「行動経済学を応用した地域の政策づくり ~行動変容を促すナッジとは~」と題した地域問題研究所のセミナーをリモートで受講しました。講師は、大阪大学感染症総合教育研究拠点 特任教授 大竹文雄氏。
ナッジ理論とは、「人々が強制的にではなく、より良い選択を自発的に取れるようにする方法」を生み出すための行動経済学の理論で、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授によって提唱されました。ナッジ理論は、企業だけでなく地方自治体のマネジメントにも役立ちます。納税や福祉など、様々な社会課題の解決のためにナッジ理論を活用できるかも知れません。
以下は、セミナーの内容の抜粋です。
行動経済学の考え方
伝統的経済学では、“ホモエコノミカス”という合理的で計算能力が高く、利己的な人間像を前提としている。
行動経済学は、対象を現実の人間像に近づけ、心理学や社会学の成果を組み入れた経済学の一分野。
人間の心理に根ざした行動経済学の主な概念として
・損失回避(利得の喜び < 損失の悲しみ)
・現在バイアス(目の前の小さな利益 > 将来の大きな利益)
・社会的選考(不平等回避、互恵性、利他性)
・ヒューリスティックス(利用可能性、代表性、アンカリング、極端回避性)
ナッジとは、
肘でそっと後押しする“nudge”の意味
行動経済学を利用した行動変容の手段
リバタリアン・パターナリズム(選択の自由がある介入主義)
選択を禁じることや経済的なインセンティブを大きく変えることなく、人々が自発的・合理的に意思決定する環境デザイン
一方、スラッジとは、
望ましくない行動や本人の利益にならない行動を誘導するもの
●損失回避を利用したナッジの例
大腸がん検診受診勧奨ハガキ・・・Bの方が受診率が高くなる。
ハガキA
『今年度、大腸がん検診を受診された方には、来年度、「大腸がん検査キット」をご自宅にお送りします。』
ハガキB
『今年度、大腸がん検診を受診されないと、来年度、ご自宅へ「大腸がん検査キット」をお送りすることができません。』
●デフォルト(オプトアウト)を利用したナッジの例
デフォルトが後発薬で「✅がない場合は、後発医薬品を使って良い」と意思表示した方が、
デフォルトが新薬で「後発薬を使って良い」にチェックよりも後発薬の使用が増える。
●コロナ感染防止のため、旅行を減らす効果のある新聞見出しは
さぁ連休 でも「うちで過ごそう」 ×
連休中 うちで過ごそう 各地の人出 大幅減 ◯
さぁ連休 でも まばらな名駅 △
●新型コロナワクチン接種勧奨のナッジ
あなたと同じ年代の10人中7~8人が、このワクチンを接種すると回答しています。
or
ワクチンを接種した人が増えると、
ワクチン接種を希望する人も増えることがわかっています。
あなたのワクチン接種が、周りの人のワクチン接種を後押しします。
or
あなたがワクチンを接種しないと、周りの人のワクチン接種が進まない可能性があります。
●風しんの抗体検査受検・ワクチン接種 勧奨PJT動画
https://www.youtube.com/watch?v=JE3FTVkKLxw
参考になるサイト
自治体ナッジシェア(ナッジを学びたい自治体職員の皆さんへ)
https://nudge-share.jp/
参考図書
NUDGE 実践 行動経済学 完全版
行動経済学の使い方 (岩波新書)
あなたを変える行動経済学:よりよい意思決定・行動をめざして
行動経済学の処方箋-働き方から日常生活の悩みまで (中公新書 2724)
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