アポロニウスの円
先週、夜のEテレ2355で、「アポロニウスの円」にちなんだ5分ほどの番組をやっていました。東京タワーと東京スカイツリーが同じ高さに見える地点を地図上にプロットするとアポロニウスの円になるというお話し。
ちょっと好奇心をそそります。日常の目に見えるリアルな世界が数学の定理につながっているのが面白いです。
東京タワーは高さ333m(建っている地点の標高は22mほどあるがこれは無視する)、スカイツリーは高さ634m、この二つのタワーが同じ高さに見える地点は、どこでしょうか。
一つは、約8.2km離れた二つのタワーを結ぶ線をSP1:P1G=333:634 に分ける点上にあります。もう一つは、二つのタワーを結ぶ線上の反対側にP3S:P3G=333:634 となる点上です。
三角形SStP1と三角形GGtP1は直角を挟む2組の辺の比が等しいため相似の関係にあります。したがって、東京タワーとスカイツリーの仰角SP1St とGP1Gt は等しくなります。同様に、三角形SStP3 と三角形GGtP3 は相似だから、仰角SP3StとGP1Gtは等しくなります。
東京タワーとスカイツリーの距離は約8.2kmなので、SP1は8.2km×333/967=約2.8km、P1Gは8.2km×634/967=約5.4km。P3Sは8.2km×333/(634-333)=約9.1km、P3Gは8.2km×634/(634-333)=約17.3km となります。
(※図の縦方向と横方向の縮尺は異なります。)
これ以外にも、東京タワーからの距離とスカイツリーからの距離が 333:634 となる点からは、常に2つのタワーが同じ高さに見えるはずです。これらの点はどんな分布をするのでしょうか。興味が湧きませんか。
m,n を相異なる正の実数とするとき、平面上の2点A,Bからの距離の比が m:n で一定である点Pの軌跡は円になります。これをアポロニウスの円といいます。
(ただし、m=n の時は線分ABの垂直二等分線(直径無限大の円の一部)となります。)
これを証明してみましょう。
<図形で証明>
直線AB上において,線分ABを m:n に内分、外分する点をそれぞれP1,P3とする。また,点P2をP2A:P2B= m:n を満たし,直線AB上にない点とする。
角の二等分線の性質より、線P2P1と線P2P3は、それぞれ、三角形AP2Bの内角AP2Bとその外角の二等分線となる。したがって、角P1P2P3= 180°/2 = 90° である。よってタレスの定理から、点P2は線分P1P3を直径とする円周上の点である。ゆえに点P2の軌跡は円となる。
<座標で証明>
以上で証明終わり。
それでは、東京タワーと東京スカイツリーが同じ高さに見える地点を地図上に描いてみましょう。
上記の証明で導いた円の方程式を使って、Excelでこの式を満たす x と y を方眼上にプロットするとアポロニウスの円を描くことができます。それをyahooマップに重ね合わせたのが、以下の図です。
マップ上で東京タワー(点S)から東に5.7km、北に5.9kmの地点に東京スカイツリー(点G)があります。東京タワーの座標を(0,0)、東京スカイツリーの座標を(5.7,5.9)とし、m:n = 333:634 とします。これら値を円の方程式に代入し、表計算を使って、x を -8.2から3.8 まで変化させ y を求め、(x,y)の分布図を描かせると、東京タワーとスカイツリーが同じ高さに見える地点の集合は、自由が丘あたりと京橋あたりをむすぶ直径約11.9kmのアポロニウスの円になることがわかります。
※地図の左側の距離計測は、yahooマップで東京スカイツリー(点G)の座標を求めるのに使いました。その座標を使ってExcelでアポロニウスの円を描いて、yahooマップに貼り付けました。
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