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2014/10/27

10月26日(日)、渡部幹雄和歌山大学特任教授 付属図書館長をお招きして、明日の図書館を考えるシンポジウムを開催しました。

図書館は好きな場所の一つです。太古から今までの宇宙の歴史、ミクロの世界からマクロの世界まで、即物的なものから思想的な概念まで、人類の英知が詰まっています。図書館は創造力を掻き立てる場所であり、人生を豊かにする場所です。

東浦町ではこれから、図書館の使い方について考えたいと思います。
こじんまりして居心地の良い東浦町中央図書館。建て替え計画はありませんが、現在の建物を活用して、より居心地の良い空間にするには?より親しまれるには?みなさんの「こんな図書館にしたい!」を持ち寄って、ハードからソフトまで、図書館の使い方の工夫をしたいと思います。

昨年、佐賀県武雄市にオープンした市立図書館では、TSUTAYAが運営、年中無休で夜は9時まで営業、図書館の中の空間を思いっきりモダンにして、スターバックスが入って飲食もできます。一部物販のエリアがあって雑誌は販売しています。

2012年にLibrary of the Yearを受賞した長野県小布施町の”まちとしょテラソ”は、住民が交流して、何かを生み出す場、何かを創り出す場としての図書館です。「学びの場」であると同時に「子育ての場」「交流の場」「情報発信の場」であり、ワークショップや交流イベントを積極的に開いています。

東浦にはすでに、民間でTSUTAYAにスターバックスが入ったものがあります。だからこれをそのまま東浦でもやろうということではなくて、東浦として、これから図書館をどんなふうにしていきたいか、どんなものがあったらいいのか、どんな使い方をすればいいのか、実際に図書館を利用される皆さんからご意見をいただき、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

そのためのヒントになればと、和歌山大学特任教授 附属図書館長の渡部幹雄(わたなべ みきお)先生をお招きしました。
偶然にも私は、9年前に渡部先生にお会いしたことがあるのです。当時、先生は滋賀県愛知川町(現 愛荘町)の図書館の館長をされていました。私は先生の著書を読んだら、どうしても行ってみたくなって愛知川町立図書館を視察させていただきました。
それ以前、渡部先生は長崎県森山町の図書館の立ち上げをされたりしていたのですが、平成10年に愛知川町長に乞われて愛知川町立図書館に。このとき、断るつもりで、ほとんど無理な条件(自分の待遇に関してではなく、新図書館のコンセプトやスペックに関すること)を付けたが、町長がすべて呑んでしまったので断れなくなってしまったのだそうです。行政職員からいわゆる図書館のプロになった方です。
もちろん愛知川町立図書館は建物も充実していますが、(今では当たり前になった)明るく広々としたスペースに館内を見渡せるように木製のシンプルなデザインの低めの本棚が並んでいました。利用者は思い思いの場所で読書が出来るようになっています。庭にも、テーブルが置いてあって、ガーデンテラスで本を読むこともできます。
書棚の本のディスプレイはきれいで、工夫がなされています。そして、書籍に限らず、あらゆる資料を自分たちで収集しています。全国の電話帳、新聞の折り込みチラシから、町内の飲食店のメニュー、自動車販売店のパンフレットまでも・・・。
この図書館は、毎週月・火がお休みです。”図書館は週休一日”の固定概念に縛られるのではなく、「図書館のかき入れ時の日曜日に職員が一丸となって最高のサービスをするためには、週2日休みでないとシフトが組めません。職員のコンディションを整えるのはマネージャーの役目です。」とのお答えでした。

今日は、渡辺先生のお話を聴いて、図書館の認識を深めまた広げる機会にしたいと思います。
そして、たくさんの図書館利用者みなさんに11月2日から始まる「よむらびカフェ」に参加していただいて、私たちの図書館の近い未来を語りあいたいと思います。

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下記は渡部先生の講演要旨のメモです。

 

これまで自治体の図書館を3つつくった。自分は大きな街の大きな図書館よりも、小さな町で地域に根付いた図書館をつくることに関心を持ってきた。

和歌山大学付属図書館は、1階を交流・議論のフロア、2階を読書のフロア、3階を研究のフロアにして、活用するにつれてスパイラルアップしていく構造。1階はテーブルから壁までホワイトボードになっていてその場で書きながら議論できる環境になっている。図書館を大学の授業で使うこともある。全学生約4千人中、一日に約2千人が図書館を利用するほど、利用者が増えてきている。

判で押したようなこれまで通りの定型的な使い方を続けるのはたやすいことだが、必要なことは堅持し、そうでないことは利用者の都合に合わせて変化発展させていけばよい。
図書館法には、「土地の事情に沿い」と言う表現がある通り、それぞれの自治体で工夫を凝らしてオーダーメードの図書館をつくればよい。

福岡県田川市では、図書館の後押しで、元炭鉱労働者の描いた絵が(アンネの日記のように)世界記憶遺産に指定された。
愛知川町立図書館では、図書館の後押しで、地域住民による地域の記録を住民が執筆・出版した。
図書館は人の隠れた能力を引き出す力を持っている。

図書館にたどり着きにくいのは、外国人だったり、赤ちゃんのあるお母さんだったりする。みんなのものなのだから、誰でも使えるようにしたい。
愛知川の図書館に、学校に通えないブラジル人の子どもがいた。行き場がないので保健室登校ならぬ図書館登校をしていた。
→ そこで、ポルトガル語で書かれたブラジルの教科書や新聞を図書館に取り揃えたら、それらを読むようになって、次第に元気が出てきて学校に通うようになった。
→ その子が学校を卒業する時に図書館にお礼に来た。
→ 本国にその話が伝わって、ブラジルの書籍が贈られてくるようになった。
→ 図書館でブラジル人が中心となってサンバのイベントを開くなどして、町民も交流して思わぬ展開になった。

図書館で100歳近い高齢者に声をかけたら、戦前からの写真を1000枚以上撮って保管していることが分かった。
→ そこで、それらの中から写真を選んで、100歳100作品展の企画を持ちかけた。その集落のほとんどの人が見に来た。
→ 歩行が大変な高齢者がたくさん来るようになって、高齢者用のカートを導入するきっかけとなった。
図書館にはいろんな人が来る。「図書館は屋根つきの公園」だと思う。

図書館にグランドピアノを置いた。非常識だという人がいるかもしれないが、ホテルのロビーにおいてあってもうるさいという人はいない。自信のある人は弾いてくださいと言う条件付きでピアノを開放したところ、アマチュアからプロまでコンサートをするようにもなった。
図書館のサービスはホテルのサービスと同じだと思うことがある。

スーホの白い馬」をモンゴルの気分で読みたいという人がいたので、丹波の博物館からゲル(モンゴルのテント)をタダで借りてきたらモンゴル人が設営してくれた。

愛知川の図書館では新聞の折り込みチラシも見ることができるが、折り込みの求人広告を見て就職につながった人が、図書館にお礼に来てくれたこともあった。職員は俄然やる気が出てハローワークのようなサービスを考えたこともあった。

町内でコウモリを見たことのある場所を住民が地図上にプロットする「コウモリマップ」もやったことがある。これはホタル、タヌキ、キツネなどにも応用可能だ。
本を借りて返すだけが図書館の機能ではない。利用者が直接参画して情報が自己増殖していくような仕組みづくりも可能だ。

一つの地区の公民館だよりを図書館で掲示したら、ほかの地区も我も我もと届けてくれるようになった。たまたま間もなく500号を迎えようとしていたので、1から500号までの700ページもの縮刷版を地区でつくるお手伝いもしたことがある。町政要覧があれば、区政要覧があってもよいと思う。
図書館は知恵を育てる場所だ。

他所で捨てられることになっていた舞台を手直しして、貸し出し用やイベント用として保管している。この部隊を使って図書館で薪能などをしたこともある。

隠岐の島にある島根県海士町(人口2500人)のまちじゅう図書館は県産材でつくった本棚を各公共施設において、人が本にどう辿り着くか人と本とを結ぶ情報リテラシーに職員が熱意を持って取り組んでいる。飲食コーナーもあってよいと思う。離島を豊かにするのに図書館は欠かせない。

フィンランドは図書館の利用が世界一(5千人に1カ所の図書館がある)で、これはフィンランドが学力世界一にランクされていることとも関係があるのではないだろうか。
私は中学校区図書館論を唱えている。日本で中学校区に1つ図書館をつくると約1万カ所(約1万人に1カ所)になる。

旭川の旭山動物園がなぜ人気があるか。市民とキャッチボールができている。全職員がやる気になって取り組んでいる。オーダーメードの手作り感がいい。

空間(ハード)は固定化するけど、ソフトは固定化しない。
住民がみんなで関わる仕組みづくり。みんなで情報や価値を加える。
地域の宝を集めて意味づけ価値づけする。地域のB級品をみんなのA級品にする。

本のことをよく知っていても、本と人や事をコーディネートできなくてはダメ。図書館の仕事は一流ホテルの仕事に似ていると思う。

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コメント

講演案内にコメントした補足です。
1.渡部幹雄さん=自分の周りから世間を楽しい方へ変えている偉大な人」+人々に"生きがい"を見つけ出してくれている人
2.滋賀県愛知川町の図書館をつくるとき町長さんが渡部さんに全面的な信頼をして設計を任せた根拠が上のご説明でわかりました。当時のブログに書いておられました。
http://homepage3.nifty.com/kamiya-a/rep180126h.html#shisatsu
3.>福岡県田川市では、図書館の後押しで、元炭鉱労働者の描いた絵が世界記憶遺産に指定された。
--山本作兵衛さんが炭坑労働者を書いたキッカケは知りませんでした。
http://www.y-sakubei.com/
3.蛇足:--->ひとの声に耳を傾ける。声をキャッチする。そしてすくい上げる。
「品質に厳しい日本の消費者から製品開発で学ぶことは多い」テトラパック・グループ ヨンソン社長
日本経済新聞2014/10/27"企業面"ニュース一言
---企業なら日本も世界も同じだと思います。しかし、アメリカの本社と対立してしかも日本製の評価を上げた例は過去いくつかあります。以前のマクドナルドもそうでした。椎名武雄さん時代の日本IBM、小林陽太郎さん時代の富士ゼロックス等々

http://www.y-sakubei.com/
こんなサイトがあるのですね。お知らせありがとうございました。

今日午後下記番組が放送されるようです。
TVシンポジウム「開かれた図書館をめざして~多様化するメディアの中で~
NHKEテレ1午後2時00分~午後3時00分
http://www4.nhk.or.jp/P1699/

Eテレ-TVシンポジウム「開かれた図書館をめざして」を見ましたが、、
町の文化センターで渡部幹雄先生のお話にはロマンが感じられてそれに全勢力を注ぎ込む姿勢を感じました。今日のテレビ番組は"本を貸し出す"という伝統的な図書館の領域を前提にした話し合いという感じを受けました。1.本好きでない人たちに本に親しむようにするには」とか2."ことばの力"を養うことが人間形成に大切だから"読み聞かせ"が大切だとか3.日々の"生活"に本を活用する心構え」とかのテーマで話されていたと思います。渡部幹雄さんのワクワク感は感じられませんでした。本来の図書館をどう活用するか。生活の中で身近に図書館を利用するにはどのような心構えが必要かといったということはそれなりに大切なことだとは思います。街づくり、街を活性化するために図書館をどのように活用するのかは考えにいろいろあると感じました。

私も、「活字に親しもう」みたいな啓蒙的見地と言うよりも、いかに楽しい場所にするか、いかに交流できる場所にするか、そして、コミュニケーションが新たな価値を生み出していくような場所にしたいと言うのが今の気持ちです。

"気配り"--"気配を感じる"ことがヒット商品開発のかなめ」と貝印社長が話されています。(12/4_TV愛知_カンブリア宮殿)刃物はアメリカで潜在需要があると判断して、社内の反対を押し切って2002年包丁ブランド"旬"の設備投資。アメリカで大ヒット。ジリヒンの会社を建て直したとのことです。

東洋経済onlineで下記記事を見つけました。
武雄市とは真逆の、オガールの図書館の発想
岩手県紫波(しわ)町の「オガールプロジェクト」--東洋経済online2014/12/24
http://toyokeizai.net/articles/print/56603
図書館は公共性のある施設ですが、民間的な視点からすれば「大きな集客装置」と見立てることができる、と発想を転換
---略---「何でもかんでも税金で」という前提に囚われている、公共施設のあり方自体を、変えてしまうことであったりします。実は、そんなことをやってのけてしまったのが、岩手県の紫波町なのです。東京から新幹線と在来線で3時間ほど。人口は約3.4万人。盛岡市と花巻市に挟まれた、農業が主力産業の小さな小さな町です。
紫波町はもともと財政基盤が脆弱だったにもかかわらず、1997年にさまざまな公共施設と住宅を集約するため、町の中心部の駅(紫波中央駅)前の土地11.7ヘクタールの駅前を、28.5億円もの大金をかけて購入します。
----略---
前出のように、紫波町は人口3.4万人にすぎません。しかし、プロジェクトを進めるにあたっては、発想の転換がありました。その象徴がプロジェクトの中核施設「オガールプラザ」にある図書館です。知恵を絞って、従来の発想から抜け出た斬新な図書館をつくることになり、「年間でのべ10万人以上は訪れてくれる」という仮説を立てました。
ここからが大事です。図書館は公共性のある施設ですが、民間的な視点からすれば「大きな集客装置」と見立てることができる、と発想を転換したのです。
誰も来ないような立地には店を出したくないですが、年間10万人以上がやってくる施設の内部に店を出せるのであれば、出したい人はいます。それなら、主要施設部分である図書館は無償で開放しつつ、そこを訪れる人達に、カフェやクリニックや生鮮食品の販売をする民間テナントから家賃や管理費を集めて、そこで稼ごうと考えたわけです。
こうして、図書館を中心とした情報交流館(中央棟)と、サンドイッチするように民間事業棟(東棟・西棟)がくっついた、一体的な公民合築施設「オガールプラザ」のモデルが開発されました。オガールプロジェクトの中核をなす施設ですが、プロジェクトの全体は、まだまだ奥行きのある話なので、別の機会にまたご紹介をしたいと思います。---略----

とだ-k様

いつも情報をいただきありがとうございます。公共施設を単品でつくるのではなく、いかに複合して相乗効果を出すか、いかに民間とコラボするか、いかに居心地の良い空間にするか、いかにオシャレにして人を引き付けるか、そして、企画力や宣伝力などを含めていかに運営するかが大きなカギになると思います。東浦町で大型公共施設を造る計画はありませんが、将来想定される公共施設再編や、日々の施設運営のためにも、各地の取り組みを注視する必要があると思います。

図書館を(人が集まる)集客施設と捉えること自体は、武雄も紫波も共通していると思いますが、最近、図書館を複合施設の核として、商業施設などと併設を考える例が増えていると思います。平成29年オープン予定の安城の図書館もそうです。
http://kamiya-a.cocolog-nifty.com/turezure/2014/06/post-b946.html

ポータルサイトを見ても紫波町はがんばっていると思います。http://www.town.shiwa.iwate.jp/
ただし、25年度予算の執行状況を見ると、3万4千人の町で東浦町と同じ140億円余りの一般会計、収入のうち町税は29億、国からの交付税と補助金が50億、県補助金が8.6億、町債が10億となっています。http://www.town.shiwa.iwate.jp/cms/files/02070/H2605.pdf
事情はいろいろあるのでしょうが、全国的に持続可能な身の丈に合った財政運営が困難になっています。この調子でいつまで続けられるのか、日本全体でどうしていくのか大きな問題だと思います。

ご紹介の記事を読み返してみました。少しピントはずれなことを書いてしまったようです。
民間会社を設立して、そこがエリアの開発・運営を担当しているということですね。少し勉強してみたいと思います。
https://www.jiam.jp/case/upfile/0010_1.pdf#search='%E3%82%AA%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B6'

上記のご意見は最も心配することだと思います。
自己責任」自己完結」で強い自治体を目指すべきだと思います。--国でも事情があるとは言いながら当然のことだと思いますが、、、
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ただし、25年度予算の執行状況を見ると、3万4千人の町で東浦町と同じ140億円余りの一般会計、収入のうち町税は29億、国からの交付税と補助金が50億、県補助金が8.6億、町債が10億となっています。http://www.town.shiwa.iwate.jp/cms/files/02070/H2605.pdf
事情はいろいろあるのでしょうが、全国的に持続可能な身の丈に合った財政運営が困難になっています。この調子でいつまで続けられるのか、日本全体でどうしていくのか大きな問題だと思います。

とだ-k様
数字等に誤りがありましたので、上記引用の文章を改めさせていただきました。

強い自治体」の勢いでここにコメントします。
サラッと読み流してください。ブログだけが仕事ではありませんから
経営者は成長への意欲を強く持つべき--日経ビジネス2014年10月7日
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141006/272189/
火浦:成長意欲にあふれた企業になるには、まず経営者が毎年、売上高や利益を大きく伸ばそうと強く思うかどうかにつきる。
火浦:自社の強みをきちんと分析し、それに沿った戦略で正しく選択と集中をやった企業は、その後の業績は伸びている。
--経営者が成長への意欲を高めるためには、どうするべきか。
火浦:難しい問題だが、解決策の一つとして有望なのはダイバーシティーだろう。社内に外国人を増やすだけでなく、経営陣にも違った国籍の人を入れる決断をしてみるのはどうか。
 日本人だけだと、どうしても日本人の特性で安定志向になりがちだが、世界の人々はそうではない。アグレッシブにリスクを取ってでも成長すべきと考える人たちと価値観や意見をぶつかり合わせると、やはり刺激をうけることは多い。

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