武雄図書館の市民価値とは
もう2月のことだが、三菱東京UFJ銀行主催の自治体向けセミナーで佐賀県武雄市図書館の事例紹介があった。武雄図書館は、これまでにない発想の図書館として全国的に話題になっている。
東浦にはすでにスターバックスを併設したTSUTAYAがあるのでこれと同じやり方は考えていないが、図書館をより魅力ある空間にすることは自治体にとって重要な課題だと思う。
講師は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ㈱ エンタテインメント事業本部 FC本部 名古屋支店長の奥田康弘さん。要旨は以下の通り。
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文化を便利に会員制で楽しむカルチュアインフラをつくることがCCCの仕事。
図書館づくり≒まちづくり と考えている。
2011年12月22日にテレビ東京のカンブリア宮殿で、シニア世代が家にいるような感覚で過ごせる代官山蔦谷書店が紹介されたのがきっかけで、樋渡市長と増田社長が会って、2012年の4月には市民を豊かにする新図書館構想を発表した。
この図書館は9つの市民価値を提供する。
①20万冊の開架図書(従来は開架10万冊+閉架8万冊)
②最新の雑誌を買える
③映画4万本+音楽2万タイトル
④文具を販売
⑤TSUTAYAのIT検索ソリューション
⑥カフェ(CCCとスターバックスが協定)
⑦蔦屋のノウハウ
⑧Tカード
⑨開館時間9時~21時
図書をすべて開架にしてバックヤードをなくすことによって、従来187席、380坪だった来館者スペースを279席、560坪とした。
利用見込みを、
年間26万人→50万人
貸出し35万冊→70万冊
運営費1.2億円→1.1億円
と考えていたが、
すでに半年実績で、52万人、30万冊、Tカード新入会28000人となっている。
市外の利用は49.8%、市内は50.2%。
武雄温泉駅のタクシー稼働率は前年比3倍、温泉旅館は2倍になった。
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市民価値としては、
・Tカード、Tポイントが全国のレンタル店と武雄図書館で付与される。有人レジではなくてセルフポスを使えば3ポイントが付くようになっている。Tカードの利用率は95%、セルプポスの利用率は80%。
・蔵書の分類を改変した。
10進分類だと、”釣り”の場合、芸術→スポーツ→釣魚 となるが、
一般書店であれば、アウトドア→フィッシング となり、発見しやすいと思う。
・I-Pad検索機も30台用意している。
・ライブラリーカフェでは、買う前・借りる前に本を読んでもらう。本が汚れるという心配があるが、この15年間にほんの数件だ。武雄でも今のところ本の痛みはゼロだ。
・空間デザインについては、長野五輪開会式や蔦谷代官山店をプロデュースした原研哉氏にお願いした。
顧客価値のない店は存続できない。顧客価値は市民価値につながる。
計画に当たっては交通量など各種実地調査やアンケート調査を行った。このまちに欲しい施設としてカフェと書店が全国的に上位にカウントされている。
蔦屋はターゲットを絞っていないが、60歳以上が半分を占めている。キッズはカフェの近く、受験生は2階がふさわしい。
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武雄市は、図書館については指定管理で、目的外(カフェや物販)の部分については蔦屋へスペースを賃貸している。
初期投資は、CCCが3.5億円(7割は商品)。武雄市が4億円(書棚など指定管理契約が切れても市が持つ部分)。
運営費については、従来、市が20人で運営して1.2億円かかっていた。それをCCCの指定管理にすると、16人で運営して1.1億円となる。残りのサービスは蔦屋の業務として34人のスタッフで行う。市の経常経費は約1割縮減できる。
図書館にコンシェルジュは入れないが、レファレンスを強化する。
託児や本の分別など、ボランティア18団体の活動は従来通り続けてもらう。
武雄市内の書店への影響はないと見ている。一番近くの書店は蔦屋だ。
今のところのクレームとしては、「スタバがうるさい」「駐車場が少ない」などがある。
このタイプの図書館の2例目は、宮城県多賀城市で考えている。「もう一つの家に帰る」をコンセプトに、レストランも入れて、2015年夏にオープンする予定だ。
続いて、周南市や海老名市でも計画を進めている。
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