的訪問を含む)
・定住人口を増やすには → 住処として選ばれる必要がある
→ どちらも、景観が潜在的な基準になっている
徳島県神山町は、ネット環境を整備して、豊かな自然の中でホームオフィスを提唱している。
午前中に東浦町を回って気づいたこと
・森岡の高台のぶどう畑から岡田川の谷を隔てて緒川小学校方面を見たコンケーブ状の地形がつくる景色
・郷中の狭い道の脇にある緑が魅力的・・・車中心でない人間的なスケールがいい
・道路の路側に塗った緑色のラインは周囲にマッチしていない
景観は、
・結果としてあるものでウソをつけない
・産業であれ、暮らしであれ、中身が大切
景観法は景観問題を取り扱う入口として使えるが、景観の本質は(産業や生活の持続的発展だったりして)景観でないところにある。
●公共・共有という考え方
京都、三寧坂の例・・・景観・風景は、たいてい個人財産の集合体だが、まちの共有財産
イタリアの広場の例・・・共有空間は蓄積によって迫力を得る
黒川温泉の例・・・歩くことが楽しくなるような空間、時間をかけてまちの全体を良くしていく住民主体の運動
加えて、そこに関わる人を感じることが大事
●私たちの居場所について
居場所となること。自分がそこに入っていける気持ちになる → 自分を投影(代理行動)
居=座る 人が3時間座ると飲食が必要になる → 座らせたら勝ち(カフェ、観光など)
見る対象があると同時に、対象を見る位置(視点場)が大事
どれだけ居場所を見つけられるか
●ここで豊かに暮らすために
・これからどのような間柄を育てるか(防犯・防災における自助・共助)
・公共な場所に居場所
・今まで蓄積されてきたものを見直す → 一次産業を廃れさせない
(道、敷地、建物、構造物、水路、植栽、地形なども)
「売り」の風景はたくさんある。
住みたくなる環境 → 住まう人たちの豊かさ&人口の増加にもつながる
イギリス人は歩くのが好き・・・羊を飼っている農地の中にフットパス(Right of Walk)
私有地の境を50㎝ずつ提供してもらい車道に直角に交わる小路をつくれば人はそこを歩く
小布施の例・・・個人の庭先を歩けるようにする
湯布院の例・・・湯壺街道の約束事→道と建物(お店)の間に間合いをつくると人が漂う
●ヒント
次世代へ生き残るための町の風景をつくる
→ すでにある資源を資本に、如何に暮らすか、意志を示す
・どこから何を見る?(視点場と視対象)
・居場所はどこにあるのか?
・人はどこを歩くのか?
東浦にはまだ豊かな農地がたくさんある。農産物の売り方や品質も景観を維持し創っていく大事な要素だ。
景観計画を作っていくうえで大事なのはそのプロセスだ。
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結びに、講師の出村先生ご本人によるまとめのコメントを添えさせていただきます。
本日は愛知県の東浦町に呼ばれて景観入門の講義をして参りました。うちは何も取り柄のない町ですけれども…と仰るのですが、講義の前にぐるりと巡ってみれば、なかなか魅力的なところがいろいろ見つかりました。町が生き残る為の手段は、工業誘致では決してなく、生活を健全にしている姿をいかに見せていくか、その事によって人々が住処として思わずここを選択するようにする事が重要。その為には、とってつけたような飾り物ではなく、皆で話し合って見出すこの街の次世代の生き方を共有して、生きていく為の仕組みを創り出すことが大事。近所の人々と場所の使い方を工夫して、居場所をできるだけ見出していくことが必要と解きました。ちゃんと伝わったかしら。
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