PCRとは
新型コロナウイルス感染症の流行以来、PCR検査というフレーズを聞かない日はありません。PCRとは何か。検出や判定の手法ではありません。
PCRとは、検査のサンプルを調製するための手法です。検査自体は、ウイルスの遺伝子を検出することによって感染の有無を調べるわけですが、ウイルスの遺伝子はほんのわずかしかとれないので、検体中の遺伝子の量は検出限界以下になってしまいます。
そこで、遺伝子の性質を利用して遺伝子を複製して、検出可能な量になるまで増やす必要があります。そのサンプルの増幅方法をポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)と呼んでいます。ポリメラーゼとは、遺伝子(DNAの鎖)を合成する酵素のことです。この酵素を使って遺伝子が自己複製をする性質をうまく利用して遺伝子のコピーを繰り返し増やしていくプロセスがPCRです。例えば1本のDNA鎖を1回複製すると2本に、2本をもう1回複製すると4本、そして8本、16本・・・と30回も繰り返せば10億本以上の複製を合成できます。アメリカの生化学者キャリー・マリスは、この方法を考案して1993年にノーベル化学賞を受賞しました。
新型コロナウイルスの検査サンプルを増幅する際には、新型コロナウイルスの遺伝子は1本鎖RNAなので、RNAを逆転写して生成するDNAに対してPCRを行う逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)を用います。そして、電気泳動などのクロマトグラフィー技術を使って遺伝子を分離・同定します。あるいは、リアルタイムPCRと言って蛍光で遺伝子の量をモニターしながら増幅する方法が知られています。
新型コロナウイルスの遺伝子の検査は、1つの遺伝子鎖全体を増幅してそれを検知するのではなく、遺伝子の特徴的な部分に着目して、その部分のみを増幅するので、新型コロナウイルスそのものでなくても、検体の中に活性を失った遺伝子の断片が紛れ込んでいる場合は、それらが増幅され陽性の判定が出てしまう可能性もあります。
PCRの原理やプロセスについては、多くのサイトが図解で解説しているので、そちらをご参照ください。
https://diamond.jp/articles/-/233788
https://m-hub.jp/biology/1898/105
https://www.falco-life.co.jp/oyaku/iden/pcrgenri.html
http://www.eiken.pref.kanagawa.jp/002_kensa/02_gene/200626_pcr.html
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