シェアリングエコノミーってなんだ!? ライドシェアから考える。
少し前のことになりますが、6月に「シェアリングエコノミーってなんだ!? ライドシェアから考える。」と題したシンポジウムを聴きに行きました。
6月議会で乗合タクシーやデマンド交通などに関する質問があったばかりです。ちょうど、今、世界で話題になっているカーシェアリングについてのディスカッションがあるというので行ってみました。
行ってみたら、バス・タクシー業界の労組の集会と言った感じで、ライドシェアの普及を考えるというよりは、どちらかと言えばUBERなどによるライドシェアに反対の立場です。公共交通業界の従事者から見て、ライドシェアに付随する安全管理や労働条件に多くの問題点があるとの指摘がなされていました。シェアリングエコノミーの進展に伴い、職業と職業でないものの境界がわかりにくくなっています。
そんな中で、加藤博和 名古屋大学教授のお話しは、「シェアリングエコノミーにおいて主導権をとるのはITポータルを握った者。バス・タクシー業界こそ、規制に守られて現状維持にしがみつくのではなく、このピンチを活かして、地域の利用者目線で検索・予約・お出掛けの足をマネジメントするシステムをつくり上げるチャンスでは。」との内容(私の解釈)でした。労組のメンバーに囲まれて、勇気ある発言だと思います。以下は、加藤教授のお話しの要約です。
自分は、交通計画・都市計画で現場を歩いてきた。恵那、木津、釧路に今かかわっている。既存のバス、タクシーが不甲斐ない。
一方で、市民はどれだけ我事として、とらえているだろうか。バス・タクシーが黒字なのは日本だけ。だから、与えられるのが当然になってしまった。
東京、大阪だったら、タクシーが駅前にいるのは当然だろうけど、紀伊長島はタクシー廃業、笠寺はタクシーが倒産した。
名古屋市内はタクシー運賃が上がったけど、業界としてはやむを得ないとは思ってもらえない。では、値上げした宅配便とタクシーの違いは何だろうか?
京丹後市といえば、世界的なUberの予約配車システムと、NPOによる公共交通空白地有償運送「ささえ合い交通」が話題になっている。スマホ・クレカに加えて電話予約・現金払いも使える。京丹後市の公共交通の取り組みは10年前からやっているのに今、全国で注目されている。
長野県中川村は、村営有償に加えて、建設会社がNPOを設立して公共交通空白地運送、社会福祉協議会が(撤退したが)福祉有償運送をやっている。
それに引き換え、これまでバス・タクシー業界は地域と連携してきただろうか?
交通手段は、目的ではなく適材適所。各手段の良さで交通網をつくる。お出掛けの足を通じた持続可能で安心安全な地域づくりだ。
太平の眠りを覚ます蒸気船ともいえる、ライドシェアのどこが怖いか?
・過疎地よりも本命は都市部だ。
・違法性が強い。と言っても必要なら特区でも可能。
・タクシー・バスが、困ったところにサービスを届けていないから。
安全性を訴えても、緑ナンバーにとって安全は当たり前。白ナンバーでも安全を望んでいることに変わりはない。ライドシェアが出てきたのは、バス・タクシーが不便だからだ。
タクシー規制緩和の流れ。(何が岩盤で?何が必要か?)
2002年 国の需給規制撤廃
2006年 京丹後市、中川村の事業が地方公共交通として合法化
2009年 タクシー適活法で、供給過剰は緩和したが、利用を増やす議論は無し。
霞が関と思いと地方の現場の対応のギャップは大きい。自分は、そこのつなぎ役のつもりだ。実際にモノをつくってみせることを心がけている。
タクシーは何も変わっていない。進化していない業界は外から見るとおいしい。だからライドシェアに付け込まれる。
昔は公共交通の影響力は絶大だった。50年経って、今はほとんどの人が車を運転できる。
バスにおいて、企画運営と運行の分離が進行した。親会社が運営を行い、コミュニティバスもツアーバスも指図されて運行するのみ。
ライドシェアも同じ方向性だ。最も儲かるのはポータルを構えていて段取りする人。
だから、バス・タクシーにも、地域を支える仕事としてほこりとやりがいが欲しいし、車両や人を有効に活用する仕組みが必要だ。
ハインリッヒの法則にあるように、重大事故は低頻度。しかしメガリスク。悪運が重なると重大事故につながり、業界全体がダメージを受ける。
ただし、めったに起こらないことに努力しても客は喜んでくれない。だから、公的規制の必要性がある。
シェアリングエコノミーとは。
・所有から賃貸、そして共有へ。
世の中には活用されていない資産がたくさんある(自家用車は稼働率1割未満)。もはや車所有はステータスではなくなった。
・所有から利用へ。モノ(車)からコト(移動)へ。公共施設のスリッパのようなもの。
・地球にも優しい。
ITによる情報発信・提供、グローバル化が進む。
しかし、片手間でやっている人がプロを駆逐すると、気が付いたらプロがいないということにもなりかねない。事故も増えるかもしれない。
ITによる需給のマッチングは、
・欲しい人とあげられる人を結びつける。
・モバイル参加が増えることが、市場原理が神の見えざる手として機能する条件。
・競りによるミクロ経済がなりたつ。
・これからビッグデータがおいしい。
特に目的のない人が、お金のために人を乗せる場合は、正しくはride-hailingという。ride-sharingは同じ方向に行く人を乗せること。
タクシー・バス事業者が、スマホアプリ予約を先にやってしまえば!!
自家用車ライドシェアの問題点として、
・IT予約・配車・相乗りマッチングがうまくとれるか?
・非二種免許で、安全基準、労働規約あるか?
・需給に応じた変動運賃は、公共性に照らしてどうか?
効率が高まるのは人を搾取することと裏腹。本当にお出掛けの足確保という公共政策目的がかなえられるか?
だから、タクシーなどの公共交通に期待。
ライドシェアと自動運転は不可分になる。運転手と許認可の問題も自動運転になればOK。しかし、自動運転の実用化は20年以上先では。
労働条件の問題はわかりやすいが、安全性の問題は見えにくい。市場原理とITモニタリングでは、安全性の問題は解決しない。なぜなら、熟度の継続がないし、ライドシェアを企画運営する側に安全に対する関心がないから。
活性化再生法4条(平成19年制定)には、
・市町村、都道府県の主体的に取り組む努力義務
・国は、情報提供、研究開発、人材育成
・事業者はサービスの質の向上
に努めるとある。自治体、事業者、住民の三位一体が必要。
京丹後市の良いところとして、EV乗合タクシーを評価している。500円均一。小型乗用車で“タクシー”と呼んでいるが、一般旅客運送事業で、4人乗りのバスの扱いだ。
EV乗合タクシーは、買い物代行、図書館、見守り、病院予約、小荷物搬送(タクシーはできない)など、たくさんの機能を兼ねている。
人、モノ、コトを運ぶ。これは、ライドシェアが目指すものと同じだ。
みんながこの車をシェアすることによって、いろんな効果を生むし、安くできる。
今後、バス・タクシー業界の皆さんには、以下のようなITを活かした付加価値の向上を期待する。
・検索だけでなく、タクシー、カー・サイクルシェア、航空機、列車まで、予約・決済できるようなシステム。
・情報アクセス向上、運行効率改善、安全性担保。
・ビッグデータを使って交通網見直しも。
タクシーが変われば、きっと日本が良くなる!
最後に、「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム」のお知らせをして話しを終える。
2017年は10月28日(土)・29日(日)東洋大学 白山キャンパスにて開催予定。
川上資人氏(弁護士、交通の安全と労働を考える市民会議事務局)からも、話しがありました。以下はその一部です。
シェアリングエコノミーとは、個人の遊休資産(労働力やスキルのような無形のものも含む)の貸し出しをするシステムだ。
プラットフォーム(ITポータルの運営者)が手数料として2~3割をとる。プラットフォームエコノミーと呼ぶべきだ。
キャピタルプラットフォームとレーバープラットフォームを分けて法規制することもできるはず。
ギグ(1回限りのライブの意味)エコノミーともいう。雇用を生まない仕組みだ。
市場を求めて都市部へ行くから、結局、過疎地の救いにはならないだろう。
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