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2016/05/27

独自のアイディアと情熱で赤字のローカル鉄道を観光客が押し寄せる路線へと転換した いすみ鉄道社長 鳥塚亮さんのお話し

いすみ鉄道社長の鳥塚亮さんの講演を聴く機会がありました。
鳥塚さんは、昭和35年生まれ。子どものころから鉄道ファンで、鉄道の運転手か旅客機のパイロットになるのが夢でしたが、国鉄経営不振や航空不況のために採用は叶いませんでした。学習塾講師から、大韓航空と英国航空の旅客・運行部門を経て、平成21年にいすみ鉄道の社長公募で選ばれ同社社長に就任。独自のアイディアと情熱で赤字のローカル第三セクター鉄道を観光客が押し寄せる路線へと転換し、全国から注目を浴びています。
以下は、私なりにメモった講演の要旨です。

 

房総半島のローカル線が全国区になった。ローカル線はいわば劣等生。昔のガキ大将が大物になったりするように、劣等生だけに大きく化けるチャンスもある。

テレビでローカル線の旅をやると視聴率が上がるのはなぜだろう?
普通の人は、ローカル線で駅弁を思い浮かべる。そして、地域の食材、酒、温泉、人情などを連想する。これは都会に訴えるツールだ。
いすみ鉄道は、菜の花に黄色いボディー。私は「ローカル線は観光資源」と思う。資源とは未完成品だ。これをどう磨くかが地域に求められている。
鉄道が生きていくには人口が必要だ。20~30kmの長さの路線なら人口10万人いればやっていけるが、いすみ鉄道の沿線人口はせいぜい3万人だ。
でも、私にはローカル鉄道があれば観光産業が発達するという信念があった。羽田からアクアラインを使えば50分で行ける千葉の山の中にローカル線かある。いけるんじゃないかと思った。

航空業界には、もう40年間もずっとローカル線問題がくすぶり続けていて、その状況は変わっていない。7年前に、いすみ鉄道の社長になった時、決めた方針がある。アインシュタインが言ったという言葉に“Doing  the same thing over and over again and expecting different results is insanity.”というのがある。同じことの繰り返しでうまくいかないのにやり方を変えないのは、愚の骨頂ということだ。
いま、自分のブログは1日2万件のアクセスがある。財務官僚も見ているのだろう。財務省の市ヶ谷の研修所で課長・係長級研修の講師を頼まれた。石破地方創生担当相もいすみ鉄道を見に来た。カンブリア宮殿でも紹介された。
私以外にも、いま3セク鉄道には旅行社やIT業界出身の社長ががんばっている。

これまで「廃止反対」と唱えるだけの運動で残った鉄道はない。30年前に国が廃止すると言った時に国吉駅の地域の人たちが「自分たちでやる」と立ち上がった。3セク鉄道のある地域は、地域で鉄道を残した気概がある。「もっと○○しろ」ではなくて「自分たちでやる」が必要だ。
いすみ鉄道の駅は全部無人駅だ。最初に私が国吉駅に来たとき、地元の人たちが勝手に掃除をしていた。おばちゃんに聞いたら「駅はまちの玄関口、汚かったらお客さんに申し訳ない。」と言った。鉄道の経営をダメにしては、この人たちが浮かばれないと思った。
自分はアングロサクソンの経営にどっぷりつかってきたが、アングロサクソン式は通じない。ここでは、アングロサクソン式こそ“insanity”だと思った。「まちの人たちを喜ばせなきゃ。だったらお客さんを連れてこないと。」と思った。

普通の鉄道を使う目的は目的地に行くことだ。これに対して、観光鉄道は乗ることが目的だ。乗りたくなる車両を走らせることが必要になる。
SLを走らせれば100%成功する。しかし、初期コストが5億円かかる。今はやりのデザイン列車も3億円はかかる。零細企業にはとても無理。
お金をかけて勝負するなら大企業が勝つ。お金をかけない方法を考えなければならない。

いすみ鉄道は、連結なしのワンマン1両で運行するレールバスだ。菜の花畑の中をかわいい車両が走る。ならばムーミン列車にしようと思った。といっても、サイドにムーミンのステッカーを張っただけだ。これをバスでやっても幼稚園バスにしかならない。鉄道だからこそテレビや雑誌が注目してくれる。
それも、女性向けファッション雑誌「OZ magazine」が「かわいい電車の旅」として紹介してくれた。今の女性はお金を持っている。鉄道を「男の趣味」として売り込むのは「今までのやり方」だ。
地元も黄色いTシャツの応援団をつくってくれた。いすみ鉄道沿線はいつのまにかに「房総のムーミン谷」になって、観光バスのルートにも組み込まれるようになった。でも、鉄道に乗るだけなら100円ビジネスだ。これにおみやげを加えると1000円ビジネスになる。さらに、いま1万円ビジネスを考えているところだ。

テレビも呼んだ。マッサンのエリーさんや加山雄三とのトークが放送されたし、森田健作知事も来た。吉永小百合出演の映画のロケもやった。観光のオフシーズンとなる真冬にも女性が写真を撮りに来るようになった。そうすると男も来るようになる。(その逆はないけど。)
それで、旧国鉄型ディーゼルで男も呼ぶことにした。昭和40年製キハ52をほとんどタダ(残存簿価)で買った。ただし輸送に600万円、車検を通すのに2000万円かかった。
地元の人は旧型車両を買うのに反対だった。田舎の人は古いものが嫌いだからだ。それだから、日本全国がつまらない小東京になってしまった。
昭和のディーゼル、加えて、まちも昭和。ついでに、昔すれ違いに使われていたタブレットの受け渡しもやってみた。無人駅で、わざわざ東京から来たボランティアの人にやってもらった。

これまでの鉄道会社はホームにカメラを持った人が入ることを迷惑がるのが当たり前だった。いすみ鉄道は撮り鉄さんに来てほしいと言ったら、初めて鉄道会社にやさしくされたと喜んでくれた。それを、インターネットに写真、文章付きで拡散してくれた。

昭和41年製のオート三輪も来て、人だかりができた。昭和39年製のボンネットバスも来た。古い車に乗った個人や、フォークソングを歌う人も来るようになった。そこで、フォークソング列車を走らせた。ジャズ列車、結婚式列車なども走らせ、収入が増えてきた。
「何もなくてつまらん」と文句を言う人も出てきた。都会から上から目線の人が来て、田舎の人が下から目線で謝る構図は良くない。だから「ここには『なにもない』があります」という何もなくて当然のポスターをつくった。万人受けはしないけど、価値が分かる人だけ来てほしいというメッセージだ。
そうすると、撮り鉄はすぐに来る。鉄道とまわりの景色も一緒に撮るので、地元の人たちも良い景色を教えてもらえる。
ポスターを撮った場所が観光スポットになる。お金がないからこそできたことだ。

もう1台、急行型キハ「外房」を買った。日帰り観光地は雨が降ったら客が来ない。「雨の日スペシャル」と称して、雨の日は「そとうみ」「うちうみ」などヘッドマークを変えることにした。そしてネットで「今日のヘッドマークはコレ」と流した。そうすると、その日に東京から写真を撮りに来る人がいる。
スーパーが雨の日にポイント2倍セールをやったり、居酒屋がビール半額セールをやるのと同じだ。時刻表の出版社とタイアップして「時刻表50周年」のヘッドマークもつくった。

3年前から列車の中で地元の鮮魚を使ったイタリアンを始めた。近くの大原漁港はイセエビの漁獲日本一だ。ワイン込みで1万6千円にしたら予約でいっぱいになった。1本650円のチリ産ワインを出すからたくさん飲まれても大丈夫。これはアメリカン航空の成田-ニューヨーク便のファーストクラスで出されているものだ。日本人はワインを舌ではなくて頭で飲むから、「アメリカン航空セレクション」とメニューに書いた。値段は言わないほうが良い。
日曜日はイタリアン、土曜日は2人3万円で鮮魚を使った和食を出す。これで地元の旅館が立ち直ってしまった。いすみ鉄道で料理を出していると報道されたら泊り客でいっぱいになった。

いすみ鉄道はお高くなったとネタミも出たから、カレー列車も始めた。ポーク、チキン、ビーフの3種類の列車の写真がジャケットになったレトルトカレー。名付けて「キハカレー」を「昭和に食べた懐かしい黄色いカレー」と謳っているが、美味しいとは言わない。値段も味も食品メーカーの商品にはかなわないからだ。あくまでもブルーオーシャンで戦わねば。
そんなカレーでも列車で食うと旨い。そしておみやげも買う。6000箱は売れた。

終列車が終わってから「夜行列車」を走らせることにした。片道26.8km、50分なので3往復もすれば朝になる。乗るための夜行列車もありだと思った。
乗る前に夕食付きで、10時に出て朝6時まで、4人掛けの直角シートで、1万5千円。それでも満席になる。もちろんワンボックスに1人なので2両で40人、鉄道マニアは通常なら4人分の切符が要ることを知っているので、「安い」「疲れた」という充実を感じてくれる。冬場に3~4回の運行をしている。

「700万円払ったらあなたも鉄道の運転手になれる」というキャンペーンも始めた。鉄道の運転手のみ、受験資格が鉄道係員であることという規定がある。40代・50代の運転手になりたくてなれなかった自分と同じ年代の人、鉄道学校を出てる人、大手自動車メーカーの人や学校の先生も集まった。そうしたら、「安全を何だと思っているのか?」という批判をもらった。自分のお金と時間を使ってまで資格を取ることのどこが問題なんだろう。

なつかしい駅弁の立ち売りも始めた。列車の窓が開くからできることだ。東京の大手企業のサラリーマンが毎週弁当を売りをやりに来る。
そんなことが評価されてか、リーチ・マイケルさんと一緒に日本PR大賞をいただいた。

釧網本線の茅沼駅はJR北海道の駅だけど、私が所有している。国鉄清算事業団の売り出しで買った。日本で唯一タンチョウ鶴が来る駅だ。オーナーになって今ごろオレの駅が気になることに気づいた。駅に想いを馳せることをビジネスにできないかと考えた。
それで、由利高原鉄道、北越急行と一緒にNTTと組んで、
ローカル鉄道.comというライブカメラを付けた所からお金をもらえる仕組みを作った。

ネットで枕木オーナーを募って、1年5000円で枕木にネームプレートを付けるしくみも作った。大阪府貝塚市の水間鉄道の社長から真似ていいかと聞かれたので快諾した。さすが関西人、彼女は枕木の両側にプレートを付けたらしい。ローカル鉄道は商圏が重ならないから成功も失敗も共有するのが当たり前になっている。

鉄道に想いを馳せる人がある。鉄道=地域である。これを地域の人たちは理解すべきだと思う。
自分が学生の頃、国鉄木原線上総中野駅で撮った写真がある。そう、今はいすみ鉄道の駅になった。子どものころに行った場所は自分にとって大事な場所だ。
子どもたちに遠足に来てもらう。子どもたちに駅を掃除してもらう。それが将来の想いにつながっていくのだと思う。

 

いすみ鉄道 社長ブログ(お奨めです!)
http://isumi.rail.shop-pro.jp/

鳥塚さんに関するインタビュー記事
http://news.goo.ne.jp/article/senkei/bizskills/senkei-20130924-01.html
http://www.meiji.net/st_introduction/graduate/vol38_akira-torizuka

いすみ鉄道株式会社
http://www.isumirail.co.jp/

パシナコーポレーション(鳥塚さんが社長を務める鉄道DVD製作会社)
http://www.pacina.co.jp/

 

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