「ポートランド・メイカーズ ~クリエイティブコミュニティのつくり方」の著者、山崎満広さんのトークイベント
きのうは夕方から大阪へ。本当に久しぶりに駅を降りたら、すっかり変わってしまっていてびっくり。自分がどこにいるかわからないくらいです。
きょうはこれがお目当て。
オレゴン州ポートランド市開発局職員で、「ポートランド・メイカーズ ~クリエイティブコミュニティのつくり方」の著者、山崎満広さんのトークイベント。仙台、二子玉川と来て、名古屋飛ばし。で、心斎橋まで来てしまいました。
はじめに、“Travel Portland”のノリの良いプロモーションビデオを見ました。今ちょうど阪神百貨店で“Pop up Portlandフェアー”が始まったそうです。
以下、トークの中身をかいつまんで。
ポートランドは人口62万人(全米29位、日本で言うと八王子くらい)、都市圏人口150~200万人の都会的な部分と、身近に大自然のある街。マウント・フッドの8合目まで車で1時間半で行けるし、オレゴン州がすべて所有し手つかずの自然のままの海岸線も手軽に行ける。
一人あたりのレストランの数はニューヨーク州よりも多い。農地、海、森が守られているから旬のおいしい食材がある。そうすると料理家の想像力を掻き立てる。
スポーツ産業が盛ん。海も砂漠も行けるし、1泊2日あれば年中四季を感じることができる。
アメリカ東部から離れた独立した小さな州。流行の伝わりが遅いだけに、自分たちのモノ(文化)を大切にする。トレンドは自分たちでつくる。だからクリエイティブ。
2001年から60%経済成長した。1週間に300人~400人増えている。これから十数年で50万人くらい増えそう。都市計画で市街化はコントロールできるが、地価はコントロールできない。まだ、リーズナブルに買える住宅地はある。炭酸ガス排出は減っている。州も市もカウンティも環境を重視。
24歳~35歳の若い層が転入。その33%(全米平均は28%)が学位を持っている。
都市圏別の人口1000人当たり特許件数は全米6位。ナイキの本社、ランドローバーのインターフェイスデザイン部門、ミズノのランニングシューズのデザインチームもポートランドにある。
山崎さんは、昨年「ポートランド ~世界で一番住みたい街をつくる」というまちづくり系の本を出していますが、新しい本は、ポートランドで活躍するクリエイティブな人にインタビューを試みたもの。一人2時間から4時間、聞き取ったそうです。それらのうちのいくつかの例を紹介します。
ポートランドで尖った人といえば、まず、
John Jay
中国系アメリカ人でニューヨークでブルーミングデールズのクリエイターをしていたのに、ポートランドへ移住。
ワイデン&ケネディのクリエイターのトップでいることを嫌って、オフィス1階の片隅に自分のガレージをつくってしまった。それが新たな顧客を生んだりした。
スポ根のナイキはアディダスにストリートカルチャーで負けていた。そこでフィル・ナイトをハーレムに連れて行って、ナイキをニューヨークのスラムのストリートカルチャーに染めるキャンペーンをやった。
今、ワイデン&ケネディは世界で賞をとる広告会社(彼が育てたチーム)なのだけど、その彼自身はユニクロの統括へ転籍。ユニクロの有明本社では、クリエイティブな書籍を集めた2階建ての書庫をつくってしまった。彼のモットーは「人生で最もクリエイティブな仕事のできるところへ行け」だそうだ。
Tom Minami
ナイキのイノベーティブキッチン(次世代のプロダクトを考えるチーム)で、マーケティング、素材、プロダクトデザインからなるチーム。素材も、どうやったら資源を無駄にせずに製品をつくれるか(たとえば、糸で編んで作ったニットシューズ)を含めて考える。
その前は、ロナウジーニョの靴をつくっていた。彼はボールを足でリフトするように扱うので、履き心地が粘っこいのを好む。薄い1枚のカンガルー革にクロスステッチ(家族・情熱を表す赤いステッチ)を施した。ロナウジーニョは何も注文しないが、デザイナーが本人を研究し尽くしてプロダクトを提案する。
ナイキのモットーはFail Forward(失敗して次につなげる)だ。こういう考えを持った人がまた起業する。
彼は、スランプなどで「今まで経験したことがないところまで追いつめられると人は変わる。視野が広がり物事を多方面にとらえられるようになる。」と言っている。例えば、ハワイでサメと泳ぐ、秋口に雪山へ登山する、マラソンに出るなどして、わざと自分を追い詰めるのだそうだ。
Chef Naoko
中学の娘がサマーキャンプでポートランドへ行ったら、落ち込んでいたのが輝いて帰ってきた。それで、英語もできないのに、ポートランドに移住して料理屋を始めた。自分から英語を話せないので、農場ツアーに参加して、近くのオーガニック農家を探した。「ポートランドの旬の食材を使った日本郷土料理」というべきもので、料理評論家の中にもファンが多い。
最近、店を改装して、すだれが横向きに天井から曲線的に垂れ下がっている斬新な内装になった。これ実は隈研吾の手によるもの。彼女の弁当を食べた縁で、弟子を紹介してくださいと頼んだら、本人が意気に感じて内装のデザインをしてくれた。
彼女のモットーは「美味しい料理は人種や国境を越え人々を幸せにする」。ポートランド直行の帰りの便の機内食はすべて彼女の店のもの。忙しいので店の方は今ディナーのみだ。
Mark Stell
Portland Roasting Coffeeという「もっともサステイナブルなコーヒー会社」を経営。タンザニアにコーヒー農園、国立公園に隣接しているので象も来る。コスタリカにも農園がある。
リオで行われた環境会議にポートランド州立大学の学生として選ばれて出席。エクスカーションでトレーダーの「コーヒーは原油に次いで取引が多い。でも地域の人は潤っていない。」という話を聞いたのがきっかけで、自分はコーヒーから世界を変えようと思った。direct tradeで1回失敗、2回目の起業で成功。託児所や水道を整備するなど、もうけを農夫のコミュニティへ戻す。スタバとの違いは、「味は同じで、少し安い、ずっとサステイナブル」。fair tradeではなくてdirect trade。スタバも追随してきた。
店では自分たちの美しい農園を映像でPR、見る人を感化する。
モットーは「この業界に競争相手はいない。いるとすれば、それはいつも自分自身だ。」。
とにかく自分たちの街をいろんな角度から自慢できる、自慢する。出版も含めてそれ自体がシティープロモーションになっています。
トークのあとで出た質問の中で、日本の地方創生をどう思うか?との質問がありました。それに対して、山崎さんは地方政府に勤務している立場から、「日本の役所を見ていると、過去の成功体験がガチガチで変え辛くなっている。人事異動が多くて専門家が育たないので、まちが育たない。個人がクリエイティブになり辛い仕組みになっていて、個人的なリーダーシップを発揮できない。」と答えていました。
このあと懇親会がありましたが、明朝は用事があるので帰ります。東京行き最終はさすがに混んでいましたが、こだまはこの空き具合。ゆるりと行きます。
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