高浜市しあわせづくり計画ワークショップ
9月5日(土)に開催された高浜市しあわせづくり計画ワークショップを見に行ってきました。
いま、東浦町でも地域福祉計画を策定中ですが、高浜市は地域福祉計画を「しあわせづくり計画」と名付け、福祉部門ではなく企画部門に策定を担当させています。しあわせづくり計画はいわゆる社会福祉だけでなくて防犯・防災・環境・教育などの自分たちの地域の安心、暮らしやすさ、楽しさに関わることすべてを包含します。それを住民の自由参加のワークショップでアイディアを引き出しながら作っていきます。
策定支援は、コミュニティデザイナー山崎亮さん率いるStudio-Lが担当しています。今日のアイスブレイクは、みんなで盛った石川屋のきらず揚げが100gに一番近いのはどのグループかを競い合うゲームでした。
●吉岡市長のあいさつ
パーソナルコンピュータの概念を初めて提唱したゼロックスのアラン・ケイは、「一番確実な未来予測は、未来をつくってしまうことだ。」と言っている。
幸せづくりは、如何に自分がそれをつくるかではないだろうか。
Pay it forward という言葉があるが、単にお返しをするPay back と違うのは、未来に向けて無限の拡がりがあることだ。
皆さんでできることを自分たちの手で作り上げていく。
地域福祉計画を福祉部でつくるのではなく企画部で担当する。弱い立場の人を助けるだけではなく、防犯、防災も含む。
計画づくりというよりは、こんなことをしてみたい、高浜をこうしていこう想いを取りまとめたい。
●山崎亮さんのお話し
<建築家からコミュニティデザイナーへ>
自分の専門は建築だが、2008年頃から日本の人口が減るという現実があるのに、どうして建物を建てるのだろうか?さらに2017年頃から世帯数も減っていくのに。ただ設計したいだけじゃないか?
物事を考えるときに、「正しい」という理性も必要だが、「楽しい」「かっこいい」「気持ちいい」といった感性も必要になる。感性はデザイナーの領域だ。そこで、デザインの力で人の集団が持つ課題解決力を高めるよう支援する「コミュニティデザイナー」になろうと考えた。
2005年におしゃれでかっこいいホームページを作って仕事を立ち上げたが、2年くらいは仕事なし、2010年くらいからこれで良かったと思えるようになった。まちを気に入るまで引っ越したり、誰かがやってくれるのを待つよりも、自分たちで自分の好みのまちをつくってしまった方が楽しいだろう。
<衰退する地縁組織>
コミュニティには、地縁型とテーマ型の2通りがあるが、地縁が薄くなっていく中で、地縁型とテーマ型のミックスが重要になってきている。
戦後、GHQは、戦時体制を支えていた組織として、町内会組織を解散させた。しかし、人々が地域で生活するために必要な地縁組織は、結局3年後くらいに自然に復活した。高度成長期以降、転勤族や賃貸住宅に住む人が増える中、地縁組織は衰退する傾向にある。
アマチュアデザインとプロフェッショナルデザインの中間に位置するような、地域の人をプロが支援してコミュニティを“美しく”作り上げていくコミュニティデザインがあってもよいのではないか。
<家族と個族と地域包括ケア>
まちを変えるには、まち自体を変える方法と、まちの見方(関わり方、取り組み方)を変える方法がある。実際に活動をするとまちの見え方が変わってくる。昔は、個人のまわりに家族、地域、国・県・市が同心円状に広がる縮図で良かったが、今では、個人のまわりにそれぞれの会社の付き合いや趣味やクラブの付き合いでつながっている“個族”が広がっている。このテーマ型のつながりが切れると、(家族・地域を介することなく)個人が孤立して、いきなり行政の支援が必要になってしまう。
だから、地縁型コミュニティもテーマ型コミュニティも必要になる。実際に病院に入院すると、個人のまわりは医師とか看護師とのつながりが第一になって、孤立を経験することができる。
だったら、患者の周りにいるようなプロたちがネットワークを組んで、地域に出て行って孤立している個人とつながることはできないだろうか。この考え方が、地域包括ケアの考え方だ。
1990年に11.5兆円だった国の社会保障費は、2014年には29.1兆円にも膨らんでいる。2025年には、団塊の世代の人たちがすべて75歳以上になる。これから10年で、地域で支え合えるまちをどうやってつくっていくか、考えているだけでなく実行していかなくてはならない。
<Publicの意味>
「福祉」とは、「幸福」の意味と「公的な扶助やサービスによる生活の安定・充足」の意味がある。明治時代に“public”を“公”と訳したが、公とは“お上”や“政府”を意味する言葉ではなくて、“個人がみんなで協力し合ってよい状況をつくること”を言う。
地域福祉とは、それぞれに地域において、(自分だけでなく周りにいる人も幸せに)安心して暮らせるよう、関係者が協力し合って社会をつくることだ。
<大切なのはつながり>
石川善樹さんが「友達の数で寿命が決まる」という本を出している。つながりの多いことが最高の健康法だ。孤独は喫煙するより身体に悪い。病床にお見舞いに来てくれる人の数で余命が決まる。町内会の役員は健康に良い。作り笑いでも寿命は2年延びる。本当の笑いは7年寿命が延びる。(けれど、しかめ面で打つスマホの“(笑)”は寿命が延びない。…(笑))
<楽しさを自給しよう>
若いころ、暉峻淑子(てるおか いつこ)さんの書かれた「豊かさとは何か」に興味を持ち、影響を受けた。それで、楽しさや幸せを考えるようになった。
横軸に“個人⇔集団”、縦軸に“受動⇔能動”とってグラフを描くと、パチンコ、飲食、娯楽のような受動的なお金で楽しさを買うものは賞味期限が長続きしない。やり続けてさらに刺激を求めていくことになる。満足感の持続する真の楽しさは、友達をつくる、情報を得る、技術を身に着ける、感謝される、健康になるなど、集団で能動的に取り組むことではないだろうか。自分で楽しさを作り出す力(楽しさの自給力)が重要になってくる。以前、隠岐の海士町のまちづくり計画に携わった時に、地域の楽しさの自給力を高めることの大切さを強く感じた。
はじめに、いくら「正しい」ことでも、義務感でやっていたら長続きしないと言った。楽しいこと良いことをやって、ひとから感謝される実感を得る、良い循環が欲しい。
ワークショップでは、市民の皆さんと身近な楽しみを作り出して、それをみんなで共有、活用できるようにしたい。
<「小豆島コミュニティアート」の取り組み事例>
瀬戸内国際芸術祭2013に出品してほしいと言われたが、自分で作品をつくることはやめていたので乗り気ではなかった。それでも、尊敬する椿昇さんから頼まれたので、島で生まれる新たなつながり自体が真の作品になるのではと気を取り直して参加することにした。
島では要らなくなったものを廃棄するのも大変だから、使い倒す技術がすごい。小豆島には「んごんごくらぶ」という集まりがある。小豆島で「んごんご」とはセミの幼虫のことだが、観光案内所の看板の文字までセミの抜け殻でつくってあるのには感心した。面白そうなので島にある不用品の調査をした。そうしたら、食品用のプラスチック成型の会社に、弁当のタレ瓶(魚の形をした醤油の容器)の在庫が大量にあった。島の人たちは、醤油の鮮度にこだわりがあって、刺身などを食べるときに必ず醤油の容器を室内の照明にかざして透明度をチェックする習慣がある。
芸術祭の展示場所は旧醤油生産者組合会館だった。住民にアートのルールを説明した後に、醤油を段階的に薄めて、住民参加で8万個のタレ瓶に詰めて、それを並べてグラデーションの壁をつくることを提案した。3人一組で醤油を詰めていると雑談になるので、雑談をすべてメモすることにした。3か月作り続けると雑談の中からいろいろな動きが出てくる。いつの間にか、馬木ひしお(醤)会がまちづくり活動を開始して、自分たちでTシャツをつくっていた。デザイナーの我々に相談してくれれば、気の利いたデザインをいくらでも提案できるのに、そんなことはすっかり忘れて、自分たちの活動に夢中になっていたようだ。結果として、アート作品の作製を通じて島民のつながりという本当の作品をつくることができたと思う。
●ワークショップの進め方
まず、ディスカッションのルールとして、
・人の意見を批判しない
・人の意見を最後まで聞く
・全員が参加する
・人の意見に便乗する
・できない理由よりもできる方法を考える
今日やること。
最近、ハマった一人で楽しめることは?
みんなでやったら楽しかったことは?
「グループで、楽しいことをたくさん挙げる」×「三州瓦・とりめし・おまんと・細工人形などのキーワード」=「新たな楽しいアイディア」をつくってみる。
●山﨑亮さんからワークショップの講評
今日は練習だったが、キーワードとして福祉的なものが入ったらどうなるか? どうしたら会社、スポーツクラブ、自治会など、それぞれのコミュニティで面白いアイディアを出せるか? いろいろな方法を持ち込んでみたい。
我々がワークショップで使うネタをパクってもらって構わない。面白いアイディアが出てくると、手を上げてみんなに言いたくなるのは自然なこと。面白いことをやってしまうことが、さらに新しい仲間をつくる。
アイディアの生み出し方には、
・あるアイディアと別のアイディアを掛け合わせてみる
・ひっくり返してみる
・最新のテクノロジーをくっつけてみる
などの定番の手法があるが、これらはデザイン事務所が普段やっていることだ。大事なことはアイディアを否定しないことだ。次回はもっとハードルの高いワークを用意する。
次回開催予定は、10月7日(水)19:00~21:00
毎回のレポート(記録)は「ニュースレター」を読んでほしい。
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