民生委員・児童委員の皆さんと松阪市を訪ねました。
今年も東浦町の民生委員・児童委員の皆さんが研修旅行に誘ってくれました。
皆さんは毎年、自費でお金を積み立てて懇親と勉強を兼ねた旅行を企画しています。昨年は新潟県の山古志(現 長岡市)に出かけました。
今年は、三重県松阪市を訪ねました。民生委員さんの中に以前、山中光茂 松阪市長の講演を聴いた方がいらしてとても感銘を受けたのだそうです。ぜひ、民生委員のテーマでもある地域福祉や地域の支え合いのしくみづくりについて、山中市長から直接お話を伺おうということになりました。東浦町では26年度に、地域の様々な人たちが互いに支え合いながら地域で当たり前に尊厳をもって暮らしていくことを目指して、地域福祉計画を策定することになっています。
松阪の山中光茂市長は33歳の全国最年少で市長に当選、現在2期目。全国の市長でいま一番注目されている一人だと思います。人の幸せや命の重みを大切にされる方で、「人に寄り添う」という表現を流行らせたのは山中市長さんではないかと私は想像しています。たまたま雑誌「AERA」の4月28日号に山中市長の記事が出ましたが、これまでも市長はたびたびマスメディアで取り上げられていますし、ご自身でも本を書いておられます。ちなみに私もメジャーな経済誌「日経ビジネス」に取り上げられたことがあります。でも、それは「敗軍の将、兵を語る」という失敗を紹介するコラムで、国勢調査問題への対応についてインタビューを受けたものです。
山中市長は、就任早々、前市長時代から問題となっていた市民病院の必要以上に高額なCT購入計画、市民を無視した駅西再開発計画を根本から見直し、市民と対話を徹底することにより解決につなげています。市庁舎の建替えor耐震問題では高額な免震や建物内部の補強による対策ではなく、建物の構造を活かした外骨格による耐震補強するアイディアを採用して大幅なコストダウンを図っています。市民に市の財政問題への関心を持ってもらうために借金時計を考案するなど、スピード感あふれる全国初の取り組みで注目を集めています。東浦町でも、松阪の借金時計を真似てホームページ上に借金時計のコーナーを設けています。公共の福祉に対して優位性のある企業とも積極的にコンタクトをとり、例えば企業と提携して化粧品を介護の予防や軽度化に応用するなど、民間との「明るい癒着」にも積極的に取り組んでいます。
その山中市長から民生委員さんの前でご挨拶をいただいたときに印象に残った言葉があります。それは「政治家になるのが目的化して、政治屋のにおいのプンプンする人が本当に多い中で、神谷さんは政治屋を感じさせない珍しい首長。政局や政党のことではなくて、まじめに現場のことに取り組んでいる。ちょっと不器用さを感じさせるところにまた好感が持てたりして。」と面白い評価をいただいたことです。自分にとっての最大限の賛辞だったのではないかと思います。
さて、前置きが長くなりました。以下は、山中市長さんのお話しの要約です。
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私は、人に自分のビジョンを押し付けることなく、現場を良くする手足となることを心掛けている。みんなで責任を分担し、一緒になってがんばろうと言っている。それぞれが現場における役割を持つまちづくりを、現場の人がどんな想いや痛みがあるかを大切にしながらやっていきたい。
松阪市の面積は623km2で、東京23区とほぼ同じ。西には奈良県吉野郡と接する山地があり、東には海があり、歴史あり牛ありの多様で広い地域を有している。43の地域(人口約500~3万人)の魅力を残すことが大事。その地域らしさを知っているのは地域住民だ。
松阪市地域福祉計画は、作るプロセスは良かったが、作ることが目的化してアクションプランが欠落していた。つくった人(行政・団体・個人)に役割と責任を持ってもらうことが必要だ。
松阪市には人口17万人のうちに1万5千人の認知症サポーターがいるが、認知症サポーターを養成するだけではだめだ。地域で役割を持ってもらう(たとえば個人が家族や地域に対して何ができるか、地域での活動の土台はあるか)ことが必要だ。
地域の活動の土台が必要との認識を持って、「まちづくり協議会」を市内全域につくろうと考えた。地域には文化の違いや取り組みへの温度差があるので、地域格差が生まれてもしょうがない、それでよいと思っている。いまでは、「行政にやってくれ」という空気はなくなりつつあると思う。行政が「何でもやるよ」と安易なことを言ってはいけない。行政が言葉を選ばないと、住民の意識は下がる。行政がやると、どこも金太郎飴でちょっとしたことで500万円かかったりするが、地域でやると20~30万円でできることもある。
市長に就任してから3年間くらいは、市長も担当職員も毎日のように地域に入っていた。地域に、まちづくり協議会を設立するよう働きかけていたが、地域には、「作るか作らないかは地域の判断であること」「行財政改革のためにするのではないこと」を強調した。自治会は以前からあったが、狭い範囲の地域マネジメントをする組織だ。勉強会のように地域に集まる場所が欲しかった。ただし、地域のまちづくり組織は、名古屋市の地域委員会のように強制的にやるものではないと思う。
今では市内全域43地域にまちづくり委員会が立ち上がった。まちづくり委員会の役員と住民が総会で話し合う光景も見られるようになった。地域組織に重点を置いて、市の行政計画を作り直したい。男性社会から女性が中心になると、男性の意欲も高まると思う。
しかし、人間は利益がないと動きが出ない。言葉は悪いが、行政からエサがないと動きにくい。収入のしくみとしては、地域の火葬場の管理を委託するなどがあるが、ほかに民間企業との連携として、地域の産品である鳥焼肉をジャズドリーム長島で売ってもらうとか、マックスバリューのレシートを集めるとかで収入を得ている例がある。「11日にはマックスバリューで買い物しよう。」と地域で回覧を回すこともある。
それから、ふるさと納税の制度を使って、地域にお金が入る仕組みをつくっている。市に寄付をしても何に使われるかはわからないが、「地域のこの活動に」お金が入るとすれば、寄付をする人にとっても自分の税金の一部を自分たちの地域の活動に振り向けられることになる。地域としても地域の活動を積極的にPRするなどして、寄付の件数が増えてきている。そもそも寄付金は、市が元々やろうとしていることに充当すべきではなく、市民による使途指定納税として活用すべきだと思う。
5分間の寸劇で43地域の活動アイディアを競う「政策コンペ」も行っており、商店街と連携した中高年の婚活や名産の大根を使ったレシピのコンテストなどがエントリーしている。
中立公平よりもその企業の優位性に着目して、特定の企業と提携する「明るい癒着」戦略では、ハリウッド化粧品の介護への応用、ヤマト運輸の宅配見守り、ソフトバンクと提携して学校教育用にiPadを500台提供、第一興商のカラオケを高齢者の居場所づくりに利用するなどの実践例がある。黒い癒着にならないように、契約締結過程はできる限りオープンにしている。
学校図書館を地域で責任を持って開放する地域ふれあい図書館もやっている。
住民参加を進めるには、首長がそれを言い続けるしかない。言い続けることによって空気感が変わってくる。市民懇談会では最初は陳情・要望が出るかもしれないが、次第に前向きな話題に変わっていくはずだ。
自分はトップダウンはしない。(タイムリミットがあるものについては、時間軸をとった上で命令することはある。)職員の中には想いのある人もいるし、「自分で決めた」プライドを尊重したい。
物事を決めるときには、時間はかかるが徹底的に地域と話し合う。都市計画区域なども「地域で決めてください」と言っている。風力発電計画を中止した時には関連する全地区の合意を求めた。決めるのは市民。行政の役目は決めるための場をつくることだ。
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午後からは、飯南地区(旧飯南町)の民生委員の方たちと情報交換・意見交換を行いました。松阪周辺では、住民協議会ができる以前から「福祉会」といって民生委員や社協を主体とした活動母体があり、配食サービスや食生活改善活動、高齢者のサロンなどに相当する活動を行ってきています。
双方の民生委員・児童委員の皆さんにとっても、土地柄の違いを感じたり、新たな気づきを得る良い機会になったのではと思います。
快く研修の申し出を引き受けてくださった山中市長や松阪市のみなさんに心より感謝をいたします。
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