「あそびの生まれる場所」の著者 西川正さんと考える ~公共の場をみんなの居場所にするには~
『あそびの生まれる場所 ~「お客様」時代の公共マネジメント~』の著者、コミュニティワーカーで特定非営利活動法人ハンズオン埼玉理事の西川正さんのお話しを聴く機会がありました。西川さんは、50歳、上尾市の尾山台団地に住み、民生委員を務め、小学校のおやじの会にも関わっていらっしゃいます。
お話しを聴いていて、普段、何かモヤモヤしていてうまく言えないことが、より明確な言葉としてイメージできたような気がします。以下はお話しの要約・抜粋です。
団地の近くにある大学の学生が入って、段ボールの箱に1790戸の窓を開けて、屋外で団地を再現するワークショップをやった。ゴジラも出てきてビルの間を歩いた。夜景もきれい。昔の写真や映画を団地の壁に映してみんなで見た。みんなで遊びを創ることができる。
駅前の市街地再開発をしたけど、人通りがいまひとつ。そこで、路上で、動くこたつ(足で蹴って進む)や、道路に落書き、路上オセロ、将棋、巨大トランプ、ベイゴマ。昔の子ども(おじさんたち)も盛り上がった。大きな筆を作って水で「止めハネごっこ」をすると、楽しく落書きが消せる。ある子は「尻」「糞」と大きく書いた。七輪を囲んで、七輪1個におとうさん1人をつけると、おとうさんがよその子どもと話す良い機会になった。トーマスの被り物をつくった人もいる。トーマスは、そのまま自分の顔が使える。
ちょっとお堅い学校の雰囲気を変えよう。
イベントに、(内申点目当てで)いまひとつやる気のない中学生くんたちが来る。でも、きちんとミッションと考える余地を与えると、俄然やる気を出す。新聞紙で巨大迷路をつくった時のミッションは、「小学生が迷い込んで泣いてしまう迷路のデザインをする」こと。最後は新聞紙にまみれて楽しく壊した。
おやじの会が、大雪の日に小学校でカマクラをつくったら、教頭先生から「何かあったら困ります」と言われた。
ヤキイモも火が立ち昇るので禁止に。現在は田んぼでやらせてもらっている。入学式の家族写真用に顔出しのワクをつくったが、入学式が遅れるからと翌年禁止になった。公務員は「何かあったら」(苦情)に怯えている。
個食は共感力を下げてきたと、京都大学総長で霊長類研究者の山際寿一は言う。人をつなぐことを目的とした公共施設でも、食べ物を持ち込み禁止にしがちだが、食べ物以上にコミュニケーションを図れるものはあるのか? ヤキイモは、においもあって五感をすべて使う。
七輪を囲む。みんなが集まってご飯を食べる。近年広がりをみせる子ども食堂も、空腹を満たすだけでなく人の共感をつくるという意味があるのだろう。
昔は、道でキャッチボールしてガラスを割ったり、工場や資材置き場で遊んだりした。遊んでいるところを見つかって大人から怒られる。この「直接怒られること」が大事だ。
昔ははおもしろいことを勝手にやった。それがあそびだ。遊びは自分たちでつくるもの。それをドンドンやっていくと、世の中のルールや他人の都合に抵触する。そこで叱られる。やりたいことをやった(遊んだ)後で叱られるという順番。それを体感できた。
いまでは、たとえば焚火をやっていると、住民が「あんなことやらせておいていいんですか?」と、役所や学校に通報する。それで禁止のルールができてしまう。それが現在の禁止の構造だ。
今は、(業務上の)責任のある大人しか子どもに関わっていないのではないか?
子どもが怪我をしたら、先生が「申し訳ありません」と謝る。本当は先生に「手当してくださってありがとうございます」というべきではないか。
住民のお客様化は、「次は何をしてくれるの?」というサービスを買う暮らしをエスカレートさせているのでは。
最近デパートなどに有料プレールームがあるが、お金を払って、子ども同士じゃなくて、親子の世界に閉じこもって遊んでいる姿は、本来のあり方だろうか。ニーズがあれば社会的起業と言えるのだろうか。子どもの遊びを、ビジネスやサービスで考えて良いのだろうか。
サービス事業者にとってのビジネスモデルは、事業者と客との関係性のみが大事であって、客(人)同士の互いの関係は不要だ。それは、「お友達に差を付けよう」という家族のみでがんばる暮らし方につながる。自分は周囲と比べて損をしてないか?それは誰のせいか?が関心事になる。
子育てひろばやプレーパークは、みんなで子どもを見る工夫。子どもは人とお互いにかかわりながら育つ。
一緒にという関係性が重要。ある介護施設は、1階を図書室にして開放した。施設を地域にしてしまう工夫だ。
人が人として育つには、たくさんの人に依存しなければならない。だれがどんな役目をしているかは一見わからない。そこには、サービスの提供者とお客様という特定な一方的な関係は存在しえない。役所に頼り、縛ってもらうのではなく、個人の自由と主体性と協力を感じながら生きていける暮らしや社会は、どうすれば作れるだろうか。いま私たちはそのことを改めて考える必要があるのではないか。
たとえば、ヤキイモを例にとれば?
ほっとなヤキイモタイムは、
①企画の段階から参加者自身がかかわっている。
②イモ、燃料など必要な食材や資材はみんなで持ち寄っている
③ああでもない、こうでもないといいながら、みんなが作業にかかわっている
一方、クールな(ひとがつながらない)ヤキイモタイムは、
①企画を職員だけでやっている
②準備を職員だけでやっている
③当日の作業もほとんど職員でやっている
今の少子化はひょっとするとそうしたパーソナルでギスギスしたサービス提供者とお客様の関係が行き過ぎてしまったせいではないだろうか。
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