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2014/12/28

有機ケイ素化学をテーマに、筑波大学名誉教授の細見彰先生をお招きして、自然科学講演会を開催しました。

去る11月30日に、有機ケイ素科学をテーマに、筑波大学名誉教授の細見彰先生をお招きして、自然科学講演会を開催しました。細見先生は、京都大学で博士号をとられてから、東北大学理学部で有機ケイ素を使った合成反応の研究をされていて、私の指導教官でもあった方です。

近年、子どもたちの理科離れが問題となっています。身近には中身の分からないブラックボックスと化した電化製品やおもちゃが溢れています。少しでも中身のしくみや原理を理解して「納得」「すっきり」「目からうろこ」の感動を味わいたいものです。科学の正しい知識を育み、エセ科学にごまかされないセンスを身に着けることも重要です。また、愛知県は産業県です。ぜひ技術者や昔、技術者だった方も他分野にまたがる科学や技術に興味を持って、さらに学びを深めていただくきっかけとなることを願っています。科学する姿勢を学び、論理的、合理的判断や仕事の進め方を身に着けることは、理系・文系を問わず、生きることそのものと言っても過言ではないと思います。

以下は、およその講演の内容です。

 

世の中のものはすべて化学物質からできており、たった118種ほどの元素の組み合わせだ。

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元素周期律表が一家に一枚あると良い。
原子の化学的な性質は、最外殻の電子状態で決まる。最外殻の電子数や電子状態には周期性があるため、原子の性質に周期性が出る。タテの「族」が同じ元素は最外殻の電子状態が似ているので、原子の性質も似る。炭素とケイ素は同じ14族で、4本の結合を持ち、同じ元素や周囲の元素と結合して多種多様な化合物をつくれる。ただし、炭素-ケイ素結合を持つ化合物は自然界には存在しない。(人工的にしかつくれない。)

有機化合物とは、はじめは生物由来の化合物と考えられていたが、フリードリヒ・ヴェーラーが無機物から有機物を人工的に合成できることを示して以来、人工物も含めて炭素の化合物を慣例的に有機化合物と呼んでいる。炭素の結合手が4本もあること、炭素-炭素結合の安定性や、炭素が水素をはじめとする他原子と結合をつくりやすいことを反映して、優に1000万種以上の数多くの有機化合物が存在し、年間50万種以上の新規化合物が合成されているとも言われている。

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有機化学では、複雑な天然物の化学構造を明らかにして、それを人工的に造ったり、全く新しい化合物をつくったりすることを目的としている。(天然品と同じものを気候や季節に関わりなく大量に安価に合成できる。)有機化合物の中には薬や毒など人体に生理的な活性を持つものがたくさんある。

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低分子化合物を重合させることによって高分子化合物をつくることもできる。高分子化合物は、プラスチックや繊維、接着剤などに使われている。

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さて、ここから本題の有機ケイ素のお話し。有機ケイ素化合物は天然には存在しない人工物質で、日用品から電子材料や製薬まで、様々な用途に利用されている。

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ケイ素は地球の表面で酸素に次いで2番目にメジャーな元素。地殻の1/4(重量比)は無機ケイ素でできている。岩石やガラスや陶磁器の主成分はケイ素の酸化物で、水晶は二酸化ケイ素の結晶。

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現在では単体のケイ素は、二酸化ケイ素(石英砂)を炭素で還元してつくっている。半導体に使われる高純度ケイ素はこれをさらに塩素と反応させ、亜鉛で還元したものを再結晶させてつくっている。

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ケイ素は炭素と同じ(周期表で)14族の元素で、4本の結合手を持つ。炭素に比べて、電気陰性度は陽性で金属に近い性質を持つ。ケイ素-水素結合、ケイ素-ケイ素結合は弱く、ケイ素-酸素結合は非常に強い。

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ケイ素=ケイ素二重結合は弱く、大気下で安定に存在できない。

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有機ケイ素化合物は、今では大量に合成する方法が見つかっている。
ジクロロシランを加水分解するとシリコーンができる。シリコーンは絶縁性や耐熱性、撥水性に優れたオイル状や樹脂状の高分子化合物。

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様々な有機物を合成するための反応剤として、有機ケイ素化合物が利用されている。

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日本人が発見して、その業績をたたえて名付けられた人名反応はたくさんある。細見-櫻井反応もその一つ。

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細見-櫻井反応を使うと立体的に指定した位置でアリル基(C=C-C-)をカルボニル炭素(>C=O)に結合させることができる。複雑な化合物の合成にも応用されている。

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科学では、①不思議だと思い、②観察し実験し確かめ、③よく考え、④謎を解く、の繰り返しが大事。
信じるところを探求する。信念は魔術なり。

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