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2022/05/19

とても良いお話です

4年前に志賀内泰弘さんという方のfacebook記事で読んだお話です。志賀内さんの著書「眠る前5分で読める 心がほっとするいい話」(イースト・プレス)に出てくる話だそうです。

正直一番。誠実は信用・信頼の元。仕事をする上で、心豊かに生きる上でとても大事なことです。
ここに登場する中学2年の生徒のような「正直」「誠実」な心があれば、また、小さな正直を大切にしようとする心があれば、組織の不祥事やその隠蔽は起きないことと思います。
(以下、少し長いです。)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 
「真実は一つだ!」(その1)

          ~言うのも苦しい、言わないのも苦しい

これは、2010年の秋、滋賀県長浜市で本当にあったお話です。
長浜市立浅井中学校では生徒会活動が盛んで、毎年、全校生徒で取り組む体育祭の種目を自分たちで企画していました。1年から3年までの全校生徒が、学年を超えて一つの競技に参加するというものです。
その生徒会の会議で、
「どうせやるなら、ギネス記録に挑戦するような大きなことをやろう!」
という話になりました。「やろう!やろう!!」という同意は得られたものの、いったい「ギネス記録」に何でチャレンジするかが問題でした。そこで、ギネス記録のホームページを調べて、自分たちでも「できる」と思われる種目を捜し研究しました。
そこで、出てきたのが、「二人三脚」の大勢版です。これは世界的にあちこちで行われている公認競技で、「マルチ・レッグ・ラン(MLR)」と呼ばれていることもわかりました。それまでのギネス記録は、「261人262脚」。これを超えようというということが、生徒会自主企画に決まりました。
ところが、全校生徒465名が横にズラーと並ぶと、学校のグランドからはみ出てしまいます。やむをえず、記録達成のために270人がMLRに、そして195名は「むかで競争」に参加することになりました。
MLRの練習が始まりしまた。
まず、クラス単位の約20名ごとの小単位でトライします。それができると、次は1~3年の縦割りの3クラスが合同で練習をします。そして、最後に270人が一緒になっての練習です。しかし、そう簡単にできたわけではありません。なにしろ、世界中の人たちが挑むギネス記録なのですから・・・。
最後の最後、体育祭の前日の「これで最後」という練習で、一回だけ成功することができたといいます。

さて、ここでMLRのルールを説明しておかなければなりません。なにしろ世界公認記録ですから、共通の厳格な「決まりごと」があるのです。 
○距離は50メートル。
○時間は無制限。
○ただし、「ただ走ればいい」というわけではありません。一直線の連続した「列」であること。そして、誰かが倒れたり、全体が止まったり、足首に結んだヒモが切れたりした場合は無効になります。 
○何より厳しいのは、挑戦は「一回」しかできないという点でした。
練習の最中に一番難しかったのが、「一直線」の列を持って走るということだったそうです。あまりにも大人数なので、スピードが一定に保てないのです。
そしてもう一つ大切なことがありました。イギリスのギネス本部に申請するために、証明記録を用意しなければならないのです。
① 達成した瞬間の複数のビデオや写真を撮影。
② 達成を報道する新聞記事を添える。
③ 公職に就く立会人13人の下で行う。
そのため、3台のビデオを回し、新聞・テレビなど各報道機関、そして教育長や他校の校長先生に立ち会ってもらいました。

そして、ついにその日、平成22年9月11日がやって来ました。
生徒の保護者の皆さんも見守る中、ヨーイドン!
そして・・・見事達成!
記録は、約57秒。グランドは歓声に沸きました。
ここで午前の部が終わり、昼食の休憩に入りました。
MLRの競技終了後、50分ほどが過ぎた午後1時20分頃のことでした。一組の母子が本部のテントに現れました。応じたのは、クラス担任でありギネス競技の指導もしていた体育の先生でした。お母さんは、中2の息子さんの方を向き、
「ちゃんとあなたが自分の口で言いなさい」
と促しました。男の子は、
「実は、手拭いが解けてしまったんです」
と言いました。ゴール直前に、隣の子の足と結んでいた手拭いが解けてしまったというのです。皆が「ヤッター!」と盛り上がっている中で、自分の子供だけが暗い表情だったので、お母さんは妙だと思って問いただしたところ事実を告白したのだといいます。そして、慌てて先生に報告に来たのでした。
歓喜の中で、この男の子はとても言い出せる雰囲気ではなく、悩んでいたといいます。でも、その事実を知り、お母さんはおっしゃったそうです。
「言うのも苦しい、言わないのも苦しい。悩みました。大記録だけれど、そのままにしていてはいけない」
と思い、断腸の思いで先生を訪ねたのだといいます。

不正がまかり通る昨今です。食品偽装問題は後を立ちません。子供の頃に読んだ「ワシントンの桜の枝」の逸話を思い出しました。
なんて素晴らしいお話でしょう。その正直な少年の心に打たれて胸が熱くなりました。
しかし、本当の物語はここから始まりました。

体育の先生は、「これは大ごと」だと、すぐに教頭の南部啓作先生のところへその母子を連れて行き、もう一度詳しく話を聞きました。話し終えると、母子とも少し落ち着いた様子。南部先生は、
「正直に話してくれてありがとう。午後の部も頑張りなさい」
と、その行為を褒めて返しました。
南部先生は、男の子の正直な申し出に心踊るほどの喜びを感じつつも、「大変なことになったな」と思いました。
それはなぜか?
先生や保護者、地域の人たちは、「ギネス記録達成!」で沸いています。そんな中、もしも「実は・・・」と発表したら、どれほどみんなが落胆するか。それよりも何よりも心配したのは、正直に申し出た子供が、イジメの対象に遭うのではないかという心配でした。南部先生は、一番にこう思ったと言います。
「この子が責められないように守ってやらなければならない」
まず、この話を体育祭の終わった後の反省会で、全教職員に報告しました。さて、次は事実確認をする必要があります。体育祭の翌日の日曜日と、月曜日(振替休日)に撮影した3台のビデオを先生方で目を凝らすようにしてチェックしました。しかし、その映像からは、「手拭いが解けていた」様子は確認できませんでした。でも・・・本人は「解けた」と言っている。
9月14日火曜日の朝一番、授業の始まる前に、校長、教頭、学年主任、そして企画した生徒会のメンバーが集まって緊急会議を開きました。
しかし、会議は議論百出。紛糾しました。
その結果・・・。ものがたりは、次章(その2)へ続きます。

 

「真実は一つだ!」(その2)
          ~美しい心こそが世界一誇るべきもの

会議は、議論百出。
いろんな意見が出ました。しかし、ここでも、一番重きに置いたのは、
「その生徒を守らなければならない」
ということでした。
体育祭のあった9月11日土曜日の夕刻、NHKのニュースで「ギネス記録達成!」と快挙の様子が報道されていました。もちろん新聞各紙でも。それは、インターネットでも広がっていました。「今さら、言うに言えないような雰囲気」にも追い込まれていました。
そこで、その会議では、こんな結論を出しました。
イギリスのギネス本部には、記録の申請はする。ただし、
「ビデオでは判明しなかったけれど、一人だけひもが解けたと自己申告した人がいる」
という文面を添えて。
ここには、二つのポイントがありました。まず、申し出た生徒の正直な気持ちを尊重し、かつイジメに遭わないようにすること。そしてもう一つは、記録を達成した大勢の生徒たちの成果を重んじ、「喜びに沸く心」を傷つけないようにすることです。その相反する二つのものを両立させようとする苦肉の案でした。
その決定事項を、午前8時50分の校内放送で報告しました。

さて、この決定に従ってすすめるには一つ課題がありました。ギネス申請書に立会人13人のサインをもらわなければないないのです。その晩、南部先生は立会人の一人である教育長さんを訪ねました。すべてのことの成り行きを説明しました。
しばしの沈黙。その後、教育長さんは、一言こうおっしゃったそうです。
「真実は一つです。その子の正直な申し出を大事にしてあげてください」
ここで最後の判断が下されました。会議の方針が、覆った瞬間でした。南部教頭さんも、静かに頷きました。
しかし、「言うは易し、行うは難し」。それは、簡単なことではありませんでした。もう、マスメディアで報道された後のことなのです。南部先生は悩みに悩み、意を決して、次のような内容を報道各社にファックスしました。
「取材・報道等でお世話になりました。しかしながら、競技終了後、生徒から自分のひもが解けたという自己申告がありました。生徒の勇気ある自己申告を大切にしたいと考え、今回はギネスに申請しないことにしました」
併せて、「その子を守る」ことに注力しました。普段は大人しい子なのでよけいに心配でした。そこで、その子の特に仲の良い友達三人を呼び、
「イジメられないように守ってやってくれ」
と頼みました。お母さんには、
「家庭でも気をつけて見守っていてください」
とお願いしました。

一部の報道機関からは、
「なぜ、もっと早く知らせてくれなかったのか」
という抗議の声も聞かれました。しかし、ほとんどのマスメディアは好意的でした。「ギネスに勝る生徒の勇気」「真摯な態度こそギネス」「『正直な勇気』感動は記録的」などという見出しで再報。

それを読んだ読者から、次々と褒め称える手紙やファックスが学校に届けられました。職員室の電話は鳴り止みません。その正直な生徒のお母さんに、早速その旨を報告すると、ほっとしたのか泣かれてしまったそうです。もちろん、イジメは起きませんでした。
ここに、浅井中学校宛に寄せられた数々の励ましの便りの中から、いくつか紹介させていただきます(一部を要約してお届けします)。

 
 「あっぱれ、浅井中学校、日本一」
 生徒、生徒の母親、職員、そして、校長、皆さん、あっぱれです。ギネスなんかに登録されるより、全校生にとって、どれほど価値あることか、一生誇れる記念碑です。久し振り、晴れ晴れしました。ありがとう。
        東京都文京区の男性からの手紙より

 
 日本の新聞社のインターネットの記事で読み、感動しました。受験にやっきになっている学校が多い中で、これを実行できる学校は素晴らしいです。私は二人の息子を育てましたから、「ひもが解けた」と正直に申し出た生徒さんの行為がどれほど勇気を必要とすることか、よくわかります。同じような状況下で、私の息子たち、または私自身も申し出る勇気があるかどうか確かではありません。さらに感心したのは、その生徒さんが申し出ることができるような環境が学校にあったことです。子供自身がどんなに正直でも、親や先生に言ったら叱られるかもしれないと思ったら申し出ません。今回のことは、家庭や学校に受け入れられる確信があったからだと思います。
 ギネス記録よりももっと大事なものを教えていただきました。その生徒さんにくれぐれもよろしくお伝えください。
        カリフォルニア州の日系アメリカ人と思われる男性からのメールより

 
 男の子とお母さんの勇気を想像するだけで震えてきます。私だったら、「皆、気づいていないのだから黙っておきなさい」って言ったと思います。その申し出の後の先生方の対応、すばらしいですね。その事実を知った時の落胆、くやしさ。想像を絶するものがあったと思います。全校の先生、生徒、関係者の方々の一人一人の頭の中は混乱していたことでしょう。勇気ある申告は一生、心の中に忘れえぬ記憶として残っていくと思っています。
        愛知県名古屋市の主婦からの手紙より

 
最後に、もう一つ。
兵庫県姫路市のある男性から、全校生徒にリンドウの花465本、そして各クラスにシンピジウムの鉢植えが届けられました。
メッセージカードが添えられており、
「皆さんのその美しい心こそが世界一誇るべきものであると思います。色々あったかもしれませんが、それでも、皆さんのその美しい心、正直な心に日本国内はもとより世界の多くの人々に大きな感動を与えたことでしょう」
と書かれてありました。
さらに、色紙が一枚。そこには、
「誠実」と「正直」
という花言葉が。

そうです。真実は、一つなのです。

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