トークライブ「鉄道が地域の未来を明るくするために」のレポート
昨年12月11日に名古屋大学で開催された トークライブ「鉄道が地域の未来を明るくするために」を聴きに行きました。ローカルジャーナリスト 田中輝美さんの鉄道の役割と地域活性化について熱く語るトークライブ&環境学研究科 加藤博和教授との対談のレポートです。
田中さんは島根県浜田市出身。大阪大学文学部では仏像を研究していたとか。山陰中央新報社に入社、ジャーナリストとして15年務める。学生時代から乗り鉄で、20年?かけてJR全線制覇。そのために3年間東京に赴任したほど。3年前に独立してフリーに。地域の活性化をテーマに「ローカルジャーナリスト」と名乗る。
以下は、トークライブ&対談の要約です。
「地域×鉄道」という視点で日経グローカルに連載していた。全国紙の人は鉄道のことを書きたがらない。鉄道ファンから重箱の隅をつついたような反応が来るから。
2000年以降、35路線673kmの鉄道が廃止された。その中には長野電鉄屋代線、十和田観光鉄道も入っている。
でも、6割(82社中49社)のローカル鉄道が乗客数を増やしていた。2013年度の乗客数は前年比104%と全体でも増えている。データをあたることが大事だ。
つまり、復活の兆しがある。駄目じゃない。知られてないだけ。(業界内でも全体で増えていることは知られていなかった。)
共通していた鉄道の役立ち方。
① 呼び込む(人、モノ、カネ)
② 解決する(移動しやすい地域)
③ かせぐ(地域を黒字に)
①呼び込む
●一畑電車
週1の体験運転が大人気。東京から家族で10万円くらいかかっても人が来る。
専用線路があって、いろんな車両があって、日本最古の電車もある。
大阪から1000回来ている人が出雲市観光大使になった。リピーターになると、帽子がもらえたり、最高は制服がもらえたりする。
●肥薩オレンジ鉄道
元祖地域レストラン列車。コーヒー以外は100%地元産。
②解決する
●越前鉄道
アテンダントが乗っている。鉄道を使う億劫さを取り除いて、乗りやすいイメージ作りで、10年間乗客が増えている。
●熊本電鉄
車やバス、自転車と共存共栄。パーク&ライドや高速バスへの乗り換えなど、地域の総合交通体系のマップをつくって、5年連続で乗客が増えている。
●京都丹後鉄道
地域と鉄道は運命共同体。鉄道会社が地域でビジネススクールを開催。京都を朝出れば、(舟屋のある)伊根に着ける接続ダイヤを設定。
③かせぐ
●わたらせ渓谷鉄道
160のグッズを地域の企業とコラボでつくる。「鉄道のおかげ」で地域の企業がもうかる。
●天竜浜名湖鉄道
地域のお店が勝手につくった「車両カレー」が大人気に。
●琴電(高松琴平電気鉄道)
日本初の駅ナカ ビアパブを出してもらった。子どもとお酒が好きな人のマッチングが良いので、子育て支援的使い方がありうる。
タンゴ鉄道でも試しにやった待合バーがはやった。
鉄道は、地域を元気にし、人々の暮らしを豊かにする可能性がある。地域が一緒になって汗をかくことが共通点。翻せば、地域に愛されない鉄道は残れない。
そこで気をつけるべき点は、「生活の足」という呪縛だ。
「生活の足」という掛け声だけでは既に難しい状況にある。乗る人が少ないから仕方がないという数の論理による廃止論に対抗できない。生活の足を越えて、乗らなくても関わることができる仕掛けが欲しい。
●北条鉄道(兵庫県)
開業当時まで乗客数が復活した。住民の寄付でトイレと駅を改修。寄付者は銅板に名前が載ると最初は照れるが、家族で見に来て乗ってみようとなる。
他にも、絵を飾ることを条件に三重塔や石庭のある駅を1500万円で寄付した画家もいる。
パン屋もあるし、鉄道好きなお坊さんの講話もある。お坊さんはステーションマスターと呼ばれている。
●JR木次線
手をふレール運動。天空の駅をライトアップ。地域で駅を管理。
鉄道の駅には関わり方がある。
いすみ鉄道では停車中の「社内待合所」で勉強ができる。
乗ること以外で関われば愛着がわく。
ファンが多いのも鉄道の特徴。
乗り鉄、撮り鉄、音鉄、車両鉄、駅弁、グルメ、さまざまな鉄ちゃんがいる。
鉄道駅は地図に載る。(廃止で地図から消える。)
銚子電鉄では、脱線事故のあとに、高校生がクラウドファンディングを始める。483,000円が寄せられた。
大量輸送という役割から、残す・生かすではなく、地域の足を越えた価値づくりをして、結果として残る、そして地域が元気になることが大事。
三江線廃止の教訓。無くなってから気づく。鉄道が無くなって栄えた地域はない。
どうやったら、どこから、変わるのか?
結局は人。人を変えるには、まず自分から。
どんなすごい事例も、始まりはたった一人の危機感や想いから。
一人ひとりの積み重ねで鉄道と地域の未来は変えられる。
「ノーモア三江線!」ローカル鉄道を少しでも応援したい。何でもやるので、お声掛け下さい。本来、ジャーナリストは現場に関わるものではないが、自分は関わろうと心に決めた。
2月11日(日)島根県雲南市の500人規模のホールで、木次線活性化の成果を発表します。ぜひ来てください。
加藤博和教授から
かつて旧国鉄池北線(北海道 池田~北見間)から、ふるさと銀河線になって、今では鉄道が廃止されたが、夜、バスで途中の乗り換え点である陸別まで行くとちゃんと乗継便がある。すなわち、ふるさと銀河鉄道は、列車は走っていないが路線としては途切れていない。置戸、陸別は商業販売額も上がっている。
残すことにこだわるのではなく、「残す」から「活かす」への発想の転換が必要だ。
上毛鉄道では、自転車に乗ったまま改札を通って、自転車ごと電車に乗ることができる。電車は30分に1本。ホームには貸自転車がある。
田中輝美さんから
自分は、松江で、基本は鉄道に乗り、もしなければ車を運転する。
本も読めてお酒も飲めるのに、鉄道は不便だという思いこみのカベがある。
そんなに車は便利だろうか。運転中の時間は使えないし、事故の危険もある。
鉄道があれば、それは豊かさ。地域の選択肢であり資産である。
・駅に何もない。自販機もない。 →木次線では、駅に地域が関わるようになってきた。
・鯖江駅(JR西日本)のコンビニは、セブンイレブンなのにAM7時からPM7時に閉まる。→北条鉄道では、地域の駅にステーションマスターという地域の人を置いて、パン屋やコーヒーがある。人が人を呼ぶ。
JRが問題。30年前、路線を残す竹に民営化した。なのに、JR自身が今でも官僚的。住民も役所扱い。そして、ここへ来て、経営的に耐えられなくなってきている。グループ会社が儲けても地域と関わりできない。
民間や自治体も、JRに一方的なお願い。JRと地域は信頼関係にない。 →木次線は、駅が自治体に譲渡されているから、やりようがある。18駅の2/3が有人駅。駅をやっている人の雰囲気が楽しい。地域に鉄道が欠かせないという思いがある。それにはお金もかかる。
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