自然科学講演会『生活に役立ち明日を拓く有機ケイ素化学』 のご案内
お風呂の目地やシリコンスチーマー、コンタクトレンズなど身の回りの生活用品をはじめ、自動車の部品などの工業製品にも使われている身近な「ケイ素」。ケイ素は岩石などの無生物に特徴的な元素で、地球上で25%を占めています。Si-C 結合とは?今や生活になくてはならない人工物質である「有機ケイ素化合物」についてわかりやすくお話しします。
●と き 11月30日(日) 13:30~(開場 13:00~)
●ところ 文化センター
●対 象 中学生以上の方
●定 員 200名 ※事前申込制
●講 師 筑波大学名誉教授 細見 彰(ほそみ あきら)氏
●参加費 無料
●主 催 町教育委員会
●申し込み
11月4日(火)午前8時30分から問い合わせ先へ(電話申込可)
●問い合わせ 文化センター(☎0562-83-9567)へ
[細見彰氏略歴]
1970年 京都大学大学院工学研究科合成化学専攻博士課程修了
東北大学理学部化学科助手、長崎大学薬学部教授を経て
1990年 筑波大学大学院化学研究科教授
2005年 筑波大学名誉教授称号授与
有機合成化学会賞、日本化学会賞など、受賞多数
講師の細見彰先生は、私の学生時代の指導教官だった方です。有機化学の世界にはネームリアクションという言葉があります。これは新たに発見・開発した化学反応に(発見者の功績にちなんで)発見者の名前を付けたものです。(物理でもニュートンの法則とかドップラー効果とか、人名の付いたものがありますよね。) 細見彰先生の発見された化学反応の中に「細見・櫻井反応」と名づけられたものがあります。この反応は応用範囲が広く医薬品合成などに活用されています。
講演では、炭素とケイ素の類似性と違い、ケイ素を有機化合物に組み込むことでどんな性質の変化が起こるのか、それが私たちの生活にどう役立っているのか。自然界に存在しない(人工的にしかつくれない)有機ケイ素化合物の化学を、一般にもわかりやすくお話しいただけることと思います。
http://stw.mext.go.jp/common/pdf/series/element/element_a7_2_22L.pdf
・・・シリコン生物は、存在するのか?・・・
元素周期表で、炭素(C)とケイ素(シリコン Si)は同じ縦の列で上下に隣り合っています。これは化学反応に関わる最外殻(原子の表面)の電子数(電子状態)が同じで、化学的な性質が似ていることを意味します。
炭素とケイ素は4価(結合の手が4本)で他のたくさんの原子とさまざまなバリエーションの高分子化合物をつくることができます。それらの高分子化合物がさらに複雑に絡み合って、生命体を形作っています。炭素は生命体を構成する主役となる成分なのです。
一方、炭素の代わりにケイ素を主成分とする生命体はまだ発見されておらず、いまだにSFの世界の中だけにあります。
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コメント
1.シリコンに炭素を結合させる???webで検索してもわかる記事がヒットしません。ケイ素=シリコンは地球上で一番多い元素だということです。半導体やガラス、セラミックの素材でもあります。歩く地面はケイ素そのもの?!??
>シリコン生物は、存在するのか?-->Si-Cは身体になじみやすいのではないかと思いますが、、骨格に使うことはできるでしょうか。"人工関節"はSi-C が素材ではないでしょうか。
>自動車の部品などの工業製品-->?潤滑剤のいらない回転部分でしょうか。強度はあるのでしょうか。
2.ご紹介の元素周期表は見て美しいですね。
3.しかし、"シリコンに炭素を結合させる"できそうもないこの組み合わせは"2010ノーベル化学賞に巧妙なカップリング触媒"を思い出させてくれました。3人のこの受賞者のうちお二人が根岸英一、鈴木章でした。
カップリング触媒=マジックを感じさせてくれます。
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ノーベル賞委員会が、化学の中心領域と見なされている「分子を作る」ことを選んだことに、有機化学者たちは心から喜んだ。「本当にすばらしいことです。当然の受賞でしょう。これらの反応過程は、合成有機化学者にとって不可欠なものですから。
http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/specials/36199
投稿: とだ-k | 2014/11/11 21:02
カップリング触媒」ノーベル賞受賞者のお二人を呼び捨てにしてしまいました。失礼しました、
「根岸英一さん、鈴木章さん」です。
投稿: とだ-k | 2014/11/11 21:07
1.ケイ素は岩石の主な成分です。水晶は純粋な二酸化ケイ素の結晶です。ちょうど炭素を酸化すると二酸化炭素になるように、二酸化ケイ素はケイ素化合物のなれの果て、落ち着く先のありふれた化合物なのです。半導体もガラスやセラミックスも石と同様に無機ケイ素です。ガラスやセラミックスは自然界にある二酸化ケイ素が主成分ですが、半導体に使うシリコンの単結晶は、二酸化ケイ素から人工的に純粋なケイ素のみの単体を取り出したものです。
細見先生の研究対象である有機ケイ素は、Si-C結合を持つ有機化合物で無機ケイ素とは全く異なる性質を示します。我々の身の回りでは樹脂状のものや液状のものがよく使われています。
炭化ケイ素はSi-Cを持ちますが、ケイ素と炭素のみからなる無機物です。ちょうどダイヤモンドの炭素が交互にケイ素に置き換わった構造で、ダイヤモンドに次ぐような硬さを有します。工業的に合成されていて摩耗に強く研磨剤などに使われます。
一方、シリコーン樹脂やシリコーンオイルは有機ケイ素化合物です。耐熱性、柔軟性、耐久性、撥水性に優れ、食器から機械部品まであらゆるところに使われています。安定な物質で生体にも影響を与えないと考えられることから、豊胸手術のパッドなどにも使われていますが、体内でオイルが漏れ出し健康被害が報告されているようです。体内で消化されないことから、てんぷら油などに使えば全くのノンカロリーになると思われますが、実際に食用に適するかどうかは存じません。ただし、たいていの業務用の食用油の中には消泡材として少量のシリコーンオイルが添加されています。
2.なぜ元素に周期律があるのか、この周期表の見方がわかってくると、もっと面白くなると思います。
おっしゃる通り自然界は美しいと思います。物理や数学は自然界がシンプルで美しいことを前提に、宇宙をシンプルな数式で記述しようとしています。
3.クロスカップリング反応については、以前、このブログでもとりあげています。
http://kamiya-a.cocolog-nifty.com/turezure/2010/11/post-8060.html
投稿: 神谷明彦 | 2014/11/15 18:11
講演会 みなさまお疲れさまでした。
1.有機ケイ素、有機シリコンは他の材料と組み合わせて人工の骨になりうるのではと思いましたが、将来も可能性はないのでしょうか。人工関節等をwebで調べましたがで「有機ケイ素」は出てきませんでした。
2.今日のお話から身近にある半導体のウェハーとか光ケーブルや有機ケイ素のシリコンの原料はどこから入手するのか疑問に思いました。地球表面に一番多い鉱物はシリコンなので国内で岩石とか白砂からこれら作っているメーカーがあってもいいのに、と思っていましたが、下記webからは国内の岩石とか白砂から作ってはいないようです。
http://www.silicone.jp/j/contact/qa/qa001.shtml#2
A 金属ケイ素の用途は大きく分けてケミカル用とアルミ添加用の2種類があります。ケミカル用はシリコーン用と多結晶シリコン(半導体)用に分けられます。ケミカル用は不純物をほとんど含まないハイグレードが要求されます。このグレードに適した高純度の金属ケイ素を製造するためには、精製に適した高品位のケイ石が必要となります。もちろん厳しい規格値を満たすために高度な技術が不可欠です。
Q どうやってつくるのですか?
A ケイ素と酸素を主成分とするケイ石を木炭などと一緒に電気炉で融解、還元してつくります。具体的には電気炉にケイ石、木炭などの炭材を配合投入し、そこに大電流を流して炉心温度を上げると、炭材から出るガスがケイ石から酸素を奪い、ケイ素が金属状に遊離して金属ケイ素ができ上がります。
Q どこで生産しているのですか?
A 金属ケイ素の製造には膨大な電力を消費します。日本では石油危機の影響もあり、1982年をもって国内で生産するメーカーがなくなり、現在は全量輸入されています。主要生産国は比較的電気代の安い米国、ノルウェー、オーストラリア、ブラジル、南アフリカ、中国などです。金属ケイ素の世界の年間生産量は約90万トンです。信越化学では、100%子会社のシムコア社(オーストラリア)で金属ケイ素の製造をしています。
光ケーブル
http://www.optigate.jp/basic/cable.html
光ファイバは、石英ガラスやプラスチックで形成される細い繊維状の物質で、右図のように中心部のコアと、その周囲を覆うクラッドの二層構造になっています。
石英ガラス製造方法1
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E8%8B%B1%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9
化学気相蒸着(CVD)法
純度の高い石英ガラスを必要とする場合は、四塩化珪素 (SiCl4) の気体から化学気相蒸着 (CVD) によって製造する。
投稿: とだ-k | 2014/11/30 18:16
日本の電機は「化学」で復活する
2014/12/2 日本経済新聞 電子版
今年は3人の日本人がノーベル賞に輝くなど、日本企業の「物理」の力にスポットライトが当たった年だった。来年以降はどうか。最近、新聞紙上をにぎわせているニュースから推測すると、「化学」の領域が注目される可能性はないだろうか。
例えば、東芝やパナソニックが開発中で、成果も出始めた「人工光合成」や「光触媒」だ。人工光合成は空気中の温暖化ガス、二酸化炭素(CO2)から燃料電池車などに使えるエネルギー物質(エタノールなど)を、光触媒はやはり燃料電池車の燃料になる水素を生成させる技術として専門家の関心が高い。---略----
投稿: とだ-k | 2014/12/02 09:12
とだ-k様
リンクが張ってあるページを読まれているようなので、とくに補足の説明はいらないようですね。
混ざりものをきれいに分けることには、手間とエネルギーが必要になります。純度の高い原料を使えば、この手間を省くことができます。もちろんコストも。
ところで、人工骨にこだわられているようですが、なぜでしょうか?
投稿: 神谷明彦 | 2014/12/15 01:21