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2014/04/15

藻谷浩介さんの講演「デフレの正体とアベノミクス」を聴いて

3月末に日本総研の藻谷浩介さんの講演を聴いたときのレポートです。
とにかくモノを安くたくさん造れば、輸出が増えて、豊かになるという発想に囚われていないか。バブル以降に日本で起こっていることを客観的事実に基づいて捉え直すべきだとの主張です。後半がスッキリしないのは、私の理解が不十分なせいかもしれません。

 

個人の主観でものをいう人が多いが、客観的なデータに基づいて議論することが大事だ。アベノミクスまでの国際収支について考えてみたい。

プラザ合意から野田内閣まで、日本の輸出は1.5倍になった。円高だからと言って輸出が落ちたわけではない。
一方、輸入は2.3倍になった。
ここで確認しておかねばならないのは、円高で輸出が減って貿易赤字になったわけではない。支出が増えたのが問題だ。
それなのに、ろくにデータを確認せずに、日本の競争力が落ちたからもっと輸出を増やさねばならないという論調がまかり通っているのは残念だ。

東日本大震災後は、輸入は横ばいになった。円高と、原発が止まって省エネが進んだのが原因だ。
そのあと為替レートが、1ドル77円から110円になるにつれて、輸入額が激増した。そのうち化石燃料の輸入が3.3兆円、原発関連が約1兆円増えた。ツケが回ったのは、電力会社やトヨタの2次下請けで、彼らが困っている。トヨタも売り上げが増えているだけで、販売台数は変わっていない。
化石燃料の半分は、建物の空調と照明に使われている。省エネのためには最新の設備投資をすべきだ。
巷では円安・株高で何が悪いというが、早くもこの1月から本当に経常赤字になってしまった。

中国・韓国に毅然とした態度をとれの1点張りでは、単なる青臭い中学生のようなものだ。貿易収支から言えば、むしろアラブが敵だ。中韓に対しては貿易黒字だが、化石燃料を手に入れるためアラブ諸国に対して大幅な貿易赤字になっている。電気だけじゃなくて、もっとモノ全体を節約しなければならない。
日本はブランド戦略というものを知らない。ドイツ車は世界中でブランド戦略を仕掛けている。
フランスはワイン、イタリアはチーズ・オリーブオイル、スイスは時計など・・・ヨーロッパ諸国では、現地材料を活かして6次産業化を進めている。これからは、「打倒ヨーロッパブランド」が日本の向かう方向になる。
相変わらず「20年~30年前のやり方で儲けさせてほしい。ダメなら政府のせいだ。」と考える人が多すぎるのが問題だ。
スイスフランが高いにもかかわらず輸出競争力があるのは、高く売れるモノをつくっているからだ。スイスの人口サイズは愛知県とほぼ同じだが、貿易黒字は日本国よりも多い。

貿易赤字の要因は変動費にあるのだから、粗利(貿易収支)がマイナスの時に売り上げ(輸出)を増やしたら、赤字がどんどん増えるのは当たり前。
低価格品の大量生産はもう行き詰っている。経費の増加を価格転嫁できない企業にとって、インフレは単なる経費アップでしかない。

例えば、いま牛丼チェーンは、他社が価格競争でつぶれていく中で歯を食いしばって生き残ろうとしている。皆がそんなことをすれば地域や業界が赤字に沈んでいく。それでも、日本人と韓国人はその種のレースをやめない。
そんなことはやめて、品質重視の客層に十分利ザヤの取れるブランドやサービスを売って生き残ることが求められている。まじめにお金を取るべきだ。
そういった努力をしないで、政府が何かをしてくれるのを待っている今を「日本のソビエト化」と呼んでいいだろう。

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日本の小売販売額は、バブル期に105兆円から145兆円に増えた。そのあと2012年に138兆円と20年間ほぼ横ばいのままになっている。失われた20年間に何が起きたのか?
ちょうど二十歳まで背が伸びて、そのあと伸びないと焦っているようなものだ。すでに伸びきっているからしょうがない。凋落してもいないわけだし。
全体が落ち込んでいるわけではない中で、もしあなたの売り上げが落ちているとすれば、あなたが国内で負けているだけだ。

バブルの時に118兆円から186兆円に跳ね上がった個人所得も、そのあと2012年に176兆円とほぼ20年間横ばいだ。(この間2007年には191兆円となりバブルを上回ったこともある。)

景気回復をいくらやってもあなたの儲けが増えることはない。株が上がっても、売り上げは増えない。法人が儲けるとトリクルダウンはするけれど、その分個人が貯蓄してしまう。
バブル後の輸出が、リーマンショック前に2倍になって、その後4割減しても、小売りの売り上げは大きく変わっていない。

金融緩和をどれだけしたかをマネタリーベースでみると、バブル時41兆円、竹中・小泉改革時111兆円、野田内閣の時121兆円。一方、安倍内閣では、2012年に163兆円、2013~2014年は200兆円超だ。日本の場合、実態として金融緩和と経済は関係なくなっている。ここまでやると、かえって金利上昇のリスクが発生する可能性がある。
この間、就業者数は横ばい。日本の経済は働いている人の数に連動していて、政策や金融とは連動しないと考えるべきだ。

日本の経済状態は全く悪くないのに、悪い悪いといって、いたずらにいじっているだけだ。景気は3年サイクルなのに、「20年間の景気低迷」などと言う人の気が知れない。

1989年の東証平均株価は3万9800円だった。去年は、その後の25年間のうちの11位だった。アベノミクスと騒いだ割には大したパフォーマンスじゃない。それでいいと思う。国債さえ暴落しなければ。
株を上げようなんて、ギャンブルをしている人が喜ぶようなことを政策でやるなと言いたい。真面目に実業をやるべきだ。
国債を発行しすぎて、国債が金を吸い取っているから、金が株に向かわない。という現実もある。

では、物価が上がれば売り上げが増えるかというと、増えないだろう。
物価はどうでもいいから売上げを上げてほしいところだ。物価と売り上げの相関はない。弾性力はケースbyケースだ。

働く人の数が横ばい。給与水準も増えない。日本の生産年齢(15~64歳)人口は5700万人だ。
日本の就業者数は、おおよそ、生産年齢人口×70%となることがわかっている。残りの就業していない30%人の内訳は、学生8%、失業5%、家事12%、その他5%。30人に1人くらいは常に転職中なので、失業率が3%以下になることはない。
ここで、就業者数が減っているのに、生産が減っていないことに気付く。工場の労働者は20年間で30%減ったが、生産は10%増加している。これは、ロボットが導入されているせいだ。
労働者の数が減り、企業の人件費が下がり、売り上げも減っている。それでも生産を減らさないから値崩れが起こるのは当たり前だ。

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50年後に今のスイスの人件費水準を達成できれば、日本は破綻しない。物価を上げずに賃金をゆっくりと(例えば年に1%ずつ)上げていく。トヨタで言えば、下請けからの納入価格を1%ずつ上げないと、将来、車を買う人はいなくなる。

所得と働く人の総数はきれいに連動している。
小売販売額は、2008年までは(所得)と連動していたが、2009年以降連動しなくなった。
実際には、135兆円から2013年には139兆円と少し増えた。これは、経済界が高齢者マーケットを開拓したことによる。たとえば、ユニクロ、しまむらの高齢者向けの服、セブンイレブンの高齢者向けの食品などだ。いまや、一部の65歳以上の人たちが1000兆円の金融資産を持っている。これに目を付けない手はない。
車は、いち早くこれに目を付けたドイツ車へ流れている。電気製品は、高齢者対応ができていない。ハイテク産業になるほど高齢者市場のことをわかっていない。せっかく覚えたXPを廃版にするのはマイクロソフトの自殺行為だと思う。

それなのに、愛知県の企業は減りゆく若者マーケットに頼って、いまだにコストダウン競争中だ。
しかしながら、この地方は過去にも業態変更してきた実績がある。
この地方がなければ、足利幕府もない。戦国時代も終わっていない。日本が先進国になることもなかった。
愛知県では子どもが減っている。そして、65歳以上、75歳以上が増えている。高齢者の需要が引き出せるような製品やサービスの売り方が必要だ。中国も早晩そういう市場になる。

前の東京オリンピックでは、選手村は青少年センターになった。次のオリンピックでは、選手村が老人福祉施設になる。
アジアの国が同じ状況で追従してくる。過度な円高と物価高さえ来なければ、先んじた日本にチャンスがある。
ただし、皆さんの期待しているような経済成長はもう2度と来ないことはここではっきりと言っておきたい。

国際収支の状況などは以下の財務省のページを参照。
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg2013cy.htm
http://www.mof.go.jp/public_relations/finance/201208b.pdf#search='%E8%B2%A1%E5%8B%99%E7%9C%81+%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8F%8E%E6%94%AF+%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95'
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/bpnet.htm

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