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2015/09/10

片山善博さんの講演・・・地方創生について

元鳥取県知事、元総務大臣、慶應義塾大学教授の片山善博さんの講演を聴く機会がありました。地に足の着いた良識だと思います。片山さんは、今、ゼミを入れて週に5コマの授業を持っていて、それと、北川さんの辞められた後に早稲田でも週1回授業をされているそうです。以下、講演の要旨です。

巷で言われていることの多くが、東京の視点で語られている。もっと地方の視点、地方本位、地域本位で物事を考えるべきではないか。

国の言う地方創生に1741自治体が動員されている。地方創生で、国と市町村とのかかわりがガラッと変わるだろうか。もともと国が号令をかけてうまくいくものではない。期待する方が無理だと思う。
地方の抱えている問題は、生活習慣病に特効薬がないのと同じで、長い時間をかけて治療・改善していくものだ。

「地方創生」なんて名前からしていかがわしい。地方の定義も示されていない。訳の分からない目くらまし的な言葉だ。
そういえば、昔、「三位一体改革」なんて言葉もあった。自治体の三大収入源を同時にセットでいじろうということだが、国は、国にメリットのある補助金は残したいということで、補助金に1兆円上乗せして、地方交付税を4兆円カットした。鳥取県などは、県税が300億円しかないところ、地方交付税を600億円減らされた。
「構造改革」も同じで、ネーミングだけで舞い上がったが、これで労働基本権が脅かされた。

増田さんのレポートを読んだが、岩手県の知事をやっていた人が書いたものとは思えない。大体、消滅自治体なんて、地方に失礼だ。これはショックを与えるのが目的で、やはり、裏がある。
例えば、霞が関の国交省なら都市工学や建築系、厚労省なら高齢者福祉系、それと自治省と財務省の一部が結託しているのではないだろうか。自分たちのやりたいことに金が付く、あるいは、自分たちの政策を認めてもらいやすくするためだろう。

国交省の技術系官僚は、コンパクトシティがらみの大型公共事業で、地方に人口のダムを築こうとしている。すでに、150~180の自治体がこれに乗っかろうとしている。
厚労省の官僚は、東京で10年たつと介護・医療施設が足りなくなるという危機感を持っている。本来は東京で何とかすべき問題だが、高齢者を地方に引き取ってもらおうとしている。
総務省、財務省は、地方交付税も配れなくなってきた中で、選択と集中を考えている。要は、これだけ合併でみんな疲弊しているのに、もっと合併させたいということだ。
それぞれがそれぞれの思惑で動いていて、もはや政治にタテ割りの再編をする実力はない。
すべてが国から目線だから、鵜呑みにしない方が良い。無理に同調することはない。地方の立場で活用すればよい。

地方創生に相乗りして、プレミアム付商品券や旅行券を入れたのは、中小企業庁と与党総務会長の思惑だろう。
地域が衰退しているときにこの手の政策が効くだろうか? 消費者は良いかもしれないが、仮に一時的に2割売り上げが増えたとしても、地域の活性化にはつながらないだろう。
ダンピングではリピーターが付かないし、むしろデフレ政策ではないだろうか。地方創生とは別物だ。それも、赤字国債を使って。
地方創生のプランを早く持ってきたら、もっと金を出してやるなどと言っているが、チャラチャラするなと言いたい。一つ一つの自治体に号令をかけるのが国の仕事ではない。

では、代わりに地方を元気にするのに何をすべきか。
1つは首都機能の移転により一極集中を分散させることだ。首都機能移転については、20年前に結構真剣に議論して法律までつくったが、移転したのは自治大や研究機関くらいだ。
いっそのこと、金融庁や中小企業庁は大阪に、特許庁は名古屋に移してはどうか。大阪は、大阪都構想で、内向き・お取込み中だ。愛知県知事と名古屋市長が訴えるべきでは。地方創生を言うなら、「先ず隗より始めよ」だ。
国が首都機能移転のリストをつくったが、種子島宇宙センターまで書いてあった。真剣にやる気があるとは思えない。

TPPについては、地方議会が農家に対する影響が心配だとして慎重な対応を求める決議をしているところもあるが、自治体から見た場合、もっと違った観点があってよいと思う。ニュージーランドのオークランド市の議決書(意見書)が興味深い。
①市の公共調達の裁量権を奪わないこと(Investor-State Dispute条項があると地元業者を優遇できなくなる)
②健康・環境政策について、タバコの吸い過ぎを制限する政策を守ること
③食の安全について、原産地表示や遺伝子組み換え表示を守ること
④労働者の労働基本権を空洞化させないこと
⑤TPPに入らない中国との貿易に影響しないこと

ニュージーランドはTPPの言いだしっぺであるにもかかわらず満足のいく展開になっていないこともあるかもしれないが、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカなどの地方議会は、市民意見を聞きながら何日もかけて一つ一つ丁寧に議案を審議する。日本では市民は蚊帳の外だ。

憲法92条によれば、法律は地方自治の本旨に沿ったものでなければならない。地方自治には国から独立した単体としての団体自治と住民の意思を反映する住民自治があるとされている。しかし、最近、地方自治の本旨を踏みにじるような国の施策が目立つ。地方創生は憲法違反ではないかとさえ思う。地方ももっと地方本位で考えるべきである。

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