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2015/10/09

幸田ものづくり研究センター開所式および記念講演

平成27年7月2日に、蒲郡市と幸田町にまたがる愛知工科大学で開催された、幸田ものづくり研究センター開所式および記念講演に出席した。

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幸田町ものづくり研究センターは、経産省のプロジェクトで、全国に十数か所計画されているセンターの一つ。県で取り組むような大きなテーマだが、幸田町は町単独で設置した。
町内にある愛知工科大学の一角に拠点を置き、従来から人的交流のある名古屋大学(職員を派遣中)、東京大学(職員を派遣中)、自動車関連大企業、町内の中小企業、金融機関、町内外の教育機関等を結びつける活動をしていく模様。
センター長の志賀幸弘さんは企業立地監(部長級)で、企業誘致、新技術の発掘、企業や大学との連携、青少年のものづくり教育(発明クラブ)など、産業振興にかかわる幅広い分野の仕事で全国を飛び回っている人。副センター長の加藤修司さんは3月までは刈谷工業高校の校長を務めていて、ものづくり研究センターの開所を機に幸田町に招かれた。幸田町では、従来から、町内企業や一般住民を対象にした科学技術セミナーなども活発に行っており、産業振興に力を入れている。

平成25年工業統計調査によると、愛知県の工業生産は42兆円で37年連続で全国一位。2位の神奈川県は17兆円。幸田町は工業生産額1.2兆円で、県内54市町村中10位(9位は小牧市、11位は豊橋市)。
昭和20年代に三菱レイヨンをはじめとする繊維産業が発展し、昭和40年代から積極的な企業誘致を行い、ソニーやデンソーなどの企業集積が進んだ。今話題のエアウィーブも幸田町でつくられている。町行政は、町内外の企業と積極的な情報交換をしており、町内中小企業への技術支援、人材育成支援などを展開している。

ものづくり研究センターの開所式で大須賀町長は、
グローバル競争できる研究体制、協力体制、多様性のある産業基盤をつくっていきたい。ものづくりの域から、「ものづくり研究」へ。大学と連携して高いレベルを目指す。もっと企業を活躍しやすくしていくと抱負を述べられた。
ものづくり研究センターでは、産・金・学・官の協力のもと、指導者育成、経営指導を行う。指導者育成では、ものづくりインストラクターを養成し、様々な分野でカイゼンを図っていく。すでに、経営改善事業を町内企業1社で実施中、溶接加工の現場改善を進める。外貨を稼げる中小企業を輩出させたいとのこと。町内企業は5万円で、町外企業は10万円で指導を受けるなど、ものづくり研究センターのサービスを利用できるそうだ。

記念講演では、東京大学大学院経済学研究科教授 東京大学ものづくり経営研究センター長 藤本隆宏さんの講演「現場発のものづくり地域戦略」を聴くことができた。以下はその要旨。

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全国のものづくり研究センターの中で、産・金・官・学 全部そろっているのは幸田町ものづくり研究センターのみ。デンソーができて30年、ソニーもエアウィーブもある。
今は、現場の底上げをするのに一番良い時期。今残っている工場は強い。高地トレーニングのように逆境の中鍛えてきた。
ものづくりはあらゆる産業に通じる。工場の敷地の中で産業構造の転換が起こるのが日本の強み。(たとえば、自動車パーツ製造が、医療機器やレーザー切削へ転換していく。70歳の人が現場で設計していたりする。)

いま、造船のある分野で最高益を上げている企業がある。潮目を読むことだ。たとえ中国の3倍の賃金を払っても、中国の3~5倍の世界最高の生産性があれば十分戦える。

ルイスの転換点という言葉がある。
この20~30年、世界史上で見ても最も厳しい時期を日本の産業は過ごしてきた。中国の人件費は日本の1/20の月1万円が10年続いた。諦めないでジタバタして生き残った日本企業は心肺能力が付いた。
春節に故郷に帰った労働者が帰ったまま戻ってこなくなったのは10年前の2005年頃のこと。このころ中国では給料が5年で2倍上がって、今、日本の1/5になった。

山形のある工場では、表面実装ラインを1人1台で見ている。生産性を5年で5倍にした。
新潟県柏崎市の工場では、工場閉鎖になりそうになって現場がジタバタし始めた。設備投資なしで、2年で生産性を2.8倍にした。正味作業時間比率(付加価値作業時間比率)は恒等式があって大抵は10%以下なのだが、約30%もある。
石川県羽咋市の繊維産業は、ファッションではなくてユニフォーム用の高級機能が売りだが、1人で60台を受け持つ。200人いるので50人余る。それで新しい仕事を取ってプロダクトイノベーションにつながっている。(プロダクトイノベーション&プロセスイノベーション)生産性向上と需要創造を同時に行っている。
まだ生産性を上げられる工場は日本にたくさんある。トヨタはもう50%行ってしまっているのであとは自動化だ。
「出来が悪い=伸び代がある」ということだ。賃金格差が5倍以内であれば射程内だ。日本に仕事が戻ってくる。中国やインド、ブラジルなどでも再びトヨタ方式が人気を呼んでいる。
新しい産業を創ってそちらに人を移す方法と、現場でジタバタ生産性向上と業種転換を起こす方法があるが、日本ではしぶとい工場を残す方策がコアになるべきだ。

日本は冷戦期に伸びて、その後停滞しているが、いまポスト冷戦期が終わろうとしている。ジタバタがんばってきた企業がこれから伸びる。「かわいそうな中小企業はいるが、中小企業はかわいそうではない。」
「設計者のおもいをものにつくり込むのがものづくり」。現場に必要なことは「良い設計の良い流れをつくること」=良い現場だ。

日本の膨大な借金、最悪のシナリオは円の暴落だ。最悪のシナリオを考えておくべきだ。(アジア危機で韓国の救いは、良い現場が残っていたことだった。)
本当は、円が80円に戻って、それでもやっていける会社がいっぱいあって、安いものを買って楽々暮らせる状態が一番いいい。(国策で韓国が迫ってくるが、ハイテクだけが逃げ切る手立てと思いこむな。)

ある日本の造船メーカーが、遠浅のパースの港に入る25万トン級の鉄鉱石ばら積み船をリオティントから受注した。これはもとは中国の鉄鋼業の事情で、この造船メーカーは、お客のお客のことまで考えている。韓国なら2000人で船を造るところ、日本では300人で造っている。
経営の要諦は「人」だ。人を大事にするのが日本の強みだ。これが良い現場を残す。

規制緩和は2丁目2番地だ。これは踏んでいるブレーキを外すだけの話だ。
最も大事な成長の1番地は生産性向上と需要創造だ。株価が上がっても明るい現場がなければだめだ。
良い現場は、
①物的生産性が向上し
②顧客満足と企業利益に貢献し
③雇用と所得を生み
④人を育てる

1950~60年代、日本では人手不足の経済下、多能工チームワークと統合型現場ができた。鉄のカーテンが開いたら、賃金1/20の人たちがそこにいた。でも、これは共産主義の50年間に人工的に造られた格差だった。その後、新興国の賃金高騰でハンディーが緩和されつつある。日本の現場は夜明け前だ。

ハイテク部品の寄せ集めでは日本は勝てない。便器、船、自動車はハイテクではないけど、ややこしい。だから良い設計が必要な「すりあわせ製品」だ。良い現場で良い現物を選ぶ。業種ではない。
付加価値は設る「情報に宿る」。利益は良い流れに宿る。全社レベルで「設計情報の流れ図」をつくり、問題個所をズームインしてより詳細な流れ図をつくる。
自動車は3000万台作って、国内1000万台、海外2000万台売ることができるはずだ。
ものづくりは流れづくり。流れづくりは、流れをつくる人づくりだ。

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7月10日に開催された第7回プレステージレクチャーズは、名古屋大学の堀勝教授による「低温プラズマ科学とその応用」と題した講演で好評だったとのこと。第8回は11月6日(金)13時30分から幸田町民会館にて、熊本大学の河村能人教授による「軽くて強くて燃えないマグネシウム合金」をテーマに開催予定だそうです。

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