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2014/02/15

まちづくり講演会『コンパクトで住みよいまちへ』を開催しました。

 公共交通を活かしたまちづくり、歩いて楽しく暮らせるまちづくり、持続可能なコンパクトなまちづくりをしましょうと言い始めたころは「コンパクトシティって何?」とよく尋ねられました。最近では言葉が独り歩きしそうなくらいポピュラーな言葉になってきました。2月22日(土)には、幸せなまちをデザインするワークショップの第1回目が予定されています。
 そこで、名城大学都市情報学部の海道清信 教授をお招きして、コンパクトシティとは何か? なぜコンパクトなまちづくりが必要なのか? 東浦に当てはめるとどんなことができるのか? 講演をしていただきました。お互いに認識を深め、幸せのまちをデザインするヒントにできればと思います。先生は、持続可能なまちづくりの他に、住民参加、景観にも取り組まれています。これは東浦町の目指す方向とも合致しています。
 講演会には129人の参加があり、約半分は一般の方々、残り半分は職員の皆さんで、建設部以外からもたくさんの参加がありました。

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以下は、海道先生の講演の要約です。

私の出身地の金沢城下は、城を中心とした半径1.8kmほどの徒歩圏内、江戸時代末期には名古屋と同じく人口約10万人の街だった。ドイツの中世都市も城壁の中に街が集約されている。かつて、すべての都市はコンパクトシティだった。
1930年代に世界で最初に自動車が普及したアメリカで都市のスプロール(拡散)が始まった。岐阜市では1960年~2000年に人口集中地区が市外に広がった。繊維工場跡地などに郊外型大規模ショッピングセンターができ、中心部の百貨店の閉鎖が相次ぎ商店街は衰退、地価は1/10、通行人は1/5になった。市街地の拡大で都市の緑も減少した。
交通手段によるCO2発生を比べると、バスはマイカーの1/3、鉄道はマイカーの1/9で済む。
人口が減少しても、市街地構成が変わらないと、都市の管理運営コストは増大する。公共交通利用者は減少するが、高齢化で移動支援ニーズは高まっていく。人口密度が高ければ医療機関などの生活利便施設利用は便利になる。

持続可能な空間形態としてのコンパクトシティとは、
① 外へと無秩序に低密・拡散してきた都市の発展方向を転換して、土地利用をまとまりのある形態に変え、活気ある中心市街地を維持・形成する。
② 自動車利用中心の市街地構成から、公共交通と徒歩・自転車利用を中心とした安全、安心、利便な生活圏に再構成する。
③ ネルギー資源利用の効率性・環境共生・低炭素・資源循環的な都市空間を形成する。

国内のコンパクトシティの取り組みの例として、
●つくばエクスプレスなどの鉄道駅を中心に拠点・市街地・生活圏の3層構造を持つ柏市
●中心市街地に加えていくつかの都市拠点を交通ネットワークでつなぐ青森市
●LRTなどの公共交通を活用して「串(路線)と団子(拠点)型」のまちづくりをする富山市
●駅そば生活・風水緑陰生活・低炭素「住」生活を、市民協働パワーで支える「低炭素都市なごや戦略2050」
を紹介する。

自治体レベルでのコンパクト化手法は、下図の通り。30年・40年後の姿を考えながら開発する必要がある。

Compact_city_20140215a

今は、人口増から減少の時代への歴史的転換期にある。
日本の人口は、1884年の3745万人から、2010年にはピークを迎え1億2800万人になった。今後数十年は少子高齢化が進み、このまま行けば2110年には人口が4286万人まで減少すると予測されている。ドイツ、イギリスでは人口減少を補うため年間30万人もの移民を受け入れ、移民が人口の10%ほどになっている。日本は移民受け入れには踏み切っていないが、受け入れればヨーロッパ以上にさまざまな問題が起こるかもしれない。

国立社会保障人口問題研究所の予測によれば、東浦町の人口は2020年頃をピークに減り始めるが、高齢者の割合は増え続け2040年には3人に1人が高齢者となる。

この現実から目を背けるのではなく、迫り来る人口減少社会への変化をチャンスととらえるべき。個性を活かした魅力的なまちの価値を見つけ、それを高めていくことが大切だ。
①美しく: 個性を手掛かりに、地域資源を発見し、価値を高めることが可能になる。まちづくりのテーマがつながる。
②誇り: 住民や市民が地域を誇らしく大切にする気持ちを高め、共感を生み出す。定住意識を高める。住民参加のまちづくりの良い機会になる。
②経済: そこにしかない本物さが、外の人を引き付ける。賑わいをもたらし、産業振興にも有効。
③住みよさ: うまくデザインされた空間によって、住みやすい、環境にも適合した地域空間を実現できる。全体として、地域の価値を高め、地域の持続性を高める。

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ローカルなライフスタイルのデザイン、地域資源を見つめ直し、若者の新しい価値観を加え、空間資源を箱から場に変える、コミュニティーのデザインが必要になる。
鹿児島市では古いデパートを改修して「マルヤ ガーデンズ」というコミュニティスペースを備えた商業施設に生まれ変わった。犬山市では、市街地の大正時代からある銭湯を残す動きがある。空き店舗を朝市やオーガニックレストランや仏師が利用している。

コンパクトシティでみんなが集まって住みたくなるまちを実現!
●イギリスのファルマス市では、夏に美味しい食べ物とワインを求めて人がいっぱい集まってくる。お酒を飲んで公共交通で帰れることも理由の一つ。
●デンマークのコペンハーゲン市では、人口が減少(77万から47万人)していたが、1992年から人口増加に転じた。2008年には住みやすい都市ランキングで世界一位に。理由として、適切な都市規模、建築、クリーンな港湾、効果的な交通、自転車利用の多さなどがある。これまでのように、拡大、効率のみを追求したまちづくりでは、魅力は出せないし、持続可能なものにはならない。中心にある通りと広場へ車の乗り入れを禁止、ヨーロッパで初めて歩行者モール化し、街行く人がコミュニケーションを楽しめる場にした。2010年には通勤通学手段の35%が自転車に。運河の水質を上げ、水辺空間を整備した。

今我々は大きな転換点に直面している。人口減少、少子高齢化が最大の構造変化だが、加えて次のような多様な潮流がある。
♦都市空間の成熟化・縮小化・隙間の拡大
♦グローバリゼーション
♦経済産業構造の知識・創造分野の主導化
♦地球環境問題への対応と人々の環境意識・環境技術の深化
♦NPOなどの発展と参加型まちづくりの展開
♦安心安全な社会への希求と生活の質の向上
♦アート・文化の地域への適用と地域的個性の評価

行政、住民、企業、NPOやボランティア等がそれぞれの役割を活かして、まちづくりに取り組むことが重要になる。

 講演の後で、会場から本質的な質問、議論になりそうな質問がいくつかありました。答え辛い質問に対しても、先生から丁寧なお答えをいただきました。以下、その要約です。私なりの解釈が入っています。

Q: 防災とコンパクトなまちづくりとの関連について。
A: 市役所を街から離して高台に造ることによって賑わいをつくれるか、道路を広げることを優先させて街の風情を損なってよいか、安心安全と街の魅力をどう両立させるかが問題だ。

Q: 東浦町は東西に市街地が分断されていて集約は困難だ。「コンパクト」以外にもっとふさわしい言葉はないか。
A: 鉄道に沿って「東の塊」「西の塊」「中央の緑」の構造を活かして、それぞれの塊をコンパクトにすればよい。特に東の塊(武豊線沿い)は、2本の南北の道路をラダー(梯子)型に東西の連絡道で結び、その中に市街地形成する方法がある。あとは東の塊と西の塊をつなぐものがあればよい。不足するものは足していって自律できるようにする。それでも足らないものは外から補う手もある。

Q: 経済発展や物質主義との関係をどう考えるか。
A: 量的拡大、物質的充足はあきらめる。特に日本は人口減少するのに量的拡大を求めることは、次世代へのツケを招く。資源を使い尽くしてもいけない。
生活の質は上げたい。質の観点で価値を見直すと新たな展開があるかも。長期的視野に立って何が豊かで幸せかを考えるべきだ。

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