知多市の人財・志事ツクールvol.5「地域が元気になる人と事業の育て方」 を聴いて
知多市民体育館大会議室で開催された講演会に行って来ました。岡崎ビジネスサポートセンター(OKa-Biz)センター長 秋元祥治さんの「地域が元気になる人と事業の育て方」と題した講演です。以前から秋元さんの話しを聴いてみたいと思ったいたのです。とても面白い話しを聴けました。
主催は、知多市企画情報課内に事務局を置く「ちた人財・志事ツクール推進ネットワーク」です。
講演の内容は以下の通り。私の要約です。
この2週間に起こったことをお話ししたい。8歳の上の娘が本を出したいと言い出した。「ほいくえん、ようちえんのみんなへ しょうがくせいになるまでに、やるといいこと しょうがくせいになったら、やるといいこと」と題して、16のやると良いことについて娘が作文を書いて、それを自分が100部印刷して半分をインターネットで売ってみた。ヤフーなら出店料タダだ。そうしたら、3~4日で50部完売、子ども向け書籍のランキング1位になった。岐阜新聞とヤフーニュースのトップなって、1日に1600冊売れた。夫婦で発送業務がえらいことだった。何が言いたいかというと、小学校2年の子が、特別な才能がなくても本を出版できる。新聞や雑誌「ソトコト」の取材も受けた。ネット販売で、だれもお金をかけずに挑戦できる。
創業支援、企業誘致、中小企業支援の現状は、補助金と利子補給とセミナーだ。
都道府県民一人あたりの所得は、東京都が480万円、愛知が390万円、岐阜県は290万円、青森、高知、沖縄が210万円くらいだ。地域を元気にするために、人に住んでもらうのには、儲かる仕事があるかが問題。
Oka-Bizの元になったF-Bizの考え方は、小さな会社でも1人の雇用が増えれば、その積み重ねが、まちを元気にするということ。
NPOや子育て支援をしている人達もウェルカムで相談に乗る。
中小企業にアンケートをとると、重要視するのは営業力、コストダウン、新商品開発、ブランド強化・・・これらはみんな売り上げを増やしたいと言うことだ。
定期的な経営相談相手がいるのはたった35%、それも、相談相手は税理士・会計士が66%、経営陣、家族と続いて、商工会は4.5%。税務・経理の相談を受けていても経営相談はまともに受けていない。
Oka-Bizは市立図書館の中のオープンスペースにある。職員のスーツは禁止。相談に来るまちの事業者はスーツを着ないから。スマート&カジュアルで、隣は子どもの遊び場がある。相談者の4割は女性だ。
売り上げアップをお金をかけずにサポートする。役所がつくったので相談は無料。
相談はいま4ヶ月待ちで、年間2914件来る。78%が口コミで、70%が売り上げアップする。富士市のF-Biz(小出宗昭センター長)をモデルにしている。
1日5~7件の相談(1件1時間)。先日も10時から、自動車販売、スパゲティー屋、機械部品、ダスキン、墓石などいろんな業種がある。
いくつか事例を紹介する。
<70代の姉妹が経営する写真館>
廃業の手続きをしたいと言ってきた。お宮参りや七五三や成人式など今のお客は、フランチャイズの写真館に行ってしまう。いろいろ話しを聞き出しているうちに、妹は東京芸大の写真学科を出ていることがわかった。78歳の姉も秋山庄太郎や土門拳と仕事をしたことがあり、歴代の市長の写真なども撮っていた。70代の現役で腕も良い。終活だったら歳を強みに出来るかもしれない。新商品として生前遺影撮影サービスを考えた。
そうしたら、売上拡大、事業意欲アップ、パブリシティ効果もあって、一般撮影も増えた。TV愛知のドキュメンタリーにも出た。使った金はゼロ、弱点をセールスポイントにした。60~70代にターゲットを絞る。これは若い人には出来ない。
<従業員8人の化学薬品問屋>
昔は染工所に染料を卸していたが、今は養鰻の消毒薬なども扱っている。色とりどりの水溶性花向け染料がある。花瓶に少量入れて植物に吸収させると花の色を変えることが出来る。しかし、これが売れない。これを売るにはどうしようというのが相談だった。
夏休みになると、楽天で小学生の自由研究キットが売れる。東急ハンズではキット売り場が出来る。そこで、ターゲットを小学生に絞り、ネットショップで1個数千円の夏休みの自由研究キットにして売った。これは9月まで売れた。そして、学研が1万セットを注文してくれた。2年目は5万円使って洒落たパッケージにしてアマゾンで売ったら1位になった。
次に、ハーバリウムの講師と組んで、油性染料を使って、日本初のカラーハーバリウムキットを出した。岡崎西武や豊橋の穂の国百貨店で、バレンタインデーや母の日にワークショップを仕掛けた。
<従業員4人の鋼材切断業>
取り柄がないからと、やめようとしていた経営者の相談に乗った。話しを聞いていたら、工場の2階に住んでいて取りに来るなら急ぎの仕事をその日のうちにやることもあったとのこと。普通は1週間くらいかかるという。そこで、「超特急サービス 鋼材切断119番」を始めた。売上はアップして、業界紙3紙に掲載されたら、新販路が広がった。売りがわかりやすいから記事もわかりやすい。
障害者就労支援(B型作業所)。利用者の工賃アップのために、欲しいものを作って売りたいとのこと。通常、収入は平均月8千円程度らしい。世間話しをすると、施設長の趣味はバックパッカーで、メキシコ旅行が良かったそうだ。今でもハラペーニョを20株ほど育てている。
ハラペーニョと言えば、今、メキシコ料理が流行っていて、都内では料理屋の数が急増している。国産のハラペーニョはないし、虫がつかないから無農薬で栽培できる。1瓶750円のハラペーニョピクルスを作ったら飛ぶように売れて、栽培は2500株になった。
<花火の卸>
戦国時代の鉄砲づくりの平和利用として三河や遠州に花火産業が発展したのだろう。今でも花火製造12社中8社、花火問屋8軒中6軒が岡崎にある。手持ち花火の高いのは1個で1000円する。2分半火が出続け、その間20回色が変わるそうだ。
そこで、星のや富士のグランピングや桐箱入り高級線香花火のようなシーンで使えないだろうかと考えた。1万円の高級花火の詰め合わせを「花火十二単」と名付け、笹島グローバルゲートの高級インテリアショップに置いたら1ヶ月で100セットが売れた。来年はグランピングリゾートへの営業を考えている。
<樹脂を製造する自動車部品下請けメーカー>
8人中13人が女性で、結婚式の「ハッピーウェディング」ボードを新商品として出したが売れない。文字のかすれや精度にこだわっていたが、クッキリ彫ることができれば見えにくく彫ることもできるのではと考えた。児童用の防犯名札「お名前かくれんぼ」として売り出したら、NHKおはよう日本や毎日新聞の社会面で取り上げられ、保育園や幼稚園の卒園記念に採用された。
<コーヒーショップ>
ホット専用の極上水出しコーヒーを開発したのだが、意味がわからない。朝ホットコーヒーを入れるのに時間がかかるから、前の晩から冷蔵庫で作っておいて翌朝、レンジでチンすると香りが凄く良いコーヒーが飲めるという。
今、時短の三種の神器(食洗機、ドラム式洗濯機、ルンバ、フルーツグラノーラ)が売れている。1日9分としても1年で50時間になる。そこで、朝、時間がない30代共働きで世帯所得のある家庭にターゲットを絞って、本格時短コーヒー「Get!50 coffee」と名付けて販売したら、売上が4.5倍になった。パッケージは印刷からスタンプにしてコストダウンを図れた。
Oka-Bizは、商工労政課が所管だが、男女共同参画や農政や福祉とも連携している。運営は岡崎市と商工会議所。相談員、ITアドバイザー、デザイナー、コピーライター、中小企業診断士などのスタッフを擁して、①売上アップを支える個別相談と②トップランナーによるセミナーを行っている。スタート1年目に1404件あった相談が4年目には2500件を超えるようになった。リピートは87%、口コミが78%だ。
市の予算でやっているので、市外の案件は2割までとしている。高校生が相談に来ることもあるし、時間をかけて通ってくる人もいる。岡崎とのビジネスマッチングもあり得るので、市外の案件を受けるメリットもあると考えている。
売上アップの3つのポイントは、
①真のセールスポイントを活かすこと
②ターゲットや利用シーンを絞ること
③連携、コラボすること
そして、情報発信して、知ってもらう工夫をすること。
顧客が提案したことをやってくれないとぼやくコンサルタントがいるが、自分はそうは思わない。提案したことを事業者がやるかどうかは、本人が腑に落ちるかどうかにかかっている。腑に落ちないのは我々が悪い。提案が悪いか、やりたいと思うような伝え方ができていない。根拠がいるし、類似の事例を見せないと説得力が出ない。
キモは人だ。5年間で200件以上の視察が来たが、特別なものがあるわけではないから、みんながっかりする。
・ビジネスセンス
・コミュニケーション能力(聴く力)
・地域おこし、中小企業支援を本当にやりたいという情熱
を持った人が必要になる。
Biz型のビジネス支援が増えてきた。最初、F-Bizは小出さんが天才だからと追随がなかったが、大学中退の秋元でもできる、天草でもできるとなった。今、全国のビジネスサポートセンターが富士と岡崎でOJTをしている。ビジネスセンスとコミュニケーション能力を持つ人財の採用力も高め合っている。
ビジネスセンスや提案力を磨くには、自分は、本屋、牛乳配達、新聞配達など似たような別の何かはないか常に考えている。情報感度の高い人は自分で考えることによって、答え合わせをする。情報が知識に変わり知恵となる。テレビCMはためになる。上場企業のトップマーケッターがだれに何を売ろうか常に考えているのだから。本屋も勉強になる。レタスクラブなどの女性誌、月刊むし、それから月刊寺社経営はおもしろい。「書道を上手に見せる方法」「急増する外国人再掲客にどう対応するか」などを取り上げていた。坪効率の高いコンビニのトレンド商品について、なぜ?ターゲットは?などと自分なりに考えてみたりする。
「ちた人財・志事ツクール推進ネットワーク」は、自立・主体的な人材の育成と、想い・志を実践するコト起こしの創発をめざして、行政・NPO・地域メディア・金融機関・商工会で設立した地域づくりのプラットフォームです。最近、知多市の仕掛けに目が離せません。
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