一家に1枚、元素周期表 ~理化学研究所が113番元素の命名権を獲得~
文部科学省は、国民が科学技術に触れる機会を増やし、科学技術に関する知識を適切に捉えて柔軟に活用することを目的として、「一家に1枚」ポスターを発行しています。ポスターには、たんぱく質や遺伝子の構造、鉱物、磁気、光、宇宙の図解など様々なテーマのものがあります。
→http://stw.mext.go.jp/series.html
中でも私の一番のおすすめは元素周期表です。
→http://stw.mext.go.jp/common/pdf/series/element/element_a8_2.pdf
元素とは
万物の根源となるそれ以上分割できない要素(化学においては原子)のこと。原子を構成する陽子の数が同数の原子の集まりです。
陽子数の順に原子番号が振られていて、現在、陽子数1の水素から陽子数118のウンウンオクチウムまでが元素周期表に表示されています。自然界に存在するのは原子番号92のウランまでで、それ以上のものは加速器などで人工的に造られ、不安定で寿命の短いものがほとんどです。
元素周期表とは
ロシアのペテルスブルグ大学の化学者メンデレーエフは、1869年当時知られていた63種類の元素を、原子量の順に並べて、元素の化学的性質が周期的に繰り返す法則(周期律)を発見し、科学的な性質が似た元素が同じ列に来るように配列した元素周期表を作りました。
彼が作った周期表には空欄があり、当時知られていなかった元素の性質を予言するものとなりました。メンデレーエフの周期表は当初注目されませんでしたが、1875年にガリウム、1886年にゲルマニウムが発見され、それらの性質が彼の予言通りであったために、科学者の間に広く認知されるようになりました。
それぞれの元素の原子量が記載されているものは、実験で一定量の物質を量り取る際にも欠かせません。化学や物理学を学び扱う人々にとって、まさに原典ともいうべきものです。
元素周期表の意味するところは
メンデレーエフは実験化学的な性質を基に周期表をつくりましたが、それが、結果として原子核のまわりにある最外殻の電子軌道の電子数の順に元素を並べることになりました。
現在では、原子核の周りの電子軌道は固有のエネルギーレベルを持っていて、第1周期は電子を2個、第2周期と第3周期は電子を8個、第4周期は電子を18個収容できることがわかっています。それがそのまま、周期表上の各元素の最外殻の電子数を反映しており、各周期の左端の水素、リチウム、ナトリウム、カリウムなどは、最外殻の電子数が1で、右に進むにつれて電子数が一つずつ増加し、右端のヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンなどは最外殻の電子が詰まった状態になっています。すべての原子は最外殻が電子で満たされると安定になるとされており、原子の化学的性質は、この最外殻の電子数やその振る舞いによって支配されることがわかっています。
元素周期表は元素の電子構造を反映しており、周期表上の位置で、気体・個体・金属などの元素の基本的な物性、各原子が他の原子と結合するときの結合のタイプや結合の本数(原子価)や結合の強さ、原子核が電子を引き付ける性質(電気陰性度)などを推定することができるスグレモノです。
※113番元素の発見と命名について
元素周期表に表示された118の元素のうち、113(ウンウントリウム)、115(ウンウンペンチウム、117(ウンウンセプチウム)、118(ウンウンオクチウム)の4つは、これまで発見報告はありましたが、正式に認定されていませんでした。つい先日の12月31日にIUPACは、これら4つの元素の発見を認定し、発見者に命名権を与えることを発表しました。このうち113番元素については、日本の理化学研究所が命名権を獲得しました。これまで、新元素の発見は、英、米、スウェーデン、独、仏、露など、欧米諸国にに限られており、アジアで初めての認定となりました。理化学研究所は、粒子加速器で亜鉛(Zn原子番号30、陽子数30個)の原子核とビスマス(Bi 原子番号83、陽子数83個)の原子核を衝突させ、両原子核を融合させることによって陽子数113の113番元素を生成させ(瞬間的に崩壊して別の元素に変化)、その痕跡を過去3回にわたり捉えていました。
新元素の名前の候補としては、「ジャポニウム」の他に、「ニッポニウム」、理化学研究所の略称から「リケニウム」、理研の所在地が埼玉県和光市であることから「ワコニウム」などが挙がっているそうです。
元素の中で国名が付いたものは、よく知られているゲルマニウムをはじめ、下記のものがあります。これらの他にも、地名由来のものとしては、63番 Eu(ユウロピウム)や98番 Cf(カリホルニウム)など、たくさんの元素があります。
原子番号 | 元素記号 | 元素名 | 元素名になった国名 |
21 | Sc | スカンジウム | スウェーデンのラテン語名スカンジア |
31 | Ga | ガリウム | フランスのラテン語名ガリア |
32 | Ge | ゲルマニウム | ドイツのラテン語名ゲルマニア |
44 | Ru | ルテニウム | ロシア(小ロシア)のラテン語名ルテニア |
84 | Po | ポロニウム | ポーランドのラテン語名ポロニア |
87 | Fr | フランシウム | フランス |
95 | Am | アメリシウム | アメリカ |
新元素の発見とその意味については、以下を参照ください。
http://www.org-chem.org/yuuki/SMS/113.html
http://www.org-chem.org/yuuki/SMS/113-2.html
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