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2016/12/19

養老孟司さんの講演

12月11日に行った65歳成人式に、養老孟司さんをお招きして「楽しく 元気で 生き生きと輝くために」と題する講演をしていただきました。養老孟司さんと言えば、私は「バカの壁」を読んだこともありますし、以前、講演をお聴きしたこともあります。そのとき印象に残ったのは、「自分に合う仕事が見つからないとぼやく若い人がいるが、自分に合う仕事がないなんておこがましい。私も、なりたくて解剖学者になったわけではない。窪みにハマるように、世の中の必要とされるところに自分がハマっただけのことだ。」と仰ったことです。結局は、巡り合わせを自分の天職と考えて、それに打ち込んでいくことが大切なのではないかと思います。
さて、以下は65歳成人式での講演の内容を私なりにメモしたものです。時々脱線をしながらのお話しでした。とにかくアタマの中の引き出しがたくさんある方だと思います。
 

 島根県匹見町は、過疎が自慢。早くから過疎対策をしてきた。田園回帰1%戦略と称して、1%がUターン、1%がお金を使うとやっていけそうなデータがあるらしい。
 出生率の最低は東京都と京都府で1.2くらいだ。大阪と広島は、今、20年前の島根県と同じ人口構成だ。
 徳之島伊仙町は、日本で一番子どもが増えているが、人口が少ないので大勢に影響はない。

 終戦の時、小学2年生だった。日本人のクセは今も昔も希望的観測だ。新聞もいい加減だ。負けた途端に「一億玉砕」が「一億総懺悔」に変わった。

 少子化の意味を考えてみる。このままいくと日本はなくなる。多すぎるから減るのはいいけど、誰も子どもを減らそうとしているわけではない。では、どこがおかしいのだろうか。

 トイレは汲み取りから水洗になったし、隙間風の吹く部屋には空調が完備した。地面はすべて舗装された。先日、京都府の綾部に行ったが、そこにもマクドナルドとイオンがあった。マレーシアにキャメロンハイランドというイギリス人のつくった避暑地があるが、そこで売っているスタバのコーヒーの値段は世界中同じだ。
 まさにグローバリゼーションだが、今年に入っていくつかのチェックが入った。一つはイギリスのEU離脱の決定であり、また、メキシコ国境に壁をつくると言ったトランプが大統領に選ばれたことだ。
 これはグローバリゼーションに対する反省、世界が同一化していくことに対する反対ではないだろうか。政治がどうして良いかはわからないけど、何かこのままではいけないと思う現象なのではないか。
 地方創生もそうだが、どこかをいじると、みんな一斉に丸の内のコンサルに委託したりして、さらに同一化が進展するのではないだろうか。

 有機農法を採用する農家は全体の0.4%。1軒1軒、やり方も作物も違う。不耕起や不施肥もあるので、それぞれ千差万別だ。

 今どきの正しい子育てとは何かといった質問をよく受ける。言葉がない頃から伝わっている人間(ネアンデルタール人の頃から数えると20万年くらいになるが)の子育てに古いも新しいもあるだろうか。
 自分は30年以上、保育園の理事長をしている。本当に理想的な保育園ができたら、親は要らなくなる。旧ソ連はそれを本気で考えていたらしい。
 理想的な保育園はつくってはいけない。親が何をして、保育園は何をすべきか、忙しいから預けるという人が考えるわけがないので、保育園の側で考える必要がある。

 薬は、それぞれの人に合ったように処方されるべきだ。全員に効くわけはない。お腹の中には(昔は1億と言われていたが)いま10兆個の細菌が住んでいると言われている。口のなかの細菌もすごい。まるで生態系だ。人が死んで火葬をするとまさに1億玉砕だ。
 医者は患者が風邪をひくと抗生物質を処方する。昭和20年代から使うようになった。当然腸内細菌が変わってしまう。アレルギーの原因にもなる。ヨーロッパでは、馬屋に出入りする生活だとアレルギーにならないといったデータが出ている。

 自分は、くじに当たったように虫(昆虫採取)が大好きだ。自然相手は誰にも迷惑をかけないが、人相手だとそうはいかない。霞が関のビルの中にいると、風は吹かない、明るさ変わらない、床の材質も同じだ。虫捕りに出ると、外は凸凹、草木も茂る、それが本来だ。
 都会の保育園の運動場のように舗装してしまうのが、子どもにとって親切なのだろうか。昭和天皇は、世の中には雑草などという草はない。それぞれ名前があると仰った。雑草とは植えた覚えのない草のことだ。
 たった0.2mmの受精卵が何で大人に育つのか、自分にはわからない。
 合理的、経営的、効率的に生きようとすると、子どもがいなくなる。「どんな子どもができるかわからないけど、産んでみた。」というと無責任と言われるが、自分はそうは思わない。
 世界を同じようにする意識。同化は人間のクセだと思う。
 

Q: 親の介護や自分の老後が不安だが。

A: 不安が悪いものだと考えるのは、現代社会の1つの特徴ではないかと思う。不安がないのは正しいことか? 痛みは悪いことか?痛覚がないと困るだろう。不安をいかに上手に扱うかが、成熟だ。死んでも自分は困っていないだろう。
 自分の考えを変えるのはタダ。人の考えを変えるのにはコストがかかる。不安にこだわるともっと不安になる。
 

Q: 学校の中に漫画があってもいいか。

A: 自分は京都国際漫画ミュージアムの館長でもある。偉人伝などぜひ子どもに読んでほしいマンガもたくさんある。しかし、学校に漫画を置くかどうかは、一律に決めることではない。
自分が警戒しているのはサブカルチャーの地位が高くなりすぎていることだ。小学校にナニワ金融道を置くか?サブカルチャーを芸術と同一視するか?文科省が推薦する漫画なんて好ましくはない。
本物を見抜く審美眼を身に着けるには、子どもの頃から良い芸術を見せる必要があると思う。
 

以下は、私が控室で養老孟司さんにお尋ねした質問の答え。

Q: 人間が同化しない一つの大きな救いとして、好き嫌いの存在があると思うが、好き嫌いはどうしてあるのだろうか。

A: 動物が適当な物を食べるのに、そもそも好き嫌いがないと物を食べられない。社会的な好き嫌いも同じ脳の部位を使っている。捕食の際の好き嫌いが発展したのではないだろうか。
 

考えさせられる講演だったと思います。私には、「人間は同一化したがるもの。もっと多様であることに寛容であっても良いのでは。」、さらに言うなら、「人間の特性を知り、今社会がどんな状態にあるのか感じ取りたいものだ。」というメッセージに受け取れました。
皆さんはどうお感じになったでしょうか。

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