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2017/03/28

兵庫県西脇市探訪記

昨年夏に兵庫県西脇市を訪問し、市長にお会いしてきたときのレポートです。

●西脇市の概要
加古川とその支流の杉原川沿いに中心市街地が形成されている。古くからの織物産地だけあって、市街地には播州織の工場の佇まいが残っている。それでも、昔は千数百軒あった織物工場がいまでは200軒程度になったそうだ。ここは先染め糸を使ったシャツ地などの織物が主体で、知多の綿織物よりも技術レベルが高い。国産のシャツやハンカチのシェアは70~80%。ハンカチのライバルは海外ではなくて今治のタオルハンカチだそうだ。
農閑期の副業として釣針の生産も古くからおこなわれており、がまかつの本社は西脇にある。神戸牛の中のシェアは15%程度。兵庫県のこのあたりは山田錦の産地で、大高の萬乗酒造(醸し人九平治)に買ってもらっているそうだ。
明石の真北にあり、北緯35度線と東経135度線の交わるところにあるので、「日本のへそ」として、全国へそのまち協議会という全国の自治体ネットワークに加入している。西脇市出身の著名なグラフィックデザイナー横尾忠則氏のゆかりの地でもある。

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●片山象三市長について
片山市長は、もともと繊維機械を扱う企業家出身で、多職種を連携させた技術革新の実績もあり、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」でも取り上げられたことがある人。この地の産業再生を期待されて市長になったと見て良いと思う。繊維機械メーカーに勤めていた時には、営業で全国の産地をめぐっており、東浦のこともよくご存じだ。
当然のことながら、民間感覚のある行政経営、市民参加や地域の活動の活発化に力を入れようとしている。

●市長との会話の中で印象に残ったこと
最初に市長になった時に、職員が仕事の中でどれだけコストがかかってその効果がどうなっているのか全く考えていないことに驚いた。
11年前に合併したこともあって、公共施設の統廃合に心を砕いている。住民や議員も総論は賛成しても各論になると反対に回る。そこで、公共施設統廃合で実績のある秦野市の職員を市役所に呼んで講演をしてもらった。データに基づいたとてもわかり易い講義で、職員だけでなく議員も納得してくれた。
今、合併特例債を使って市役所と市民会館を移転しようとしている。これが当面の大仕事になる。市役所には年間13万人の訪問者があるが、職員には年間50万人の市民が集う場所にしようと言っている。そのためには民間の商業施設を入れることも考えられる。50万人には特段の根拠はないが、昨年度オープンした図書館・子育て支援センター・地区コミュニティセンターの複合施設の集客力が50万人(3割は市外から)だ。
西脇市には区長が責任者になっている地区立保育園と市立幼稚園と他に保育所があるが、これらを8つの認定こども園に統廃合する計画進も進めている。消防署は、緊急防災減災補助金を使って新築した。
普通会計の職員数は約230人で類似団体の中では全国トップクラスの少なさだ。友人の伝手で、デンソーと豊田自動織機を訪ねて、職員を1年間派遣して民間企業の働き方を学ぶ研修をお願いしている。
首長になって1期目なのにもう4回も水害を経験した。災害に備えるために、各地区ごとに住民にも入ってもらってタイムラインを作った。豪雨の前にため池の水位を下げるなどの対応も盛り込んである。
職員には、TPPならぬ、TTP(徹底的にパクる)でいけと言っている。他市町村を含めて、世の中の良い事例を学んで、真似をしまくることが大事だと思う。
国内に参考にすべき事例がなければ外国も積極的に参考にすべきだと思う。昨年は、休暇を取ってミラノの繊維機械見本市に行って、久しぶりに現地のイタリア人と旧交を温めてきた。一人で行ってくると言っても、職員も議員も誰も心配してくれなかった。
西脇市と多可町は定住自立圏を構成しているが、隣の加西市と加東市も対等の関係で定住自立圏をつくっており、その下に西脇・多可定住自立圏をくっつける構想がある。
ごみ処理は加古川下流の小野市を含めた広域で焼却施設をつくる計画が破談になった。西脇市は隣の多可町と1市1町で焼却施設をつくることになる。

●西脇市内を見学
市長との意見交換後に、少しわがままを言って、市内を見せていただいた。
兵庫県立工業技術センターでは、休館日にもかかわらず、所長自ら案内してくださった。市長になる前に片山さんが発明した効率的に小ロットの整経を行う装置のデモ運転を見ることができた。

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図書館複合施設も休館日に見せていただいた。図書館、児童館、地区コミュニティセンター(事務所、会議室、調理室、ホール、スタジオ)が入っており、地域の人たちの運営による軽い飲食物をだすスペースもある。図書館は、近年よくあるような平屋の大空間に遠くまで見通せるように低めの棚が配置してある。子どもが騒いでもよい天蓋のあるスペースや壁の上の方まで造り付けの書架と高級感のある落ち着いた家具のあるスペースなどに、岐阜メディアコスモスや武雄市立図書館の影響を感じた。
利用者は、預金通帳のような読書通帳をつくって、ATMのような記帳機で貸出日、書名、著者名、本の値段などを印字して読書の記録を残すことができる。

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この付近は、区画整理で造られた住宅地で、電柱は本通りから一本入ったところに設置されているので、街路の景観はすっきりしている。坪15万円程度で売り出しているが、隣接する民間宅地開発地が坪10万ほどで売り出されているため、売れ行きはいま一つとのこと。購入者は近隣市町のエリア内が大半とのこと。

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市街地の水路沿いにある旧來住家(きしけ)住宅は国登録有形文化財。繊維業や銀行業で成功した來住家が大正時代に建てた邸宅で、欅の大黒柱や屋久杉の天井板など、随所に贅が尽くされている。建物正面の2階部分にある虫籠窓の中央の格子だけ漆喰が塗られていない。これは、敢えて未完成にすることで、発展途上でまだまだ発展することへの願いが込められている。
離れの洋館建てには、ワン・デイ・シェフの食堂、西脇TMOのオフィス、播州織オーダーメイドシャツの店が入っていて、送料込5400円ほどでオーダーメイドのワイシャツを作ることができる。

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