敬老事業委託の廃止について、議会の閉会あいさつでお話ししたこと
3月定例議会の予算審議において、地区への敬老事業委託の廃止が議論になりました。敬老事業委託の廃止について、私は議会閉会のあいさつの中で以下のようなお話しをさせていただきました。
3月定例会においては、提案申し上げました案件について、慎重な審議を賜り、また、熟慮を重ねられた上で、可決、決定いただきましたことを、心より厚く御礼申し上げます。
敬老事業委託の廃止については、長年続けてきた事業を廃止することにご理解いただく難しさを痛感いたしました。行政側の考えは全員協議会や本会議中でもお話ししましたが、今一度、十分なご理解をいただくために補足をさせていただきます。
敬老事業については、平成24年の事業仕分けでも取り上げられ、事業目的という面と予算の面から以後継続が困難な事業として、廃止または見直しの対象として懸案になっていました。敬老事業では75歳以上の対象者に一人当たり1,500円、年間約1,000万円の予算で各地区に委託して事業を行っています。ここ数年の推移をみると、対象者の人口は大きく増加しているのにも関わらず、参加者は減少傾向にあり、敬老行事の参加率は12%程度と下がっています。対象者に記念品を配布するのが事業の実態となっており、高齢者を囲んで、高齢者に交流の機会を提供する敬老事業の目的と合致しなくなっています。また、町の高齢者福祉についても、一定の年齢の方々全員に物品を配布するような物的サービスから、様々な事情を抱える高齢者一人一人を地域で自分らしく暮らせるようにみんなで支えていく地域福祉の考え方にシフトしていきます。
敬老事業が始まった昭和42年当時、本町の人口は約2万4千人、65歳以上の高齢者人口約1,400人でしたが、少子高齢化の進展により、令和2年は、人口約5万人、高齢者人口約1万2千人となりました。人口増加は約2倍となる中、高齢者人口は約8.6倍へと増加しています。
今後も、高齢者人口はさらに増加していく見込みであり、敬老事業の対象者も益々増加していくなか、それを減少する現役世代の税金によって賄っていくことになります。今の現役世代が高齢者になる将来にわたって続けていける事業でないことは明らかです。したがって、新年度から敬老事業を廃止することといたしました。
これに対して、議会から当事者の意見は聴いたのかとの問いかけをいただきました。敬老事業は委託事業のため、委託先の各地区の連絡所長とは、時間をかけてご理解をいただくべく話し合いをしてまいりました。しかしながら、敬老事業の対象者からは、直接この件に関して意見をいただいておりません。いただくとするのであれば、現役世代も含めた住民からあまねくご意見をいただくことが筋と心得ます。そういう意味では、平成24年に実施した事業仕分けにおいて、無作為抽出等によりご参加いただいた住民の皆さんからご意見をいただいており、また、同様な状況下である静岡市の敬老事業についての住民意識調査を参考にすれば結果は大差ないと考えています。ただし、決定したことに関する丁寧な説明は、地域に対して、当事者に対して、心を尽くさなくてはならないと思います。
また、敬老事業の代替事業はあるのかとの問いかけもいただきました。この場合、代替事業を同種の事業とすれば、それは単なる看板のかけ替えであり、事業の見直しとは言えません。予算的な代替とすれば、社会福祉予算は毎年年間1億円以上増加しており、敬老事業を廃止しても到底追いつかないペースで財政を圧迫しています。
また、高齢者が互いに交流し、地域で安心して暮らしていけるための事業としては、町は地域福祉に政策の舵を切り、地域とともに地域の居場所づくりや、コミュニティーソーシャルワーカーを近隣市町に先駆けて配置し、一人一人に配慮した福祉に、これまでも、これからも力を入れていくことは皆さま方もご承知のとおりです。したがって、この点につきましては、事業代替はなされていると考えます。
なお、ここでさらに付言するならば、一般論として事業を廃止する際に代替事業が問題になることがしばしばありますが、そもそも特定の予算枠あるいは事業枠を確保してそれを継続予算として死守しようとする発想は、昭和の高度経済成長期の発想です。これでは予算が膨れるばかりで見直しも政策転換もできなくなります。また、同じ考え方に立つならば、新規事業を始めるときには、代替の従来事業を見つけて、廃止しなければならなくなります。感覚的に代替予算が欲しいと言いがちですが、今後財源の不足が見込まれるなか、事業を見直す際に代替事業は必ずしも必要でないという考えに立つべきであると思います。
議員各位からは、附帯決議も含め、さまざまなご意見をいただきました。今後、対象者への説明を丁寧に行い、更なる地域福祉の充実に努めてまいります。
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